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部屋は薄明るい。ひどく重い体をよじってベッドの端まで移動し、天蓋をめくってみれば、カーテンから朝の日差しが透けている。緩慢な仕草で部屋を見回すが、誰の姿も見えなかった。
一瞬で焦燥感が湧き上がる。アレクシスは勢いよく起き上がり、ベッドから降りようとして、絨毯の上に崩れ落ちた。
全身を襲う倦怠感と筋肉痛。とくに下半身はひどく、まるで力が入らない。
「ノヴァ、ノヴァ!」
悲鳴のように叫んだ声はかすれていた。
全部夢だったらどうしよう。庭園でノヴァを見付けたこと、彼と淫らに交じり合ったこと。これで自分のもとに帰ってきてくれるのだと、やっと愛し合うことができたのだと、あんなに安堵して、あんなに嬉しかったのに。
「アレクシス様」
とても廊下まで聞こえるような声ではなかったはずだが、慌ただしく開かれたドアから黒い騎士の制服を着た男が入って来る。
「ノヴァ!」
黒い髪に黒い瞳のその騎士は、間違いなく探していたその男だった。
アレクシスを助け起こそうと駆け寄って来たノヴァに縋り付く。その存在が幻でないことを確かめるように、必死で抱き着いた。確かに肉体が存在している。騎士の制服の下から響く鼓動に、一気に安堵が押し寄せ、瞼を瞑って息を吐いた。
「よかった……。体は大丈夫か?」
「私なんかいいんです。アレクシス様こそ、お体は大丈夫ですか? 本当に申し訳ございません、あんな、あんな……ことをして……」
ノヴァの顔を見上げる。苦痛に耐えるように歪められたその表情に、アレクシスは意地悪く笑った。
後悔なんてして求めてはいない。
「……まったくだ。よくもおれを置いて行ってくれたな。反省しろ」
黒い目が驚きに見開かれてから、あからさまに狼狽えて視線がさまよった。
ノヴァはアレクシスの体をめちゃくちゃに蹂躙したことを謝っている。そんなことは当然理解していたが、さしたる問題ではない。彼が姿をくらませたことの方がよほど、アレクシスにとって耐え難かった。
「お前が姿を消してから、おれは食事が喉を通らないし夜は眠れないし、その状態でお前を探していたものだから、城の者からは気がふれたと思われていたんだぞ。おれの身を案じるのなら、お前がそばにいてくれなくてはだめだ」
それでもまだノヴァは浮かない顔で、目を合わせようとしない。アレクシスは唇を尖らせ、少し剣呑な声音でなじるように言った。
「お前が人の姿に戻れたということは、おれの気持ちを受け入れてくれたということじゃないのか?」
ようやくノヴァの視線がアレクシスに落とされる。叱られて拗ねる子供のような顔をしていた。
「……そうです」
ノヴァの顔が近付いて、アレクシスの唇に軽く口付け、食んでいく。甘やかな口付けに胸がむずむずして、アレクシスは何も言えなくなった。もっと激しい交合をしたばかりだというのに、こんな小鳥のような口付けひとつで簡単に夢見心地になってしまう。
「立てますか?」
頬をほんのり染めて黙り込んだアレクシスを、ノヴァが手助けしてベッドへ戻す。ベッドの上で上体を起こすアレクシスの膝に、毛布がかけられた。
「しばらく体を休めてください。無理をさせてしまったので……。お加減はいかがですか? どこか痛むところはありますか」
ベッド脇で身を屈めるノヴァは心配そうだったが、アレクシスは笑いそうになってしまった。
確かに意識がなくなるまで抱かれ続けたのだから、無理をさせられたには違いない。しかしずっと自分が抑えられなくなることが怖いと恐れていたくせして、いざその時が来てアレクシスの体を暴いた彼といったらどうだ。しつこいほどに体中を愛撫し、執拗に後ろをほぐして、行為そのものに痛みなんて少しもなかった。理性を失った状態でなお、アレクシスを大事に愛してくれたのだ。
