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side夏乃子
明らかに華恋の様子はおかしい、そう思った。
今日の授業中なんてぼーっとしていて当てられたら慌てていたし、休み時間は寝ている始末。部活だって本調子ではなさそうで、取れるボールも取れていなかった。
私は自販機で買ってきた250mlのオレンジジュースを華恋に渡す。
「休んだら? 集中もできてないみたいだし」
「え……ありがとう。でも今部活中だし飲めないよ」
「休めって言ってるの聞こえてなかったの?」
「あはは、でもジュースは飲めなくない?」
「今顧問いないんだし、飲んじゃえばいいのよ。てかジュースくらいで怒んないわよ。先輩も飲んでたし」
「うーん……」
何か言いたげな様子だ。まあたしかに、そのへんの先輩は部活こそしているが、サボってばかりで尊敬には値しない。その人達と同等の行為をする、ということに抵抗感があるのは十分わかった。
「じゃ、家でゆっくり飲んで。部活は休まなくて大丈夫?」
「それは大丈夫。ちょっと、ううん、なんでも。やろっか」
無理してるのは、嫌でもわかる。理由は、原因は……。
昼、明らかに妹が来て動揺していたところを見るに、なにか関係があるのではと疑ってしまう。仲が悪いのか、それだけであんなに落ち込むのか。
聞きたいことはあったが私はぐっと堪える。
「華恋、なんかあったら、ちゃんと言ってよね」
「うん。勿論。ありがとう」
濁ったような笑顔。相談されるのはまだ先みたいで、悲しくなった。
華恋が頼れる相手ではない。そういうことを暗に示されたみたいだ。事実そうなのだが、なんとも心は苦しい。
──何があったのかくらい、相談してよ。
これはエゴだろうか。偽善か、好奇心か。
純粋な心でいられてる自信はあまりなかった。いい人、という立ち位置で自分を正当化したかった。
私は、華恋の心に踏み込む勇気を持てず、ボールを握った。口の中は、苦い味がしたきがした。
明らかに華恋の様子はおかしい、そう思った。
今日の授業中なんてぼーっとしていて当てられたら慌てていたし、休み時間は寝ている始末。部活だって本調子ではなさそうで、取れるボールも取れていなかった。
私は自販機で買ってきた250mlのオレンジジュースを華恋に渡す。
「休んだら? 集中もできてないみたいだし」
「え……ありがとう。でも今部活中だし飲めないよ」
「休めって言ってるの聞こえてなかったの?」
「あはは、でもジュースは飲めなくない?」
「今顧問いないんだし、飲んじゃえばいいのよ。てかジュースくらいで怒んないわよ。先輩も飲んでたし」
「うーん……」
何か言いたげな様子だ。まあたしかに、そのへんの先輩は部活こそしているが、サボってばかりで尊敬には値しない。その人達と同等の行為をする、ということに抵抗感があるのは十分わかった。
「じゃ、家でゆっくり飲んで。部活は休まなくて大丈夫?」
「それは大丈夫。ちょっと、ううん、なんでも。やろっか」
無理してるのは、嫌でもわかる。理由は、原因は……。
昼、明らかに妹が来て動揺していたところを見るに、なにか関係があるのではと疑ってしまう。仲が悪いのか、それだけであんなに落ち込むのか。
聞きたいことはあったが私はぐっと堪える。
「華恋、なんかあったら、ちゃんと言ってよね」
「うん。勿論。ありがとう」
濁ったような笑顔。相談されるのはまだ先みたいで、悲しくなった。
華恋が頼れる相手ではない。そういうことを暗に示されたみたいだ。事実そうなのだが、なんとも心は苦しい。
──何があったのかくらい、相談してよ。
これはエゴだろうか。偽善か、好奇心か。
純粋な心でいられてる自信はあまりなかった。いい人、という立ち位置で自分を正当化したかった。
私は、華恋の心に踏み込む勇気を持てず、ボールを握った。口の中は、苦い味がしたきがした。
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