17 / 18
第五章
冥王、学院へ通う
しおりを挟む
「えぇ、今日から皆さんと一緒に勉学に励む事になった、紫焔君だ」
女性教師がチラチラと俺の顔を見ながら、紹介する。
「紫焔と言います。宜しく」
俺はそう言って頭を下げた。
「では、紫焔君、好きな所に座って下さい」
「はい」
女性教師に言われた通り、どこか空いてる席に座ろうと思い教室をサッと見渡すと、見知った顔が二つあった。
その二人が、席が空いているとアピールしてくる。
いきなり知らない人間の横に座っても、会話が出来なくて困るだろうから、この見知った顔の人物の隣にでも座るとしよう。
「宜しくな、リンカ、アミル」
「はい」
「宜しく」
さて、何で俺が学院に通う事になったのかと言うと、
「旦那様には来週から学院に通って頂きます」
「はい?」
その日、ペルセポネはウチにやって来た。
護衛も着けず、1人で来たらしい。
せめて護衛の1人位は着けろと言ったのだが、
「護衛がいなくても自分の身は自分で守れます」
うん、よく知っている。
君が強い事は夫である俺がよぉく知っている。
だが、
「見栄えってもんがあるでしょうが?」
「堅苦しいのは嫌いです」
それも知っている。
「だがなぁ・・・・・・」
「旦那様、私はそんな話しをしに来たわけではないのですが?」
「あぁ、すまん」
俺はペルセポネを座らせて、一旦、台所へ行き、お茶を準備して戻った。
「お茶しかないけど我慢してくれよ?」
「あら、旦那様自ら注いでくれるのですか?」
「この世界じゃ、君の方が立ち位置が上だからな」
「有難う御座います」
ペルセポネはお茶を啜ってから俺の顔を見た。
「旦那様はこの国に『魔装騎兵隊』の事は存じておりまして?」
「噂だけなら聞いてる。確か・・・・・・」
『魔装騎兵隊』とは、この人間の世界でも、特に高い魔力を持っている者達を集めて、国の防衛を行っている部隊の事だ。
ただ、元々人間の有している魔力なんて、他種族に比べて雲泥の差だ。どう足掻いても足元にも及ばないだろう。そんな人間の中で、高い魔力を有する子供達を育成し『魔装騎兵隊』へと入隊させるらしい。
その『魔装騎兵隊』』に配備されている道具の事を『魔装具』といい、それを使って魔力を増幅するらしいのだ。
因みに武芸者の持つ武具は『魔装具』ではなく、武芸者専門の武具屋があり、それなりの金額を払ってオーダーしてもらっている。
「その『魔装騎兵隊』の候補生を養成するのが学院なのです」
「学院の事は分かった。分かったが、何故俺が入学しなければならないんだ?」
「旦那様の今の見た目から考えれば、勉学に勤しむのは当たり前の事じゃないですか?」
普通の世界ならばそうだろう。
俺の見た目は、世間一般で考えれば学校に通っていてもおかしくはないだろう。世間一般で考えればだ。
「でもな、ペル。俺はすでに武芸者という仕事をこの世界でやってるし、顔もそれなりに売れてる。その状況で学院に通ったら、色々と問題が起きそうなのだが?」
「その辺は大丈夫です。それなりに手を回していますから」
「あぁ、そうなんだ・・・・・・」
どんな風に手を回したのかは、この際聞かないでおこう。
「で、学院に行って俺は真面目に勉強すればいいのか?」
「まさか。今更旦那様は何を学ぶと言うのですか?」
いや、普通に考えて学院に通うならその優先は勉学だろう。
ペルセポネは物凄く目を真ん丸くしている。
「旦那様。そんなに勉学お好きでしたっけ? お好きなら別に勤しんで頂いても構いませんが?」
「いや、結構」
好きでもないし嫌いでもない。
「旦那様への依頼は、学院生に狙いを定めた襲撃事件の究明です」
「襲撃事件?」
ペルセポネは机に封筒を置いたので、それを手元に引き寄せて中を見る。
それはリンカやアミルが通っている学院で、教師と生徒の名前、性別、年齢、住所が細かく記載された書類だった。そしてそれには数名だが、名前を赤線で引かれいるのが見受けられた。
「その赤線で消しているのが、今回襲撃された生徒達です」
「何か繋がりみたいなのはあるのか?」
「水面下で調べてはいますが、今の所、コレと言った確証はありません」
「で、俺に学院に潜入して学院内からまずは調査してくれ、と?」
「ご推察通り。勿論、それ相応の報酬は用意します」
「分かった。引き受けよう」
「有難う御座います」
一礼してペルセポネは立ち上がり、部屋をあとにしようとしたその時、
「旦那様、あまり無理はなされませんよう」
「あぁ、分かってるよ」
と俺が答えると、ペルセポネは大きなため息を吐きながら」
「そう言っても、旦那様は昔から物凄く無理をされるじゃないですか? 今回の件、断ってもよかったんですよ?」
「良く言うよ。俺が断れないのを見越して持ち込んできたくせに」
「そ、それは、まぁ、そうなんですが・・・・・・」
「大丈夫だよ、ペル」
「・・・・・・信じてます」
言って部屋を出て行った。
俺、嫁に心配されるくらい弱く見えるのかな?