手足を固定されながら悦楽に身体をのたうたせていたせいで、筋肉やら関節やらが痛むが、アレクシスが望んで身を差し出したのだから、文句などあろうはずもない。
「問題ない。少し疲れたから休ませてもらう。お前の体は本当に大丈夫なんだな?」
自分の体よりも、ノヴァの体の方がよほど気がかりだった。まだ返事を貰っていないと訊ねると、ノヴァは眉を下げる。
「はい……、ありがとうございます。その……本当の人間には戻れないのですが……、ほとんど人間に近いと思います」
「ほとんど」
「以前よりかなり楽に人間の形をとることができます、が、人間の私は三年前に死んでいるので……、私の本性があの姿なのは変えようがありません」
懺悔するように表情が硬い。化け物などあなたに相応しくないと、拒絶されたらどうしようと、内心で思っているのが聞かずとも分かった。この期に及んで。呆れてしまう。
「ノヴァ。おれを見くびらないでくれ。おれの言葉を忘れたか」
アレクシスは不安げな黒い瞳で見てくる彼の手をとって、その手のひらに口付け、笑みを浮かべた。
「おれのために化け物になったお前を、どうして愛さずにいられる」
化け物の姿こそ、彼がアレクシスを愛してくれた証左だ。
ノヴァの手がびくりと跳ねる。その頬の血色がよくなるのを見て、アレクシスは満足げな表情を浮かべた。
「お前でさえあれば、おれはなんでもいいんだ。いい加減理解したか」
アレクシスの頬を、ノヴァの両手が包み込む。再び軽く口付けて、そのまま吐息が伝わる距離でノヴァが小さく囁いた。
「……ありがとうございます」
それからノヴァは屈めていた身を起こす。彼の手が金髪をやわらかく梳いた。
「声が掠れておいでなので、喉に良い飲み物をお持ちします。朝食は召し上がれますか?」
「いや……、食事はまだいい」
疲労感が強いせいか、食欲がわかない。元々ノヴァが失踪したショックで寝食を疎かにしていたところに、追い打ちのように長時間体を好きにされたのだから、アレクシス本人が思っている以上に身体が弱っているのかもしれなかった。
ノヴァが出て行ってから、体を横たえ、毛布を肩まで引き上げる。
よかった。静かになった部屋で、噛み締めるように思う。ノヴァが梳いていた髪に無意識に触れた。
今度こそ本当に失うことになってしまったらなんて、考えただけで寒気がする。そんなことにならなくてよかった。ちゃんと帰ってきてくれた。重かった体に少しずつ血が通っていくような感覚がした。
目を瞑ってノヴァが帰ってくるのを待っていると、突然乱暴にドアが開けられた。ノックすらしない闖入者に驚いて体を起こす。足早に入って来たのは、血相を変えた王だった。
「アレクシス!」
「父上……?」
王はベッドの脇に膝をつくと、アレクシスの手を両手で握る。
「すまなかった。まさかお前が、こんなになるまで思い詰めていただなんて……」
俯いて謝りだした父の姿に、アレクシスはあっけにとられる。何の話だ。まさかノヴァに懸想していたことがばれていたのか。
軽く眉をひそめたアレクシスには気付きもせず、王は続ける。
「この国とお前の将来のことを案じていたが、今のお前が体を壊してしまったのでは元も子もない。もう無理に婚姻しろとは言うまい。だがわかってほしい、本当にお前の未来を大事に思ってのことだったんだ……」
気配を感じてドアの方を見ると、気まずげな顔のノヴァが、ポットとカップの乗ったトレーを手に戻って来たところだった。たまたまノヴァと遭遇した王が、アレクシスが不調で寝込んだとでも聞いたのだろう。開け放たれたままだったドアを、ノヴァが静かに閉める。
婚姻の話を王としたのは、アレクシスの誕生日のことだった。そしてその少し後にノヴァが居なくなり、アレクシスは食事も睡眠もまともにとれなくなった。王の目には、婚姻の話でショックを受けたアレクシスが体調を崩し、ついに倒れたように見えているのだ。
心配させたのは悪いが、女性と婚姻せずともよいと言ってくれているのだから、わざわざ訂正することもない。
