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第三十五話
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勿論、こんなことは出来るならしたくない。
でも、きっと彼女はレナードを物か何かと勘違いしているのだろう。
所有し、そして手に入れることで自分の価値を上げることだけにしか興味がないように感じる。
着飾ったデイドレスだって、街へ出たマルヴィナよりも派手な恰好だし、髪も丁寧に結い上げられている。
常に誰かよりも上位にいたい。
その様がありありと伝わるのだ。
フィッシャー家に嫁ぐことが最大のステータスを得ることだと思っているのなら、それはきっと、レナードにとっては最大の不幸だろう。
(そんなこと、レナードだって気が付いているだろうけれど)
「結婚の話はレナードにしてください。彼と真っ直ぐに向き合い、その気持ちを伝えることをなさってから、私とお話し合いを。では。レナードが待っていますので」
「品も身分もないあなたを、なぜレナードが選んだか分からないわっ!」
ヒステリックに叫ぶ彼女に、マルヴィナは努めて冷静になろうとした。
レナードの部屋が近い場所で言い合っても、彼女の思うツボだろう。
何より、マルヴィナの心が嫌に落ち着いていたのだ。
「私は、自分の生まれや育ちは誤魔化すことは出来ないことは分かっています。それを一生笑われることも。でも、レナードはそれすら受け入れてくれているのが、嬉しいのです」
「受け入れてる筈なんてないっ。諦めよっ!」
「そう思うのでしたら、レナードとちゃんと話を。では」
マルヴィナは一礼して去った。
それ以上話しても無駄なことはすぐに分かるし、言い合うことでマルヴィナの悪口を吹聴することも見えている。
結婚した後に色々と言いまわるつもりかもしれない。
とにかく、メイドや執事が懸念していたことは正解だったが、それでもマルヴィナはレナードに会いたかった。
ドアをノックするのに、一瞬戸惑う。
けれどここまで来て躊躇していられないと、ノックをした。
「マルヴィナです。中に入れてください」
「マルヴィナ?」
くぐもった声が中から聞こえてくると、扉が開いた。
驚いた顔をしたレナードが目を丸くして見つめいるが、すぐに抱きしめてくれる。
(会いたかった)
その温もりに触れただけで、マルヴィナは満たされてしまいそうになる。
しかし、ふっと視線を感じて後ろを振り向けばキャシーが視線を彷徨わせていた。
「ごめんなさいっ! すぐに部屋に入りますっ」
「そうしてください。ここではひと目がありますから。何かあれば呼んでください」
キャシーは下がると、マルヴィナは抱きしめられながらレナードの部屋に入った。
もつれるようにベッドに転がると、レナードがマルヴィナの顔を覗き込んでくる。
「買い物はつまらなかった?」
「いえ。あっ! そうだ、これ」
ガラスの匙を握っていたのを思い出すとレナードに見せる。
割れてしまわなくて良かったと安堵していると、匙をレナードがしげしげと見つめてため息を吐いた。
「これは、どこで?」
「街のガラス細工屋です。綺麗な調度品が沢山ありましたよ」
「そうか、これは使えそうだな。パーティーのティースプーンをそこのガラス細工店で作らせよう」
「でも、ガラスでは何かあったら」
「大丈夫さ。そんな乱暴に扱うものなんていない」
マルヴィナはくすりと笑みを零すと、匙はベッドサイドのテーブルに置かれた。
自分の買い物が役に立ったと思うと嬉しいし、結婚式でこの綺麗なスプーンが並ぶと思うとなお嬉しい。
ガラス細工のティースプーンに目を付けるなど、レナードらしくマルヴィナは嬉しくなって胸に顔を埋めた。
「どうかした?」
「いえ、今日は、少し甘えたいのです」
「それは構わないよ。私も、ちょっと疲れているから」
そのままレナードの顔が近づいてきて、マルヴィナの唇に触れそうになった時、マルヴィナはハッとした。
肝心な事を聞き忘れている。
「レナード。あの、私、誤解していました」
「何を?」
キスを邪魔されて、レナードは少し不機嫌な声を出す。
それはマルヴィナだって分かっているのだが、どうしても話しておきたいし、レナードからきちんと聞きたいのだ。
噂についての真相を。
マルヴィナは体を起こして、ベッドに座るとレナードも起き上がりそのまま隣に座る。
(きちんと言えるかしら)
不安になりながらも、マルヴィナは自分が思うままに告げようとレナードの方を向いた。
「噂のことですが、キャシーから少し聞きました。でも、レナードの口から真実が聞きたいの」
目を丸くしてマルヴィナを見つめているが、そのうちくすっとレナードは笑った。
おかしいことなんかないと、マルヴィナは口を尖らせるとレナードはマルヴィナの頬を撫でた。
「マルヴィナは本当に、真っ直ぐで素直だね。どうして、そんな風に育ったのかな?」
「さあ。村で育ったせいでしょうか? アストリー子爵の元にいたら、性格がひねくれていたかもしれません」
「そうかもね。本当にそうかもしれない。アガサの判断は本当に正しかったんだね」
マルヴィナはレナードを見つめながら、村で育ったことを気にもしていないことに改めて気持ちの広さを感じた。