冥界に居る頃の俺は確かにガッチリしてたから、今のこの人間の身体と比べるとそう見えるんだろうなぁ。
よし、明日から筋トレして少しでも線を太くしよう。
女性教師がチラチラと俺の顔を見ながら、紹介する。
「紫焔と言います。宜しく」
俺はそう言って頭を下げた。
「では、紫焔君、好きな所に座って下さい」
「はい」
女性教師に言われた通り、どこか空いてる席に座ろうと思い教室をサッと見渡すと、見知った顔が二つあった。
その二人が、席が空いているとアピールしてくる。
いきなり知らない人間の横に座っても、会話が出来なくて困るだろうから、この見知った顔の人物の隣にでも座るとしよう。
「宜しくな、リンカ、アミル」
「はい」
「宜しく」
さて、何で俺が学院に通う事になったのかと言うと、
「旦那様には来週から学院に通って頂きます」
「はい?」
その日、ペルセポネはウチにやって来た。
護衛も着けず、1人で来たらしい。
せめて護衛の1人位は着けろと言ったのだが、
「護衛がいなくても自分の身は自分で守れます」
うん、よく知っている。
君が強い事は夫である俺がよぉく知っている。
だが、
「見栄えってもんがあるでしょうが?」
「堅苦しいのは嫌いです」
それも知っている。
「だがなぁ・・・・・・」
「旦那様、私はそんな話しをしに来たわけではないのですが?」
「あぁ、すまん」
俺はペルセポネを座らせて、一旦、台所へ行き、お茶を準備して戻った。
「お茶しかないけど我慢してくれよ?」
「あら、旦那様自ら注いでくれるのですか?」
「この世界じゃ、君の方が立ち位置が上だからな」
「有難う御座います」
ペルセポネはお茶を啜ってから俺の顔を見た。
「旦那様はこの国に『魔装騎兵隊』の事は存じておりまして?」
「噂だけなら聞いてる。確か・・・・・・」
『魔装騎兵隊』とは、この人間の世界でも、特に高い魔力を持っている者達を集めて、国の防衛を行っている部隊の事だ。
ただ、元々人間の有している魔力なんて、他種族に比べて雲泥の差だ。どう足掻いても足元にも及ばないだろう。そんな人間の中で、高い魔力を有する子供達を育成し『魔装騎兵隊』へと入隊させるらしい。
その『魔装騎兵隊』』に配備されている道具の事を『魔装具』といい、それを使って魔力を増幅するらしいのだ。
因みに武芸者の持つ武具は『魔装具』ではなく、武芸者専門の武具屋があり、それなりの金額を払ってオーダーしてもらっている。
「その『魔装騎兵隊』の候補生を養成するのが学院なのです」
「学院の事は分かった。分かったが、何故俺が入学しなければならないんだ?」
「旦那様の今の見た目から考えれば、勉学に勤しむのは当たり前の事じゃないですか?」
普通の世界ならばそうだろう。
俺の見た目は、世間一般で考えれば学校に通っていてもおかしくはないだろう。世間一般で考えればだ。
「でもな、ペル。俺はすでに武芸者という仕事をこの世界でやってるし、顔もそれなりに売れてる。その状況で学院に通ったら、色々と問題が起きそうなのだが?」
「その辺は大丈夫です。それなりに手を回していますから」
「あぁ、そうなんだ・・・・・・」
どんな風に手を回したのかは、この際聞かないでおこう。
「で、学院に行って俺は真面目に勉強すればいいのか?」
「まさか。今更旦那様は何を学ぶと言うのですか?」
いや、普通に考えて学院に通うならその優先は勉学だろう。
ペルセポネは物凄く目を真ん丸くしている。
「旦那様。そんなに勉学お好きでしたっけ? お好きなら別に勤しんで頂いても構いませんが?」
「いや、結構」
好きでもないし嫌いでもない。
「旦那様への依頼は、学院生に狙いを定めた襲撃事件の究明です」
「襲撃事件?」
ペルセポネは机に封筒を置いたので、それを手元に引き寄せて中を見る。
それはリンカやアミルが通っている学院で、教師と生徒の名前、性別、年齢、住所が細かく記載された書類だった。そしてそれには数名だが、名前を赤線で引かれいるのが見受けられた。
「その赤線で消しているのが、今回襲撃された生徒達です」
「何か繋がりみたいなのはあるのか?」
「水面下で調べてはいますが、今の所、コレと言った確証はありません」
「で、俺に学院に潜入して学院内からまずは調査してくれ、と?」
「ご推察通り。勿論、それ相応の報酬は用意します」
「分かった。引き受けよう」
「有難う御座います」
一礼してペルセポネは立ち上がり、部屋をあとにしようとしたその時、
「旦那様、あまり無理はなされませんよう」
「あぁ、分かってるよ」
と俺が答えると、ペルセポネは大きなため息を吐きながら」
「そう言っても、旦那様は昔から物凄く無理をされるじゃないですか? 今回の件、断ってもよかったんですよ?」
「良く言うよ。俺が断れないのを見越して持ち込んできたくせに」
「そ、それは、まぁ、そうなんですが・・・・・・」
「大丈夫だよ、ペル」
「・・・・・・信じてます」
言って部屋を出て行った。
俺、嫁に心配されるくらい弱く見えるのかな?