「わかっています。父上はいつも、おれのことを大事に考えて下さっている」
「ああ。だから、出て行くなどと言わないでくれ。私はお前以外に王位を譲る気はない。私とユーニスの血を引く唯一の子供なのだから」
顔を上げた王の声は懇願のようですらあったが、アレクシスは素直に頷くことができなかった。
「……おれには、王になる資格などありません。愛する男に何かあったら、おれは国家よりもその男のことを優先してしまう。民のことを第一に考えられない王など、あってはいけない」
ノヴァが姿をくらませただけであの有様だ。とても己に務まるとは思えない。
正直に伝えたアレクシスにしかし、王は頑として譲らなかった。
「なら尚更、お前がやるんだ。国が乱れれば、お前の恋人の生活も危うくなる。恋人を幸せにしてやりたければ、お前の手で国を安定させるのが一番確実だろう。幼い頃から王となるべく様々な勉強に励んできたお前より、私欲のために権力争いをするような人間の方が優れていることがあるか?」
そう言われるとそんなような気がしてきて、アレクシスは口ごもった。上手く丸め込まれているような気がするが、権力を狙ってアレクシスに取り入ろうと媚びてくる数多の人間たちの顔を思い浮かべると、彼らに優れた政治ができるようにも思えない。
黙り込んでしまったアレクシスの頭をぽんぽんと撫でて、王は立ち上がった。
「体を壊しているときに考える話でもあるまい。今はゆっくり休みなさい。そのうち、恋人を紹介に来るように」
話が終わるまでドアの前で大人しく待っているノヴァが、今どんな顔をしているのか。様子を窺いたかったが、そんなことをしたらこの場でばれてしまいそうで、アレクシスは涼しい顔で我慢した。
退室した王を見送ってから、トレーを持ったノヴァが近付いて来る。
「だそうだが」
紹介も何もとっくに見知った顔を見上げると、非常に複雑そうな顔をしていた。
「……考えさせてください」
ノヴァがサイドテーブルにトレーを置き、湯気の立つ琥珀色の飲み物をカップに注いでアレクシスに差し出してくる。甘い香りがした。
「……お前は、おれの……」
受け取ったカップを口に運ぶ。酸味のある紅茶に、はちみつの甘さを感じた。
言葉にするのが少し気恥ずかしい。今更だというのに。
「恋人、ということで、いいのか」
そろそろとノヴァを見上げると、彼はぎゅっと目を瞑って、額を押さえた。
「……考え、させて、ください……」
「……そうか」
未だ尻込みしているのかと責めるような気持ちもあるが、以前のノヴァだったら即座に否定していただろう。着実に進歩はしている。
「ああ、孤児院のあの子供に顔を見せに行ってやれ。心配していたから」
ふと思い出してそう言うと、その時のことがよぎったのか、ノヴァは眉根を寄せてアレクシスを見てきた。
「アレクシス様、あの子が無礼なことを申し上げました。代わってお詫びします。悪い子では無いんです」
「わかっている。お前を大事に思っていたのだろう。おれと同じだ。お前を恋う気持ちならおれの方が詳しいが」
しれっと付け加えてやると、ノヴァは険しい表情をしながらも頬が赤くなっている。苦悩しているノヴァの顔が愛らしく見えて、アレクシスは小さく笑った。
ノヴァが帰って来たことで、ようやく落ち着きを取り戻したアレクシスがしたことと言えば、力を貸してくれたロロに礼を伝えることと、溜まった仕事を片付けることだった。
体調が万全になるまでは無理をしないようにとノヴァに懇願されて、何日もかけて休み休み書類を処理し終わる頃には、冬が訪れようとしていた。
アレクシスの体を過度なまでに気遣うノヴァとの関係は、当然進展していない。アレクシスも、彼が覚悟を決めてくれるまで待つ気でいて、今更強引に迫るつもりは無かった。
しかし今夜は特に冷える。……という口実があれば、共寝くらい許してくれるのではないか。もう彼が眠ってしまっていれば大人しく諦めようと思いながら、アレクシスは寝台を抜け出した。
