亡き祖母へ

ほっきょくぎつね

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はじめに

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 これは今は亡き祖母の思い出を、思いつくままに書いたものです。

 父方の祖母は、厳しくも優しい人でした。彼女は70を超えても自分から学ぶ姿勢を崩さず、常に成長しようとしていました。大好きな茶道についての本が、いつもリビングに置かれており、書道教室にも通っては自分の作品を玄関に飾っていました。私の幼少期は母よりも祖母と共にいる事が多く、掃除・洗濯・料理・裁縫・茶道は祖母から学んだと言っても過言ではありません。躾も厳しく、文字通りお灸を据えられたこともありました。しかし、小学校から帰ってくるといつもお菓子や果物が沢山用意されていて、嬉しそうにいそいそと準備していた姿を覚えています。

そんな祖母は2021年の8月末に間質性肺炎のPPFEという、肺の下部から繊維化していく病気によって、80歳でこの世を去りました。少しずつ左肺が小さくなり、体重も軽くなり、私には祖母がだんだんとこの世から削られて、消されているように思えました。
 呼吸がしにくくなり、筋肉が衰え、嚥下さえも一苦労。立ち上がることさえもままなりません。最後に見た時には、目を開けることも、呼び掛けに反応することも出来ず、夢と現実の境をさ迷っているような状態でした。

 今は、祖母が去ってから約100日が経ちました。百か日の法事をやったあとから、妙に祖母のことを思い出すのです。苦しそうな祖母よりも、私が小学生だった頃の祖母を。
 私は、これからこの元気な頃の記憶が徐々に私の中から霧のようになくなって、祖母が辛そうにしている記憶しか残らなくなるのがとても怖いのです。恐ろしいのです。大事な人の人生が、死に際の姿で埋め尽くされるのをなんとか食い止めようと思いました。この行為が褒められたものかどうなのか、今の私にはわかりませんが、私の中の祖母の姿を元気なままに留めておくためにもここに少しずつ記させていただきます。
 自己満足な記録の束になりますが、少しでも読者の皆様の箸休めでも、誰かを思い出すキッカケにでもなれば嬉しい限りです。
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