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異界の国のアリス
毒竜の尻尾
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「ていうか、見ての通り取り込み中なんだけど」
「問題ない」
言いながらハーヴェイは下を指さす。その先にいる誘拐犯たちは……うん、気付いてないわね。何か話し合ってるのが見えるわ。
「お前達の……というか、そこの男の隠蔽魔法に同調させて貰っている」
「もっと分かりやすく」
「隠蔽魔法に相乗りしてるから下の連中にはバレない」
「よし、理解したわ」
最初っからそう言えばいいのよ。まったくもう。
「で、アレは最近報告を受けていた誘拐犯か」
「そういうことだと思うわ。たぶんね」
「ふむ……」
ハーヴェイは眼下の男達を見下ろし……やがてフンと鼻を鳴らす。
それは、くだらないものを心の底から見下すような……そういう態度だとよく分かる。
まあ、実際くだらない連中よね。
「全員人間だな」
「そうね」
「人間がこの魔族の国で人間をさらって、何処に売り飛ばす気なのだかな」
「そんなの知らないわよ。でも買う人がいるんでしょ?」
「だろうな。だが、買ってどうする?」
「どうするって?」
私が疑問符を浮かべれば、私を抱えていたアルヴァが「需要の問題だ」と教えてくれる。
「人間は貴様のような例外を除けば身体能力、魔的能力共に魔族より低い。そんなものを奴隷にしたところで、何の役に立つ?」
「そういうことだ。労働力とするにしても、その奴隷を買う金で獣魔人でも雇った方が効率が良い。言ってみれば、意味がないな」
「ん? んんー……」
それは何か、理屈としておかしいような。
んんー、なんて言えばいいのかな?
「なんだ、何か違う意見でもあるのか?」
「言ってみろ。余は違う意見にも寛容だぞ」
「んー。奴隷ってさあ……」
たぶん、だけど。
「役に立たなかったから奴隷になるんじゃないの? で、役に立つ人を奴隷にしようとするから違法なんじゃないの?」
「ん?」
「む?」
「つまり違法な奴隷を買う人ってのは、本来奴隷にならない役立つ人を奴隷にしたいわけで……つまり、そこに利益が発生するんじゃないかしら」
うん、完璧な理屈。私ってば天才だわ。これには感動するんじゃないかと思って2人を見れば……アルヴァもハーヴェイもなんだか微妙な表情。あれー?
「おい、そこの男」
「なんだ。こいつの性格は俺のせいではないぞ」
「だったら何なんだ。どうやったら、こんな殺伐とした性格に育つんだ」
「俺は知らん。たぶん情とか、そういうのが薄いんだろう」
うわ、なんて失礼な。私ほど情に溢れるスーパーヒロインも居ないっての。
「失礼な男どもね。私に情がなかったら、あの連中をどうしようかなんて悩まないわよ?」
「情の問題で悩んでいたようには見えなかったが……」
「というか、情けをかける気があったのか?」
何よダブルで……ほんっと失礼な。好感度がガリガリ下がっていく音がするわ。
「ちゃんと法の裁きを受けさせるって話でしょ? そんなの当然じゃない」
「俺はお前の最初の案がアジトを攻め落とす事だったのを覚えてるからな」
「アルヴァうっさい」
それで私に不利益なく解決するなら、それが一番手っ取り早いじゃないの。
「まあ、それはさておき……だ。動いたな」
「ん?」
ハーヴェイの言葉に再度下を見下ろしてみれば、男達が何処かに分散して消えていくのが見える。
「何処行くのかしらね」
「たぶんお前の家を突き止める気なんだろう。手配書をまわすと言っていた」
「うわあ……私が美少女なばっかりに……」
「チッ」
「おい、なんで舌打ちしたのよ」
「正直ウザかった」
「こんにゃろう……」
私の美少女っぷりの何処に不満があるってのよ。公式画像と特典グッズだけで数万人に財布を開けさせた傾国の美少女っぷりだぞ。
「おいアリス。そんな奴より余の腕の中に来ないか?」
「なんかキモいからやだ」
「なんだと⁉ 余は格好良いだろうが!」
「自分で自分を格好いいとか正直ないわー……」
あ、アルヴァが舌打ちした。何よ、何の文句があるのよ。
「どの口が……」
「この口ですけど何か?」
「そうか。それでどうする。あの調子だと、貴様は奴隷商人に賞金首扱いされそうだが」
「人間だというのが厄介だな……」
言いながらハーヴェイは難しい顔をするけど、そんな難しい問題があったかしら。
さっき人間は劣ってるみたいな話してなかったっけ?
「厄介も何も、魔族が本気出せばどうにでもなるんじゃないの?」
「なる。だからこそ問題だ。根が何処まで深いか分からないしな」
「だから難しい言い回しじゃ理解できないんだけど」
「む、そうだな……」
ハーヴェイは少し考えるような様子を見せた後、「そもそもの問題はだ」と語りだす。
「たとえば、連中の組織が全員人間で構成されていた場合、その総数はかなりのものであると予想される」
「そうね?」
「そして奴隷取引の仕組みを整えているところからみても、表の顔があることも予想される」
「うん」
「つまり組織の壊滅は『立場を持つ者を含む相当数の人間』を魔族の国から追い出す、あるいは処刑するという事にも繋がる恐れがある」
そりゃ当然よね。それの何が問題なの?
