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「大丈夫なの?」
「何が、大丈夫だけど」
休憩していると、夏乃子が心配する様子で私に話しかけてきた。途中参加だから体がなまってるという言い訳は効かなそうだ。
大丈夫ではない、急にキスをされて去っていった有紗が気にならない訳がない。意識がそちらに集中してしまい、部活どころではない。
「告白そんなに大変だったの?」
「え、いや──」
いや、ここで否定したら、他の理由がない。
「あー、まあ、そんなところかな?」
「ふーん、そもそも本当に告白だったんだ」
「まあね」
納得したのか、夏乃子はそれ以上のことは聞いてこなかった。
有紗は、何を思ってあんな事をしたのだろうか。いや、これまでもずっとそれ以上のことはしてきているのだから、今更その程度の事だと結論付けようと思えば、簡単にできる。
しかし、有紗の異様な様子。
学校で強引に空き教室に連れられ、キスをするなんて、考えた事も無かった。今まで脅されて謎の関係を続けていたのに、急に、こんな。
──有紗は、私が恋人を作り、幸せになる事を許していないのか。
有紗は、私の事が嫌い、だという事なのだろうか。今までずっとその事実を認めたくなかった。でも、もう、ここまできたなら、認めるしかない。有紗は、私の事が、嫌いで、不幸せになってほしいんだ。
それなら、全てに納得がいく。
恨まれるような事をした記憶はない、だけど有紗の中では何か嫌な事があったのだろう。だからこそ、今こうなっている。
「さいっっあく……」
謝ろう。今日家に帰ったら。
多分、何も原因が分かっていないのに謝るのは不誠実だろう。でもこのままの状態で、分かりあえないなんて事はいやだ。私は有紗の事が好きだし、何も話し合えない関係になって、距離をとられてしまうのは嫌だ。
それならば、今のこの状況だって容認できてしまう気がした。歪で、おかしい、非難されるような今の状況でさえ、まだマシだと思えてしまう。
唯一の妹なのだから、嫌いなら嫌いだとはっきりと言ってほしい。そうしたら、私も直して、少しでも有紗に好かれるような人になるというのに。
「華恋っ! ボール!」
夏乃子の大きな声、同時にテニスボールが頭に当たる。
「いっ、たくはないけど……」
少し恥ずかしい。夏乃子が走ってきて、私の元に来る。
「集中出来ないなら、帰ったほうが良いわよ。体調悪いって嘘ついてあげるから」
「ううん、今、方向性が決まったから。今日けりをつける」
「……あー、そう。よく分かんないけど、解決するなら良かったわよ」
「今までごめん、腹割って話してくる」
「やっぱり、悩んでた事って今日の事じゃないんだ。まあいいけどさ」
「あ……、ごめん」
「いいって言ってるでしょ、ほら練習しよ! 林が今日習い事あるって帰っちゃって、私の相手いないんだよね」
夏乃子に手を引かれる。
有紗。私達、ちゃんとした姉妹に戻ろう。言いたい事を言い合えるような、姉妹に。
「何が、大丈夫だけど」
休憩していると、夏乃子が心配する様子で私に話しかけてきた。途中参加だから体がなまってるという言い訳は効かなそうだ。
大丈夫ではない、急にキスをされて去っていった有紗が気にならない訳がない。意識がそちらに集中してしまい、部活どころではない。
「告白そんなに大変だったの?」
「え、いや──」
いや、ここで否定したら、他の理由がない。
「あー、まあ、そんなところかな?」
「ふーん、そもそも本当に告白だったんだ」
「まあね」
納得したのか、夏乃子はそれ以上のことは聞いてこなかった。
有紗は、何を思ってあんな事をしたのだろうか。いや、これまでもずっとそれ以上のことはしてきているのだから、今更その程度の事だと結論付けようと思えば、簡単にできる。
しかし、有紗の異様な様子。
学校で強引に空き教室に連れられ、キスをするなんて、考えた事も無かった。今まで脅されて謎の関係を続けていたのに、急に、こんな。
──有紗は、私が恋人を作り、幸せになる事を許していないのか。
有紗は、私の事が嫌い、だという事なのだろうか。今までずっとその事実を認めたくなかった。でも、もう、ここまできたなら、認めるしかない。有紗は、私の事が、嫌いで、不幸せになってほしいんだ。
それなら、全てに納得がいく。
恨まれるような事をした記憶はない、だけど有紗の中では何か嫌な事があったのだろう。だからこそ、今こうなっている。
「さいっっあく……」
謝ろう。今日家に帰ったら。
多分、何も原因が分かっていないのに謝るのは不誠実だろう。でもこのままの状態で、分かりあえないなんて事はいやだ。私は有紗の事が好きだし、何も話し合えない関係になって、距離をとられてしまうのは嫌だ。
それならば、今のこの状況だって容認できてしまう気がした。歪で、おかしい、非難されるような今の状況でさえ、まだマシだと思えてしまう。
唯一の妹なのだから、嫌いなら嫌いだとはっきりと言ってほしい。そうしたら、私も直して、少しでも有紗に好かれるような人になるというのに。
「華恋っ! ボール!」
夏乃子の大きな声、同時にテニスボールが頭に当たる。
「いっ、たくはないけど……」
少し恥ずかしい。夏乃子が走ってきて、私の元に来る。
「集中出来ないなら、帰ったほうが良いわよ。体調悪いって嘘ついてあげるから」
「ううん、今、方向性が決まったから。今日けりをつける」
「……あー、そう。よく分かんないけど、解決するなら良かったわよ」
「今までごめん、腹割って話してくる」
「やっぱり、悩んでた事って今日の事じゃないんだ。まあいいけどさ」
「あ……、ごめん」
「いいって言ってるでしょ、ほら練習しよ! 林が今日習い事あるって帰っちゃって、私の相手いないんだよね」
夏乃子に手を引かれる。
有紗。私達、ちゃんとした姉妹に戻ろう。言いたい事を言い合えるような、姉妹に。
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