冥界に居る頃の俺は確かにガッチリしてたから、今のこの人間の身体と比べるとそう見えるんだろうなぁ。
よし、明日から筋トレして少しでも線を太くしよう。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
「そうじ」の力で異世界は救えるか?
掃除屋さん
ファンタジー
ただの掃除屋が異世界に転移してしまった。力無きゆえ処分されるかと思いきや1人の王女に引き取られる。
魔物と人間が争う世界で、人間の主人公は掃除を通じて魔物達との距離を縮める。
果たして人間と魔物が分かり合える日は来るのか。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?
異世界のおっさんフリー冒険者は固有スキル「傘を刺す」で最強無双だった
中七七三
ファンタジー
なんの恥ずかしげもないテンプレ展開。
超ブラック企業に務めるおっさん、サラリーマンはトッラク(以下略
んで、異世界に転生。
転生したのは、異世界有数の名門貴族。
そして、5歳になると「固有スキル」を与えられるのだ。
降臨の儀式で、天より魔具を授かり、それと一体となるこで「固有スキル」を発揮できる。
異世界に転生したおっさんも、儀式で魔具を授かる。
それは、彼を「異世界最強・無双」にするものだった。
余りに希少な能力に、周囲は騒然、盛り上がる。
しかし――
「いらねーよこんな魔具(もん)!」
転生した元おっさんは、そんなものは要らなかった。
魔具も「異世界最強・無双」の固有スキルもいらない。
めざすのは、まったりゆっくりのスローライフだ。
しかし、付与された魔具と固有スキルはもう切り離せない。
「なにが、高貴なる物の義務だ。クソか! アホウか!」
彼は家を飛び出し気ままな冒険者生活に入った。
それも、楽ちんな採取専門のフリー冒険者。
冒険者ギルドにすら所属していない。
「Sランク? なにそれ。いいよ適当で……」
しかし、彼の「異世界最強・無双」の力は魅力的すぎた。
実家からは、彼の「すご腕の婚約者」たちが、追手として放たれた。
3人の美少女達――
「もうね、彼の子をなせば、名門貴族の正妻確約なのよぉ!」
「あら、そう簡単にいくかしら?」
「愛してます…… 愛しています…… 愛しているのです……」
元おっさん、逃げ切れるのか?
気楽に、ゆったり生活できればそれで十分――
元おっさんサラリーマンにして、転生フリー冒険者に安息の日はやってくるのか?
(表紙は「英雄キャラクタージェネレータ|サクセス」様で作成したものです)
喫茶店フェリシア夜間営業部
山中あいく
ファンタジー
公園の近くにある小さな個人経営の喫茶店。そこは夜間営業をしている。
扉の向こうから来るお客様は皆異世界のお客さま!時間も場所もバラバラで、種族すら越えた者同士が集うこの喫茶店に私は務める事になった。
この店でのルールはただひとつ。争いは起こさないこと。
皆さまのご来店お待ちしております!
「喫茶店フェリシア夜間営業部」の表紙イラストはじゆ様に描いていただきました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
『愛された系神子の歌姫』と『ぶりっこ性悪転生偽ヒロイン』
アベリア
ファンタジー
ファーガス神聖帝国の『魔王にも愛される神子の歌姫』事、ルナ・ローズクォーツ
ファーガス神聖帝国の『ぶりっこ性悪転生偽ヒロイン』事、リリー・レモネード
真のヒロイン事、ルナローズクォーツは大切な神様にもらったコンパクトを偽ヒロインにワザと壊され神様に祈り直してもらったが神にもリリー・レモネードは見放される
ルナも許す事が出来ず・・・さぁざまぁの始まりだ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる