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異界の国のアリス
出口を目指して
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「やるって……具体的にどうするつもりなんですの⁉」
「正面突破! たぶん此処が本拠地なんでしょ?」
「お、恐らくですけどそうですわ! 此処はたぶん、鉤鼻の魔女の工房ですわ!」
「おっけー!」
「でも気を付けて! 此処が伝説の工房であるなら……!」
オオオオオ……と、化け物の咆哮みたいなのが聞こえてきてリーゼロッテがビクリと体を震わせる。
「鉤鼻の魔女は生命倫理に踏み込んだ魔女! その配下は当然……!」
「おっと」
リーゼロッテを背後に庇い、私はスペードソードを構える。その瞬間、私たちの居た場所に飛び込んできたのは……私の身長を遥かに超える、巨大な火弾。
ゴバン、と凄まじい音をたてて爆炎が私を包んで……リーゼロッテが悲鳴をあげる。
「アリス!」
「平気」
そう、問題ない。私が展開したのはガードオブダイヤの障壁。
ガードの姿勢に入ったなら、これは自動で展開するようにできている。
「チッ、なんだそりゃ。化け物かよ」
「あ、あのナンパオウガ」
そう、そこにいたのはナンパしてきたオウガの男だった。
そっか、こいつも敵だったんだ。
「此処に居るってことは、あのナンパもひょっとして」
「まあな。アレでついてきたら、そのまま……ってはずだったんだがなあ」
「残念だったね」
「まったくだ……よ!」
続けて展開されたのは、数本の雷の矢。私に向かってくるそれは複数の方向から飛んでくるけど、意味はない。ガードオブダイヤは、「私」が展開してるわけじゃない。
自動展開したガードオブダイヤは雷の矢全てを防ぎ切り、私は駆ける。
「チッ、ほんっと化け物がよ……!」
「美少女だっての」
拳で顎をぶん殴って吹き飛ばす。地面にゴロゴロと転がっていくナンパオウガは、起きる気配はなくて。
「こ、殺したんですの?」
「殺した方がよかったの?」
「正直、どちらでも構わないとは思いますけど」
「そっか。じゃあ可能な限り殺さない方向でいこう」
「……優しいんですのね」
「そう?」
別に優しさで殺さないわけじゃないけどね。
今回のは事件だ。人間誘拐と、違法奴隷販売、輸送。解決しなきゃいけない問題はきっとたくさんある。そしてそれは、此処で私が暴れるだけじゃどうしようもないことだ。
「だって、鉤鼻の魔女は間違いなくブッ殺すでしょ? 事情言える奴は残しとかないと」
そうしないと、ハーヴェイがきっと困る。魔族の犯人がいるなら、何か変わるかもしれないしね。
「それは……まあ、そうですわね」
「それより、リーゼロッテは戦えるの?」
「多少、ですわね」
「多少かあ」
あんまし期待できない感じかな?
とはいえ、1人で逃げろとも言えないしなあ。
「ま、いいか。しっかりついてきてね!」
視線の先には、名状しがたい感じのモンスターの群れ。
いや、モンスターじゃないのかな?
「凄い数のホムンクルス……! ど、どうするんですの⁉」
「当然、押し通る!」
この程度なら、ボムを使うまでもないね!
真正面から突っ込むと、スペードソードを振るう。
ザン、と響く音に満足せず振るう、振るう、振るう。
振るって、振るって、足を止めずに走る。
私の後ろに一匹も通さないよう、私の先の一匹でも多く倒せるように。
「グオオオオオオオ!」
「ガアアアアアアア!」
「でやあああああああああああああああ!」
叫ぶ、斬る。私には……アリスにはボムを除けば近接攻撃しかない。
でも、近接攻撃だけなら「あの世界」でも誰にも負けやしない。
だからこそ斬って、斬って、斬って。
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル7になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル8になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル9になりました!―
レベルが次々と上がっていく。レベルアップ音が止まらない。
こいつら、凄い経験値持ってる。メタル系モンスターかっての!
