月夜の庭で

うぃずにき

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月夜の庭で

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青い花の秘密

葉月が青い花に触れると、突然視界が揺らぎ、周囲が変わり始めた。まるで夢の中にいるかのような感覚に包まれた葉月は、気がつくと祖母が生きていた頃の庭に立っていた。そこには、若かりし日の祖母と小さな葉月が並んで座っていた。祖母は静かに花を手入れしながら、葉月に語りかけていた。

「葉月、この花は特別なんだよ。夜にしか咲かないけれど、その光は消えない。私たちが大切にしている記憶や想いを、この花が守ってくれるんだ。」

葉月はその言葉を聞きながら、自分が何を忘れていたのかに気づいた。都会での忙しさに追われる中で、彼女は大切なものを見失っていたのだ。祖母との思い出、自分が何を大切にしていたのか、そのすべてが薄れてしまっていた。

「おばあちゃん、私は何をしていたんだろう。どうしてこんなに大切なことを忘れてしまったのかしら。」

葉月は祖母に問いかけた。祖母は静かに微笑み、葉月の手を握りしめた。「大丈夫よ、葉月。忘れてしまうこともあるけれど、こうして思い出すことができれば、それでいいのよ。大切なのは、今ここにいること。そして、自分が何を大切にしたいかを見つめ直すことよ。」

葉月は祖母の言葉に頷き、涙が溢れるのを感じた。彼女は自分がこの屋敷に戻ってきたのは、ただの偶然ではないと感じた。祖母の想いと、自分自身の心を見つめ直すための時間が必要だったのだ。

新たな始まり

葉月が目を覚ますと、再び現実の庭に戻っていた。あの青い花は今もなお静かに光を放ち、その光は葉月の心を優しく包んでいた。葉月はその光に手を伸ばし、自分自身の中に灯った新たな決意を感じた。

翌朝、葉月は庭に出て、祖母が育てた花々の手入れを始めた。花びらに朝露が光り、葉月は一つひとつの花に触れながら、祖母が語ってくれた言葉を思い出していた。彼女は庭に咲く花々が、祖母の想いを受け継いでいることを感じ、それを大切に守り続けることを心に誓った。

葉月の新しい生活は、静かな庭での毎日から始まった。都会での忙しさから解放され、自分自身と向き合う時間が増えた彼女は、少しずつ心の中の曇りが晴れていくのを感じた。祖母が遺してくれたこの庭は、葉月にとって大切な居場所となり、彼女の心を癒してくれた。

季節が移り変わる中で、葉月は庭に咲く花々と共に過ごす日々を楽しんでいた。月夜の庭で輝く青い花は、今もなお葉月の心に寄り添い、彼女に静かな力を与え続けていた。葉月はこの庭で見つけた自分自身と、祖母の想いを胸に、新たな一歩を踏み出していく決意を固めた。

「おばあちゃん、私はここで幸せに生きていくよ。あなたが遺してくれたこの庭を、大切に守り続けるから。」

葉月はそう呟きながら、夜空に輝く月を見上げた。月の光が庭を照らし、青い花がひときわ強く輝いていた。その光は、葉月のこれからの道を静かに照らし出しているようだった。

葉月は庭に咲く花々を見つめながら、新しい生活への期待と希望に胸を膨らませた。祖母の想いと、自分自身の決意が重なり合い、葉月の心に新たな光が灯った。
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