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第五章

冥王、学院へ通う

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 「えぇ、今日から皆さんと一緒に勉学に励む事になった、紫焔君だ」
 女性教師がチラチラと俺の顔を見ながら、紹介する。
 「紫焔と言います。宜しく」
 俺はそう言って頭を下げた。
 「では、紫焔君、好きな所に座って下さい」
 「はい」
 女性教師に言われた通り、どこか空いてる席に座ろうと思い教室をサッと見渡すと、見知った顔が二つあった。
 その二人が、席が空いているとアピールしてくる。
 いきなり知らない人間の横に座っても、会話が出来なくて困るだろうから、この見知った顔の人物の隣にでも座るとしよう。
 「宜しくな、リンカ、アミル」
 「はい」
 「宜しく」
 さて、何で俺が学院に通う事になったのかと言うと、
 「旦那様には来週から学院に通って頂きます」
 「はい?」
 その日、ペルセポネはウチにやって来た。
 護衛も着けず、1人で来たらしい。
 せめて護衛の1人位は着けろと言ったのだが、
 「護衛がいなくても自分の身は自分で守れます」
 うん、よく知っている。
 君が強い事は夫である俺がよぉく知っている。
 だが、
 「見栄えってもんがあるでしょうが?」
 「堅苦しいのは嫌いです」
 それも知っている。
 「だがなぁ・・・・・・」
 「旦那様、私はそんな話しをしに来たわけではないのですが?」
 「あぁ、すまん」
 俺はペルセポネを座らせて、一旦、台所へ行き、お茶を準備して戻った。
 「お茶しかないけど我慢してくれよ?」
 「あら、旦那様自ら注いでくれるのですか?」
 「この世界じゃ、君の方が立ち位置が上だからな」
 「有難う御座います」
 ペルセポネはお茶を啜ってから俺の顔を見た。
 「旦那様はこの国に『魔装騎兵隊』の事は存じておりまして?」
 「噂だけなら聞いてる。確か・・・・・・」
 『魔装騎兵隊』とは、この人間の世界でも、特に高い魔力を持っている者達を集めて、国の防衛を行っている部隊の事だ。
 ただ、元々人間の有している魔力なんて、他種族に比べて雲泥の差だ。どう足掻いても足元にも及ばないだろう。そんな人間の中で、高い魔力を有する子供達を育成し『魔装騎兵隊』へと入隊させるらしい。
 その『魔装騎兵隊』』に配備されている道具の事を『魔装具』といい、それを使って魔力を増幅するらしいのだ。
 因みに武芸者の持つ武具は『魔装具』ではなく、武芸者専門の武具屋があり、それなりの金額を払ってオーダーしてもらっている。
 「その『魔装騎兵隊』の候補生を養成するのが学院なのです」
 「学院の事は分かった。分かったが、何故俺が入学しなければならないんだ?」
 「旦那様の今の見た目から考えれば、勉学に勤しむのは当たり前の事じゃないですか?」
 普通の世界ならばそうだろう。
 俺の見た目は、世間一般で考えれば学校に通っていてもおかしくはないだろう。世間一般で考えればだ。
 「でもな、ペル。俺はすでに武芸者という仕事をこの世界でやってるし、顔もそれなりに売れてる。その状況で学院に通ったら、色々と問題が起きそうなのだが?」
 「その辺は大丈夫です。それなりに手を回していますから」
 「あぁ、そうなんだ・・・・・・」
 どんな風に手を回したのかは、この際聞かないでおこう。
 「で、学院に行って俺は真面目に勉強すればいいのか?」
 「まさか。今更旦那様は何を学ぶと言うのですか?」
 いや、普通に考えて学院に通うならその優先は勉学だろう。
 ペルセポネは物凄く目を真ん丸くしている。
 「旦那様。そんなに勉学お好きでしたっけ? お好きなら別に勤しんで頂いても構いませんが?」
 「いや、結構」
 好きでもないし嫌いでもない。
 「旦那様への依頼は、学院生に狙いを定めた襲撃事件の究明です」
 「襲撃事件?」
 ペルセポネは机に封筒を置いたので、それを手元に引き寄せて中を見る。
 それはリンカやアミルが通っている学院で、教師と生徒の名前、性別、年齢、住所が細かく記載された書類だった。そしてそれには数名だが、名前を赤線で引かれいるのが見受けられた。
 「その赤線で消しているのが、今回襲撃された生徒達です」
 「何か繋がりみたいなのはあるのか?」 
 「水面下で調べてはいますが、今の所、コレと言った確証はありません」
 「で、俺に学院に潜入して学院内からまずは調査してくれ、と?」
 「ご推察通り。勿論、それ相応の報酬は用意します」
 「分かった。引き受けよう」
 「有難う御座います」
 一礼してペルセポネは立ち上がり、部屋をあとにしようとしたその時、
 「旦那様、あまり無理はなされませんよう」
 「あぁ、分かってるよ」
 と俺が答えると、ペルセポネは大きなため息を吐きながら」
 「そう言っても、旦那様は昔から物凄く無理をされるじゃないですか? 今回の件、断ってもよかったんですよ?」
 「良く言うよ。俺が断れないのを見越して持ち込んできたくせに」
 「そ、それは、まぁ、そうなんですが・・・・・・」
 「大丈夫だよ、ペル」
 「・・・・・・信じてます」
 言って部屋を出て行った。
 俺、嫁に心配されるくらい弱く見えるのかな?
 冥界に居る頃の俺は確かにガッチリしてたから、今のこの人間の身体と比べるとそう見えるんだろうなぁ。
 よし、明日から筋トレして少しでも線を太くしよう。
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