レナードだったら、廊下で出会った令嬢の方が身分的には合っているのだろう。
マルヴィナは本題に戻ずべく、レナードの目を見つめ、手を握った。
少し驚いた顔をされたが、マルヴィナはレナードを想うとそうせずにはいられなかった。
「レナード。ここに集められた令嬢や娘たち、皆どうしてレナードと結ばれることはなかったの? 令嬢は身分も相応だし、街娘は美人揃いなのでしょう?」
「そうだね。でも、だからこそダメな時もあったんだ」
「なぜ? 訊いてもいい?」
マルヴィナはぎゅっと手を握り、瞳を見つめた。
するとレナードは悲し気にマルヴィナを見つめ返してくる。
その瞳にマルヴィナの心が切なくなり、真剣に見つめ返すしかなかった。
「令嬢達は、皆私に内緒で部下や友人と恋仲になっていたんだ。その中には子供を身籠った者もいてね。さすがに相談されて、フィッシャー家で引き取ると約束した。けれど、私を良く思わない部下が、それをネタに様々な所に吹聴を始めたんだ。勿論、令嬢もそのたくらみを知っていて、止めてはくれなかった。自分達には関係ないと思っていたんだろうし、一時の恋路を楽しみたいと思ったのだろう。私から選ばれさえすれば良い、そういう思いの物だけだった」
「街娘や村娘は? どうして?」
「彼女達は、私の家柄だけでなく、金が目当てなんだよ。ここに住んでから豪遊し始めてね。マルヴィナは分からないだろうが、ドレスや装飾品を際限なく買うのは彼女達なんだ。いくらでも金があると思っているし、いざ選ばれなかったとしも、ドレスを持ち帰り売れると踏んだんだろう」
「そんなっ!」
「今も荷造りをしながら、ドレスを押し込むことに必死じゃないかな」
レナードは苦笑しつつ、ため息を吐いた。
つまり、まっとうに付き合っていたのはマルヴィナだけなのだ。
城には沢山の女性が集められていたし、信じられないが、レナードが嘘を付く筈もないとそのことを全て信じて、マルヴィナはレナードの頭を抱いた。
「私は、傍に居ます」
「そうしてくれるかな。私がもしも落ちぶれてしまうことがあっても、マルヴィナが傍に居てくれれば、なんとかなりそうな気がするよ」
「レナードにどんなことがあっても、例え病気で寝たきりになっても、私は傍を離れません」
「私もだよ、マルヴィナ。君に出会えたことは奇跡だと思う。必ず幸せにしてみせる」
そのままゆっくりとレナードに抱き寄せられると、唇を塞がれた。
口腔に舌先が入ると、マルヴィナも真似するように舌先をレナードの口内に入れようと貪るようなキスをしてしまう。
レナードを求めて仕方ない気持ちを抑えきれずに、キスに応じたくて仕方がない。
(レナード、好きっ!)
互いに舌先を絡め合い、突き、蕩けるようなキスをして求め合う。
「んっ……ふっ……あぁ……レナード、レナードぉ」
「どうした? 今日はいつもと随分違うよ」
「だって。私、あなたに……選ばれたことを、今まで悔やんでいたから……」
「それは仕方ないさ。今は受け入れてくれるだろ?」
「はい……心から……んっ……はぁ……」
とめどもなく溢れる満たされるような気持ちに、マルヴィナは涙が自然と零れた。
自分の出自や育ちを全て受け入れ、そして愛してくれるレナードに感謝したい。
逃げてばかりではいけない。
そっとベッドに寝かされると、レナードはマルヴィナの胸元をはだけさせ露わにすると、キスの雨を降らし始める。
それに堪えきれずにマルヴィナは身を捩らせくねらせる。
「逃げないで。もっと見せてよ、マルヴィナの綺麗な姿を」
「でも……こんなっ……ひっあ……」
ピンク色の突起に吸い付かれるようなキスをされると、吐息は淫靡になり、背は仰け反り体中で反応してしまう。
「やっ……あっ……」
「ここは、マルヴィナの好きなとこのひとつだろう?」
「で……も……」
マルヴィナと会話をしていても、レナードは舐めることを止めずに舌先を動かす。
これではすぐに果ててしまうと、マルヴィナは逃げるように身を捩るのだがレナードが逃がすまいと、マルヴィナをひっくり返して四つん這いにさせられる。
後ろから覆いかぶさるようにマルヴィナの突起を弄り始めると、同時にうなじや耳朶にキスが始まる。
甘い痺れに堪えきれず、けれど逃げることも出来ずにマルヴィナは下肢が蜜で溢れていくのを感じて頬を染め上げるばかりだった。
「あっ……レナード……もう、限界よ」
「欲しいのかい?」
「あ……の……」
まだ優しく責められていたいとは言えず、マルヴィナは黙り込んだ。
下肢は蜜で溢れているし、何も言えないままではきっと勘違いされてもおかしくはない。
でも、もっと触れて欲しいいうには、すぐにはいえなかった。
「もっと、……触れてください」
吐息混じりにレナードに求めた。
勿論、顔なんて見れずに背を向けたままだ。
「マルヴィナ、本当に可愛いね。どうして欲しいのかな? 好きな部分でもあるの?」
「そ、そういう意味ではっ! レナードに触れられるだけで、幸せだから」
「でも、それじゃあマルヴィナが幸せかは分からないよ?」
「そう……かもしれないけれど」
本当に、レナードに触れてもらえれば良かったのだ。
どこという指定はない。
だが、レナードを煽ってしまったようでマルヴィナは困惑し頬を染めた。
(胸以外?)