ゲージも溜まっていく。でも、こんなところじゃ使えない。
「かかってきなさいよ! こんなんじゃ止まらないわよ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
「てい!」
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル12になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル13になりました!―
斬る、突く、斬る。斬って進み、階段をも駆け上がる。
時折リーゼロッテの無事をも確認しながら、先へ……先へ。
「ど、何処まで続くんですの、この場所……!」
「さあね! まだ大丈夫⁉」
「い、いけますわ!」
「よし!」
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル29になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル30になりました!―
進んで、斬って、進んで。私たちは、やがて明るく広い空間へと辿り着く。
そこには……最奥の如何にもって感じの扉と。部屋の真ん中に立ちふさがる、複腕の巨人。
「タ、タイラント……? ホムンクルス技術の奥義と呼ばれるレベルですわよ⁉」
「そんなのが出てくるってことは……ゴールは近いってことよね!」
あの扉も、きっと出口じゃないんだろう。でも、鉤鼻の魔女はきっとあの先に居る。
なら、此処を突破することには意味がある。
「気合い入れてよ、リーゼロッテ!」
「わ、分かりましたわよ……!」
「正面突破! たぶん此処が本拠地なんでしょ?」
「お、恐らくですけどそうですわ! 此処はたぶん、鉤鼻の魔女の工房ですわ!」
「おっけー!」
「でも気を付けて! 此処が伝説の工房であるなら……!」
オオオオオ……と、化け物の咆哮みたいなのが聞こえてきてリーゼロッテがビクリと体を震わせる。
「鉤鼻の魔女は生命倫理に踏み込んだ魔女! その配下は当然……!」
「おっと」
リーゼロッテを背後に庇い、私はスペードソードを構える。その瞬間、私たちの居た場所に飛び込んできたのは……私の身長を遥かに超える、巨大な火弾。
ゴバン、と凄まじい音をたてて爆炎が私を包んで……リーゼロッテが悲鳴をあげる。
「アリス!」
「平気」
そう、問題ない。私が展開したのはガードオブダイヤの障壁。
ガードの姿勢に入ったなら、これは自動で展開するようにできている。
「チッ、なんだそりゃ。化け物かよ」
「あ、あのナンパオウガ」
そう、そこにいたのはナンパしてきたオウガの男だった。
そっか、こいつも敵だったんだ。
「此処に居るってことは、あのナンパもひょっとして」
「まあな。アレでついてきたら、そのまま……ってはずだったんだがなあ」
「残念だったね」
「まったくだ……よ!」
続けて展開されたのは、数本の雷の矢。私に向かってくるそれは複数の方向から飛んでくるけど、意味はない。ガードオブダイヤは、「私」が展開してるわけじゃない。
自動展開したガードオブダイヤは雷の矢全てを防ぎ切り、私は駆ける。
「チッ、ほんっと化け物がよ……!」
「美少女だっての」
拳で顎をぶん殴って吹き飛ばす。地面にゴロゴロと転がっていくナンパオウガは、起きる気配はなくて。
「こ、殺したんですの?」
「殺した方がよかったの?」
「正直、どちらでも構わないとは思いますけど」
「そっか。じゃあ可能な限り殺さない方向でいこう」
「……優しいんですのね」
「そう?」
別に優しさで殺さないわけじゃないけどね。
今回のは事件だ。人間誘拐と、違法奴隷販売、輸送。解決しなきゃいけない問題はきっとたくさんある。そしてそれは、此処で私が暴れるだけじゃどうしようもないことだ。
「だって、鉤鼻の魔女は間違いなくブッ殺すでしょ? 事情言える奴は残しとかないと」
そうしないと、ハーヴェイがきっと困る。魔族の犯人がいるなら、何か変わるかもしれないしね。
「それは……まあ、そうですわね」
「それより、リーゼロッテは戦えるの?」
「多少、ですわね」
「多少かあ」
あんまし期待できない感じかな?
とはいえ、1人で逃げろとも言えないしなあ。
「ま、いいか。しっかりついてきてね!」
視線の先には、名状しがたい感じのモンスターの群れ。
いや、モンスターじゃないのかな?
「凄い数のホムンクルス……! ど、どうするんですの⁉」
「当然、押し通る!」
この程度なら、ボムを使うまでもないね!
真正面から突っ込むと、スペードソードを振るう。
ザン、と響く音に満足せず振るう、振るう、振るう。
振るって、振るって、足を止めずに走る。
私の後ろに一匹も通さないよう、私の先の一匹でも多く倒せるように。
「グオオオオオオオ!」
「ガアアアアアアア!」
「でやあああああああああああああああ!」
叫ぶ、斬る。私には……アリスにはボムを除けば近接攻撃しかない。
でも、近接攻撃だけなら「あの世界」でも誰にも負けやしない。
だからこそ斬って、斬って、斬って。
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル7になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル8になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル9になりました!―
レベルが次々と上がっていく。レベルアップ音が止まらない。
こいつら、凄い経験値持ってる。メタル系モンスターかっての!
ゲージも溜まっていく。でも、こんなところじゃ使えない。
「かかってきなさいよ! こんなんじゃ止まらないわよ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」
「てい!」
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル12になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル13になりました!―
斬る、突く、斬る。斬って進み、階段をも駆け上がる。
時折リーゼロッテの無事をも確認しながら、先へ……先へ。
「ど、何処まで続くんですの、この場所……!」
「さあね! まだ大丈夫⁉」
「い、いけますわ!」
「よし!」
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル29になりました!―
―レベルアップ! トランプソルジャーがレベル30になりました!―
進んで、斬って、進んで。私たちは、やがて明るく広い空間へと辿り着く。
そこには……最奥の如何にもって感じの扉と。部屋の真ん中に立ちふさがる、複腕の巨人。
「タ、タイラント……? ホムンクルス技術の奥義と呼ばれるレベルですわよ⁉」
「そんなのが出てくるってことは……ゴールは近いってことよね!」
あの扉も、きっと出口じゃないんだろう。でも、鉤鼻の魔女はきっとあの先に居る。
なら、此処を突破することには意味がある。
「気合い入れてよ、リーゼロッテ!」
「わ、分かりましたわよ……!」
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