薄い寝間着一枚で暗い廊下に出ると、しんと冷えた空気に身震いする。
すぐ隣のノヴァの部屋のドアをノックするより先に、そのドアが開いた。
「こんな夜更けにどちらへ」
ノヴァはシャツとズボンの軽装だった。室内は暗く、髪が少し乱れているからもう横になっていたのかもしれない。いつもより愛想のない顔つきにどきりとした。
「……お前の部屋だが」
あっ、と小さく声を上げて、ノヴァが目を逸らす。それこそこんな夜更けに、アレクシスが恋しい男を置いてどこに行くと思っていたのだろうか。
「今夜は寒いから……」
どう言おうかと思案するアレクシスを見て、ノヴァは感情のうかがえない顔で、ためらいがちに言った。
「……どうぞ、お風邪を召されてはいけませんので……」
暗い部屋に招き入れられて、いつかの湖畔の別荘でのことを思い出した。あの時はアレクシスが、おれが風邪を引いたらどうする、などと言ってノヴァを求めた。彼もきっとあの日のことを思い出して、同じような言い方をしているのだ。
ノヴァに手を引かれて、暗い部屋を歩く。以前彼のベッドで一緒に寝たいと言った時には、狭いからと断られた。その大人の男が二人で寝るには狭いベッドへと連れられて、促されるまま毛布の中にもぐりこむ。次いで隣に入ってきたノヴァに、後ろからぎゅっと抱き締められた。
体が、一瞬で熱くなる。ひどく動揺して息を詰めた。
思い出してしまったのだ。手足を拘束されて、淫らな交合を果たした夜のことを。
薄い寝間着でしか守られていないアレクシスの肌が火照っていることなど、ノヴァには伝わっているに決まっていた。
「アレクシス様」
「あ」
耳元で囁く声がして、アレクシスの喉から上擦った息が漏れる。
「違う!」
ただ抱き締められただけで昂ってしまったことがひどく恥ずかしくて、アレクシスは反射的にノヴァを突き飛ばしていた。逃げるように上半身を起こして、壁に背をつける。闇に慣れた目が、傷付いた顔で起き上がるノヴァを捉えた。
「も、申し訳ありま」
「違う、そうじゃ、おれはそんなつもりじゃなくて」
拒絶されたと勘違いしているノヴァの腕を掴む。彼に悲しい誤解などさせるまいと必死だった。
「そんなつもりで来たんじゃない、ただお前と眠れたらと思って、本当に、それだけだったのに、か、体が勝手に……、あの夜を思い出して……」
あまりの羞恥に顔が熱くなるのを感じた。ノヴァを拒絶したのではないと弁解するのに、あさましい体になってしまったのだと告白しなければならないのだ。
「お前に触れられるのが嫌なわけじゃないんだ、……おれを、はしたないと軽蔑しないでくれ……」
俯いて声を絞り出す。返事がないのが恐ろしくて顔を上げられずにいると、ノヴァの腕を掴んでいた手に、彼の手が重なった。
「軽蔑なんてしません。しませんが……」
そろそろと顔を上げる。ノヴァは険しい顔つきをしていた。
「私と一緒に居たら、またあなたにそういう……、不本意な思いをさせてしまうかもしれません。それでも本当に……」
本当に、自分なんかでいいのか。その戸惑いが、はっきりと言葉にして訊ねることで拒絶されてしまうことへの恐れが、触れるてのひらから伝わってくる気がする。
アレクシスは眉を下げて、呆れた調子で笑みを浮かべた。
「お前は本当に、おれに同じことを言わせるのが好きだな。おれはお前がいい。お前でなければいやだ。何度聞かれても返事は変わらない。愛していると、毎晩子守唄代わりに囁いてやろうか?」
わざと茶化してやると、深刻そうだったノヴァの目元が少し和らぐ。彼は少し困ったように笑って、両腕を広げた。
「……抱き締めても?」
「……ああ」
にじり寄るようにノヴァに近付くと、向かいからぎゅうと優しく抱き締められる。体が過剰にびくんと跳ねたが、アレクシスは強く目を瞑って、できるだけなんでもないふりをして、ノヴァに身体を預けた。
耳元で低い声が呟く。
