終わりの始まり

優しい嘘

「うんまーい！」
風呂に入ってぼさぼさの髪が直った唯がそう叫ぶ。
唯が髪を揺らすたびにふわっとしたいい香りが鼻をくすぐる。
って何考えてんだ俺は。
「時人は食べないの？」
唯の顔が眼前に迫る。
変なことを考えていたせいか、不覚にもドキッとしてしまう。
「ん？あぁ、俺はいいや」
昨日とは打って変わって元気な唯の姿を見てほっとする。
ただ,,,,,,
「お前、昨日寝てないだろ」
「,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,」
そう、唯の眼の下にくまができていた。
誰もがうらやむほどの健康体である唯がくまを作るなんてはっきり言って異常事態だ。
「何があったんだ」
「,,,言わない」
「なんで,,,,,,？」
「時人が傷つくから」
「っ！」
言いたくないことを無理やり言わせても意味などない。
ならば、
「わかった。ただ言いたくなったらいつでも言っていいからな」
「,,,ありがとう」

変な空気になってしまった。,,,気まずい。

「ほら、着替えるから出てって！」
「あ、おい！」
そして無理やり家から追い出されてしまった。
「何だったんだ」
そう呟いて、俺は家に帰った。
,,,お気に入りのバッグを忘れたまま。
まぁまた今度でいいか。