終わりの始まり

よっしぃ

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修学旅行2

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それからの三週間はあっという間に過ぎていった。
そして、今日は待ちに待った修学旅行当日。
非常に楽しみである。

朝六時、俺は翼の家に来ていた。
忘れ物がないか確かめるためである。
ちなみに三原一家は全員どこか抜けていて、あまり信用ならない。
そのため、俺が確認しにきてるのである。

「体温計」
「持った」
「筆記用具」
「持った」
「歯ブラシ」
「,,,」
「いますぐ持ってこい」
ずっとこんな調子である。
一割程度のものを忘れているのだ。
持ち物一覧表を見ればすぐわかるはずなのだが。

「やっと終わったーー」
「昨日のうちにやっておけばか」
翼の頭にチョップする。
「いたっ。なにすんだよ」
「俺を早起きさせた罰だ」
翼の家と俺の家は間反対の方向にある。
そのため俺は四時半に起きて学校を越えてはるばるやってきたのだ。
少しの愚痴くらいいいだろう。

「よし、じゃあ行くか」
「アイっす」
「きもい」
「すんません」
そんな感じで雑談を交わしながら俺らは学校へ向かう。
学校についたのは俺らが最後だったらしく、
「早く並びなさい」
と急かされてしまった。




それから四時間後、酔い止めを忘れた教師が吐くというアクシデント以外は特に何もなく、
俺らは京都に降り立っていた。
いったん、宿に荷物を置き、用意してくれていた弁当を持っていざ出発だ。
基本的には自由行動なので、各々の班がどんどんと出発していく中、俺らは玄関の前で唯と平野を待っていた。
「おせーなあいつら」
と待ちくたびれた様子の翼が呟く。
「ごめーん、待った?」
「もう待ちくたびれた,,,わ,,,」
「ん?どうかした?」
「いいや、別に何でもない」
言えない。言えるわけがない。
なぜかは知らんが、いつも見てるはずの唯の私服姿がかわいく見えたなんて。
「ほほーん」
後ろのほうで平野がにやにや笑っているが気づかないふりをしよう。
「と、とりあえず行くか」
「はーい」


そうして出発したのはいいのだが
「すごーい、実物初めて見た!!」
「この抹茶ソフトめっちゃうまい!!」
,,,平野のテンションについていけない。
唯は慣れているのか楽しそうに会話しているが、男子二人はきゃぴきゃぴ度についていけない。
なんで一日中あのテンションでいられるんだ??
結局俺らが今日行ったのは金閣寺だけとなってしまった。
本当はあと何か所か回る予定だったのだが、平野のわがままを聞いて、途中でソフトクリーム屋さんやお土産屋さんに行ったため時間が無くなってしまった。
そのため、明日は平野のテンションに負けずに班を一つにしようとひそかに決意したのであった。



それから飯も食い終わり、自由時間となったのだが、
なにやら男子五、六人が固まってヒソヒソと話している。
,,,多分あれだな。覗きしようとしてるな。
俺らが泊まっている宿は豪華で、飯も旨いし、露天風呂付きというなかなか最高なのだ。
そう、露天風呂である。
思春期の男子高校生が興奮するのも致し方ないというものだろう。
だが、一応生活班の班長なので釘を刺しておくことにした。
「おい、お前らなに話してんだ」
「!!いえこれはなんでもございません!」
「焦りすぎて語尾がおかしくなってるぞ。どうせ覗きしようとしてるんだろ?やめといた方がいいと思うぞ?」
すると、
「「「「「このチャンス絶対逃しません!!」」」」」
「あ、そうですか」
よっぽど覗きたいらしい。
熱意がひしひしと伝わってきた。
ややこしいことになるから是非とも見つからないで済んでほしいものだ。

しかし、その願いも虚しく、わずか30分後、彼らは砕け散った。
さすがに見つかるの早すぎないか??
と、その報告を聞いた俺は思った。
あんなに念入りに準備してたのにバカすぎるだろ。
ちなみに計画したやつらはげんこつを食らわされた挙げ句、4時間正座させられたらしい。
御愁傷様でした。

「明日も基本的には自由行動!ただ、五時半までには宿に戻ってくること!以上解散!あと枕投げすんなよ」
長かった班長会も終わり、あとは寝るだけとなった。
部屋に戻る。
するといきなり枕が顔面にとんでくる。

    ブチッ

今さっき先生に言われたことすら忘れて、枕を持つ。
「お前ら,,,後悔させてやる」
そのあとは正に世紀末のようだった。
もちろんそのあと先生に絞められた。

修学旅行。
それにはあの定番がつきもの。
定番とは肝試しと、夜寝る前のそう、恋バナだ。
誰だって聞きたいだろう?
こういうときじゃないと聞けないしな。
恋バナはもちろん女子も盛り上がるらしいが、男子も意外と話が弾むのだ。

就寝時間になった。
やけに人の少ない大部屋で今、戦いの火蓋が切って落とされた。
誰だってこう思うだろう。
自分は言いたくないけど周りのやつらの恋バナは聞きたいと。
まぁ自分から言いたいってやつも中にはいるのかもしれないが。

「え?お前あいつが好きだったの!?」
「めっちゃ意外!」
「そういうお前はどうなんだよ!」
「俺はいねーし」
「いるだろーが!誰だよ!」
「あいつ」
「どいつだよ」
てな感じでまぁ、話が盛り上がる。
一応早く寝るようにと注意するが、俺も参加してるから人のこと言えないか。
「なあなあ、時人、起きてるだろ?」
「なんだよ」
「お前は好きなやついねーのかよ」
ほんの一瞬唯のことが頭に浮かんだ。
「,,,いないわ」
「嘘つけ間があったぞ」
「逆にお前は?」
「えー、俺?」
「俺」
「いるというかできたんだよね」
「彼女が!?!?」
「ちげーよ!周りのやつらが誤解するだろ!今日好きな人ができたってことだよ」
「ほほーう?誰だ?」
「誰にも言わないか?」
「約束する」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,平野だよ」
「へ?」
「平野だよ」
「うっそ~んマジ?」
「ちょっとキモいぞ。お前そんなキャラだったかよ?」
意外だった。
まさかあのきゃぴきゃぴの雰囲気が好きだったなんて。
「というかどうして好きになったんだよ」
「なんでもいいだろ」
「聞かせろー」
「ほらそろそろ先生が来る時間だなさっさと寝るかー」
「逃げんなよ,,,ってもう寝てるし」
翼はもう既に気持ち良さそうに寝息をたてて寝ていた。
それから、俺は班員に一言声をかけて布団に潜った。
,,,明日は平野と翼をくっつけよう。
そんなことを考えながら俺は深い眠りに落ちていった。









「Zzz Zzz Zzz Zzz ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,」









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