「ずっとあなたを、私だけのものにしたかった。……もう、あなたを手放してなんて、あげられませんよ」
「ああ」
笑っているつもりなのに、返す声は少しだけ震えていた。ずっと待ち望んでいた言葉だった。
一呼吸間を置いてから、ノヴァが言う。
「陛下に……お父上に、ご挨拶させて下さい」
一瞬で焦燥感が湧き上がる。アレクシスは勢いよく起き上がり、ベッドから降りようとして、絨毯の上に崩れ落ちた。
全身を襲う倦怠感と筋肉痛。とくに下半身はひどく、まるで力が入らない。
「ノヴァ、ノヴァ!」
悲鳴のように叫んだ声はかすれていた。
全部夢だったらどうしよう。庭園でノヴァを見付けたこと、彼と淫らに交じり合ったこと。これで自分のもとに帰ってきてくれるのだと、やっと愛し合うことができたのだと、あんなに安堵して、あんなに嬉しかったのに。
「アレクシス様」
とても廊下まで聞こえるような声ではなかったはずだが、慌ただしく開かれたドアから黒い騎士の制服を着た男が入って来る。
「ノヴァ!」
黒い髪に黒い瞳のその騎士は、間違いなく探していたその男だった。
アレクシスを助け起こそうと駆け寄って来たノヴァに縋り付く。その存在が幻でないことを確かめるように、必死で抱き着いた。確かに肉体が存在している。騎士の制服の下から響く鼓動に、一気に安堵が押し寄せ、瞼を瞑って息を吐いた。
「よかった……。体は大丈夫か?」
「私なんかいいんです。アレクシス様こそ、お体は大丈夫ですか? 本当に申し訳ございません、あんな、あんな……ことをして……」
ノヴァの顔を見上げる。苦痛に耐えるように歪められたその表情に、アレクシスは意地悪く笑った。
後悔なんてして求めてはいない。
「……まったくだ。よくもおれを置いて行ってくれたな。反省しろ」
黒い目が驚きに見開かれてから、あからさまに狼狽えて視線がさまよった。
ノヴァはアレクシスの体をめちゃくちゃに蹂躙したことを謝っている。そんなことは当然理解していたが、さしたる問題ではない。彼が姿をくらませたことの方がよほど、アレクシスにとって耐え難かった。
「お前が姿を消してから、おれは食事が喉を通らないし夜は眠れないし、その状態でお前を探していたものだから、城の者からは気がふれたと思われていたんだぞ。おれの身を案じるのなら、お前がそばにいてくれなくてはだめだ」
それでもまだノヴァは浮かない顔で、目を合わせようとしない。アレクシスは唇を尖らせ、少し剣呑な声音でなじるように言った。
「お前が人の姿に戻れたということは、おれの気持ちを受け入れてくれたということじゃないのか?」
ようやくノヴァの視線がアレクシスに落とされる。叱られて拗ねる子供のような顔をしていた。
「……そうです」
ノヴァの顔が近付いて、アレクシスの唇に軽く口付け、食んでいく。甘やかな口付けに胸がむずむずして、アレクシスは何も言えなくなった。もっと激しい交合をしたばかりだというのに、こんな小鳥のような口付けひとつで簡単に夢見心地になってしまう。
「立てますか?」
頬をほんのり染めて黙り込んだアレクシスを、ノヴァが手助けしてベッドへ戻す。ベッドの上で上体を起こすアレクシスの膝に、毛布がかけられた。
「しばらく体を休めてください。無理をさせてしまったので……。お加減はいかがですか? どこか痛むところはありますか」
ベッド脇で身を屈めるノヴァは心配そうだったが、アレクシスは笑いそうになってしまった。
確かに意識がなくなるまで抱かれ続けたのだから、無理をさせられたには違いない。しかしずっと自分が抑えられなくなることが怖いと恐れていたくせして、いざその時が来てアレクシスの体を暴いた彼といったらどうだ。しつこいほどに体中を愛撫し、執拗に後ろをほぐして、行為そのものに痛みなんて少しもなかった。理性を失った状態でなお、アレクシスを大事に愛してくれたのだ。
手足を固定されながら悦楽に身体をのたうたせていたせいで、筋肉やら関節やらが痛むが、アレクシスが望んで身を差し出したのだから、文句などあろうはずもない。