「これは処理を間違えれば人間と魔族の大規模戦争に再び発展しかねない『毒竜の尻尾』だということだ。余は王として、再びこの王都を戦いの舞台にするわけにはいかない」
「問題ない」
言いながらハーヴェイは下を指さす。その先にいる誘拐犯たちは……うん、気付いてないわね。何か話し合ってるのが見えるわ。
「お前達の……というか、そこの男の隠蔽魔法に同調させて貰っている」
「もっと分かりやすく」
「隠蔽魔法に相乗りしてるから下の連中にはバレない」
「よし、理解したわ」
最初っからそう言えばいいのよ。まったくもう。
「で、アレは最近報告を受けていた誘拐犯か」
「そういうことだと思うわ。たぶんね」
「ふむ……」
ハーヴェイは眼下の男達を見下ろし……やがてフンと鼻を鳴らす。
それは、くだらないものを心の底から見下すような……そういう態度だとよく分かる。
まあ、実際くだらない連中よね。
「全員人間だな」
「そうね」
「人間がこの魔族の国で人間をさらって、何処に売り飛ばす気なのだかな」
「そんなの知らないわよ。でも買う人がいるんでしょ?」
「だろうな。だが、買ってどうする?」
「どうするって?」
私が疑問符を浮かべれば、私を抱えていたアルヴァが「需要の問題だ」と教えてくれる。
「人間は貴様のような例外を除けば身体能力、魔的能力共に魔族より低い。そんなものを奴隷にしたところで、何の役に立つ?」
「そういうことだ。労働力とするにしても、その奴隷を買う金で獣魔人でも雇った方が効率が良い。言ってみれば、意味がないな」
「ん? んんー……」
それは何か、理屈としておかしいような。
んんー、なんて言えばいいのかな?
「なんだ、何か違う意見でもあるのか?」
「言ってみろ。余は違う意見にも寛容だぞ」
「んー。奴隷ってさあ……」
たぶん、だけど。
「役に立たなかったから奴隷になるんじゃないの? で、役に立つ人を奴隷にしようとするから違法なんじゃないの?」
「ん?」
「む?」
「つまり違法な奴隷を買う人ってのは、本来奴隷にならない役立つ人を奴隷にしたいわけで……つまり、そこに利益が発生するんじゃないかしら」
うん、完璧な理屈。私ってば天才だわ。これには感動するんじゃないかと思って2人を見れば……アルヴァもハーヴェイもなんだか微妙な表情。あれー?
「おい、そこの男」
「なんだ。こいつの性格は俺のせいではないぞ」
「だったら何なんだ。どうやったら、こんな殺伐とした性格に育つんだ」
「俺は知らん。たぶん情とか、そういうのが薄いんだろう」
うわ、なんて失礼な。私ほど情に溢れるスーパーヒロインも居ないっての。
「失礼な男どもね。私に情がなかったら、あの連中をどうしようかなんて悩まないわよ?」
「情の問題で悩んでいたようには見えなかったが……」
「というか、情けをかける気があったのか?」
何よダブルで……ほんっと失礼な。好感度がガリガリ下がっていく音がするわ。
「ちゃんと法の裁きを受けさせるって話でしょ? そんなの当然じゃない」
「俺はお前の最初の案がアジトを攻め落とす事だったのを覚えてるからな」
「アルヴァうっさい」
それで私に不利益なく解決するなら、それが一番手っ取り早いじゃないの。
「まあ、それはさておき……だ。動いたな」
「ん?」
ハーヴェイの言葉に再度下を見下ろしてみれば、男達が何処かに分散して消えていくのが見える。
「何処行くのかしらね」
「たぶんお前の家を突き止める気なんだろう。手配書をまわすと言っていた」
「うわあ……私が美少女なばっかりに……」
「チッ」
「おい、なんで舌打ちしたのよ」
「正直ウザかった」
「こんにゃろう……」
私の美少女っぷりの何処に不満があるってのよ。公式画像と特典グッズだけで数万人に財布を開けさせた傾国の美少女っぷりだぞ。
「おいアリス。そんな奴より余の腕の中に来ないか?」
「なんかキモいからやだ」
「なんだと⁉ 余は格好良いだろうが!」
「自分で自分を格好いいとか正直ないわー……」
あ、アルヴァが舌打ちした。何よ、何の文句があるのよ。
「どの口が……」
「この口ですけど何か?」
「そうか。それでどうする。あの調子だと、貴様は奴隷商人に賞金首扱いされそうだが」
「人間だというのが厄介だな……」
言いながらハーヴェイは難しい顔をするけど、そんな難しい問題があったかしら。
さっき人間は劣ってるみたいな話してなかったっけ?
「厄介も何も、魔族が本気出せばどうにでもなるんじゃないの?」
「なる。だからこそ問題だ。根が何処まで深いか分からないしな」
「だから難しい言い回しじゃ理解できないんだけど」
「む、そうだな……」
ハーヴェイは少し考えるような様子を見せた後、「そもそもの問題はだ」と語りだす。
「たとえば、連中の組織が全員人間で構成されていた場合、その総数はかなりのものであると予想される」
「そうね?」
「そして奴隷取引の仕組みを整えているところからみても、表の顔があることも予想される」
「うん」
「つまり組織の壊滅は『立場を持つ者を含む相当数の人間』を魔族の国から追い出す、あるいは処刑するという事にも繋がる恐れがある」
そりゃ当然よね。それの何が問題なの?
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