「問題ない。少し疲れたから休ませてもらう。お前の体は本当に大丈夫なんだな?」
自分の体よりも、ノヴァの体の方がよほど気がかりだった。まだ返事を貰っていないと訊ねると、ノヴァは眉を下げる。
「はい……、ありがとうございます。その……本当の人間には戻れないのですが……、ほとんど人間に近いと思います」
「ほとんど」
「以前よりかなり楽に人間の形をとることができます、が、人間の私は三年前に死んでいるので……、私の本性があの姿なのは変えようがありません」
懺悔するように表情が硬い。化け物などあなたに相応しくないと、拒絶されたらどうしようと、内心で思っているのが聞かずとも分かった。この期に及んで。呆れてしまう。
「ノヴァ。おれを見くびらないでくれ。おれの言葉を忘れたか」
アレクシスは不安げな黒い瞳で見てくる彼の手をとって、その手のひらに口付け、笑みを浮かべた。
「おれのために化け物になったお前を、どうして愛さずにいられる」
化け物の姿こそ、彼がアレクシスを愛してくれた証左だ。
ノヴァの手がびくりと跳ねる。その頬の血色がよくなるのを見て、アレクシスは満足げな表情を浮かべた。
「お前でさえあれば、おれはなんでもいいんだ。いい加減理解したか」
アレクシスの頬を、ノヴァの両手が包み込む。再び軽く口付けて、そのまま吐息が伝わる距離でノヴァが小さく囁いた。
「……ありがとうございます」
それからノヴァは屈めていた身を起こす。彼の手が金髪をやわらかく梳いた。
「声が掠れておいでなので、喉に良い飲み物をお持ちします。朝食は召し上がれますか?」
「いや……、食事はまだいい」
疲労感が強いせいか、食欲がわかない。元々ノヴァが失踪したショックで寝食を疎かにしていたところに、追い打ちのように長時間体を好きにされたのだから、アレクシス本人が思っている以上に身体が弱っているのかもしれなかった。
ノヴァが出て行ってから、体を横たえ、毛布を肩まで引き上げる。
よかった。静かになった部屋で、噛み締めるように思う。ノヴァが梳いていた髪に無意識に触れた。
今度こそ本当に失うことになってしまったらなんて、考えただけで寒気がする。そんなことにならなくてよかった。ちゃんと帰ってきてくれた。重かった体に少しずつ血が通っていくような感覚がした。
目を瞑ってノヴァが帰ってくるのを待っていると、突然乱暴にドアが開けられた。ノックすらしない闖入者に驚いて体を起こす。足早に入って来たのは、血相を変えた王だった。
「アレクシス!」
「父上……?」
王はベッドの脇に膝をつくと、アレクシスの手を両手で握る。
「すまなかった。まさかお前が、こんなになるまで思い詰めていただなんて……」
俯いて謝りだした父の姿に、アレクシスはあっけにとられる。何の話だ。まさかノヴァに懸想していたことがばれていたのか。
軽く眉をひそめたアレクシスには気付きもせず、王は続ける。
「この国とお前の将来のことを案じていたが、今のお前が体を壊してしまったのでは元も子もない。もう無理に婚姻しろとは言うまい。だがわかってほしい、本当にお前の未来を大事に思ってのことだったんだ……」
気配を感じてドアの方を見ると、気まずげな顔のノヴァが、ポットとカップの乗ったトレーを手に戻って来たところだった。たまたまノヴァと遭遇した王が、アレクシスが不調で寝込んだとでも聞いたのだろう。開け放たれたままだったドアを、ノヴァが静かに閉める。
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心配させたのは悪いが、女性と婚姻せずともよいと言ってくれているのだから、わざわざ訂正することもない。
「わかっています。父上はいつも、おれのことを大事に考えて下さっている」
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顔を上げた王の声は懇願のようですらあったが、アレクシスは素直に頷くことができなかった。
「……おれには、王になる資格などありません。愛する男に何かあったら、おれは国家よりもその男のことを優先してしまう。民のことを第一に考えられない王など、あってはいけない」
ノヴァが姿をくらませただけであの有様だ。とても己に務まるとは思えない。
正直に伝えたアレクシスにしかし、王は頑として譲らなかった。
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そう言われるとそんなような気がしてきて、アレクシスは口ごもった。上手く丸め込まれているような気がするが、権力を狙ってアレクシスに取り入ろうと媚びてくる数多の人間たちの顔を思い浮かべると、彼らに優れた政治ができるようにも思えない。
黙り込んでしまったアレクシスの頭をぽんぽんと撫でて、王は立ち上がった。
「体を壊しているときに考える話でもあるまい。今はゆっくり休みなさい。そのうち、恋人を紹介に来るように」
話が終わるまでドアの前で大人しく待っているノヴァが、今どんな顔をしているのか。様子を窺いたかったが、そんなことをしたらこの場でばれてしまいそうで、アレクシスは涼しい顔で我慢した。
退室した王を見送ってから、トレーを持ったノヴァが近付いて来る。
「だそうだが」
紹介も何もとっくに見知った顔を見上げると、非常に複雑そうな顔をしていた。
「……考えさせてください」
ノヴァがサイドテーブルにトレーを置き、湯気の立つ琥珀色の飲み物をカップに注いでアレクシスに差し出してくる。甘い香りがした。
「……お前は、おれの……」
受け取ったカップを口に運ぶ。酸味のある紅茶に、はちみつの甘さを感じた。
言葉にするのが少し気恥ずかしい。今更だというのに。
「恋人、ということで、いいのか」
そろそろとノヴァを見上げると、彼はぎゅっと目を瞑って、額を押さえた。
「……考え、させて、ください……」
「……そうか」
未だ尻込みしているのかと責めるような気持ちもあるが、以前のノヴァだったら即座に否定していただろう。着実に進歩はしている。
「ああ、孤児院のあの子供に顔を見せに行ってやれ。心配していたから」
ふと思い出してそう言うと、その時のことがよぎったのか、ノヴァは眉根を寄せてアレクシスを見てきた。
「アレクシス様、あの子が無礼なことを申し上げました。代わってお詫びします。悪い子では無いんです」
「わかっている。お前を大事に思っていたのだろう。おれと同じだ。お前を恋う気持ちならおれの方が詳しいが」
しれっと付け加えてやると、ノヴァは険しい表情をしながらも頬が赤くなっている。苦悩しているノヴァの顔が愛らしく見えて、アレクシスは小さく笑った。
ノヴァが帰って来たことで、ようやく落ち着きを取り戻したアレクシスがしたことと言えば、力を貸してくれたロロに礼を伝えることと、溜まった仕事を片付けることだった。
体調が万全になるまでは無理をしないようにとノヴァに懇願されて、何日もかけて休み休み書類を処理し終わる頃には、冬が訪れようとしていた。
アレクシスの体を過度なまでに気遣うノヴァとの関係は、当然進展していない。アレクシスも、彼が覚悟を決めてくれるまで待つ気でいて、今更強引に迫るつもりは無かった。
しかし今夜は特に冷える。……という口実があれば、共寝くらい許してくれるのではないか。もう彼が眠ってしまっていれば大人しく諦めようと思いながら、アレクシスは寝台を抜け出した。
薄い寝間着一枚で暗い廊下に出ると、しんと冷えた空気に身震いする。
すぐ隣のノヴァの部屋のドアをノックするより先に、そのドアが開いた。
「こんな夜更けにどちらへ」
ノヴァはシャツとズボンの軽装だった。室内は暗く、髪が少し乱れているからもう横になっていたのかもしれない。いつもより愛想のない顔つきにどきりとした。
「……お前の部屋だが」
あっ、と小さく声を上げて、ノヴァが目を逸らす。それこそこんな夜更けに、アレクシスが恋しい男を置いてどこに行くと思っていたのだろうか。
「今夜は寒いから……」
どう言おうかと思案するアレクシスを見て、ノヴァは感情のうかがえない顔で、ためらいがちに言った。
「……どうぞ、お風邪を召されてはいけませんので……」
暗い部屋に招き入れられて、いつかの湖畔の別荘でのことを思い出した。あの時はアレクシスが、おれが風邪を引いたらどうする、などと言ってノヴァを求めた。彼もきっとあの日のことを思い出して、同じような言い方をしているのだ。
ノヴァに手を引かれて、暗い部屋を歩く。以前彼のベッドで一緒に寝たいと言った時には、狭いからと断られた。その大人の男が二人で寝るには狭いベッドへと連れられて、促されるまま毛布の中にもぐりこむ。次いで隣に入ってきたノヴァに、後ろからぎゅっと抱き締められた。
体が、一瞬で熱くなる。ひどく動揺して息を詰めた。
思い出してしまったのだ。手足を拘束されて、淫らな交合を果たした夜のことを。
薄い寝間着でしか守られていないアレクシスの肌が火照っていることなど、ノヴァには伝わっているに決まっていた。
「アレクシス様」
「あ」
耳元で囁く声がして、アレクシスの喉から上擦った息が漏れる。
「違う!」
ただ抱き締められただけで昂ってしまったことがひどく恥ずかしくて、アレクシスは反射的にノヴァを突き飛ばしていた。逃げるように上半身を起こして、壁に背をつける。闇に慣れた目が、傷付いた顔で起き上がるノヴァを捉えた。
「も、申し訳ありま」
「違う、そうじゃ、おれはそんなつもりじゃなくて」
拒絶されたと勘違いしているノヴァの腕を掴む。彼に悲しい誤解などさせるまいと必死だった。
「そんなつもりで来たんじゃない、ただお前と眠れたらと思って、本当に、それだけだったのに、か、体が勝手に……、あの夜を思い出して……」
あまりの羞恥に顔が熱くなるのを感じた。ノヴァを拒絶したのではないと弁解するのに、あさましい体になってしまったのだと告白しなければならないのだ。
「お前に触れられるのが嫌なわけじゃないんだ、……おれを、はしたないと軽蔑しないでくれ……」
俯いて声を絞り出す。返事がないのが恐ろしくて顔を上げられずにいると、ノヴァの腕を掴んでいた手に、彼の手が重なった。
「軽蔑なんてしません。しませんが……」
そろそろと顔を上げる。ノヴァは険しい顔つきをしていた。
「私と一緒に居たら、またあなたにそういう……、不本意な思いをさせてしまうかもしれません。それでも本当に……」
本当に、自分なんかでいいのか。その戸惑いが、はっきりと言葉にして訊ねることで拒絶されてしまうことへの恐れが、触れるてのひらから伝わってくる気がする。
アレクシスは眉を下げて、呆れた調子で笑みを浮かべた。
「お前は本当に、おれに同じことを言わせるのが好きだな。おれはお前がいい。お前でなければいやだ。何度聞かれても返事は変わらない。愛していると、毎晩子守唄代わりに囁いてやろうか?」
わざと茶化してやると、深刻そうだったノヴァの目元が少し和らぐ。彼は少し困ったように笑って、両腕を広げた。
「……抱き締めても?」
「……ああ」
にじり寄るようにノヴァに近付くと、向かいからぎゅうと優しく抱き締められる。体が過剰にびくんと跳ねたが、アレクシスは強く目を瞑って、できるだけなんでもないふりをして、ノヴァに身体を預けた。
耳元で低い声が呟く。
「ずっとあなたを、私だけのものにしたかった。……もう、あなたを手放してなんて、あげられませんよ」
「ああ」
笑っているつもりなのに、返す声は少しだけ震えていた。ずっと待ち望んでいた言葉だった。
一呼吸間を置いてから、ノヴァが言う。
「陛下に……お父上に、ご挨拶させて下さい」
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