マルヴィナは真剣に考えてみるが、それ以外だとすると蜜で溢れる秘丘しかない。
そこへレナードを誘導するのはとても出来ない。
かといって、体のどこが触れて欲しいかと言われても困るばかりだ。
「じゃあ、まずはドレスを脱ごうか。全て脱がせてあげるから」
そう言って、レナードは手早くマルヴィナのドレスを脱がし始める。
下着すら剝ぎ取られてしまうと、マルヴィナはすぐに裸になって後ろから抱かれる状態に戻っていた。
手際のよさには驚いてしまいそうだが、そんなことよりもレナードとの続きが待っているのだ。
「レナードの好きにして?」
でも、きっと彼女はレナードを物か何かと勘違いしているのだろう。
所有し、そして手に入れることで自分の価値を上げることだけにしか興味がないように感じる。
着飾ったデイドレスだって、街へ出たマルヴィナよりも派手な恰好だし、髪も丁寧に結い上げられている。
常に誰かよりも上位にいたい。
その様がありありと伝わるのだ。
フィッシャー家に嫁ぐことが最大のステータスを得ることだと思っているのなら、それはきっと、レナードにとっては最大の不幸だろう。
(そんなこと、レナードだって気が付いているだろうけれど)
「結婚の話はレナードにしてください。彼と真っ直ぐに向き合い、その気持ちを伝えることをなさってから、私とお話し合いを。では。レナードが待っていますので」
「品も身分もないあなたを、なぜレナードが選んだか分からないわっ!」
ヒステリックに叫ぶ彼女に、マルヴィナは努めて冷静になろうとした。
レナードの部屋が近い場所で言い合っても、彼女の思うツボだろう。
何より、マルヴィナの心が嫌に落ち着いていたのだ。
「私は、自分の生まれや育ちは誤魔化すことは出来ないことは分かっています。それを一生笑われることも。でも、レナードはそれすら受け入れてくれているのが、嬉しいのです」
「受け入れてる筈なんてないっ。諦めよっ!」
「そう思うのでしたら、レナードとちゃんと話を。では」
マルヴィナは一礼して去った。
それ以上話しても無駄なことはすぐに分かるし、言い合うことでマルヴィナの悪口を吹聴することも見えている。
結婚した後に色々と言いまわるつもりかもしれない。
とにかく、メイドや執事が懸念していたことは正解だったが、それでもマルヴィナはレナードに会いたかった。
ドアをノックするのに、一瞬戸惑う。
けれどここまで来て躊躇していられないと、ノックをした。
「マルヴィナです。中に入れてください」
「マルヴィナ?」
くぐもった声が中から聞こえてくると、扉が開いた。
驚いた顔をしたレナードが目を丸くして見つめいるが、すぐに抱きしめてくれる。
(会いたかった)
その温もりに触れただけで、マルヴィナは満たされてしまいそうになる。
しかし、ふっと視線を感じて後ろを振り向けばキャシーが視線を彷徨わせていた。
「ごめんなさいっ! すぐに部屋に入りますっ」
「そうしてください。ここではひと目がありますから。何かあれば呼んでください」
キャシーは下がると、マルヴィナは抱きしめられながらレナードの部屋に入った。
もつれるようにベッドに転がると、レナードがマルヴィナの顔を覗き込んでくる。
「買い物はつまらなかった?」
「いえ。あっ! そうだ、これ」
ガラスの匙を握っていたのを思い出すとレナードに見せる。
割れてしまわなくて良かったと安堵していると、匙をレナードがしげしげと見つめてため息を吐いた。
「これは、どこで?」
「街のガラス細工屋です。綺麗な調度品が沢山ありましたよ」
「そうか、これは使えそうだな。パーティーのティースプーンをそこのガラス細工店で作らせよう」
「でも、ガラスでは何かあったら」
「大丈夫さ。そんな乱暴に扱うものなんていない」
マルヴィナはくすりと笑みを零すと、匙はベッドサイドのテーブルに置かれた。
自分の買い物が役に立ったと思うと嬉しいし、結婚式でこの綺麗なスプーンが並ぶと思うとなお嬉しい。
ガラス細工のティースプーンに目を付けるなど、レナードらしくマルヴィナは嬉しくなって胸に顔を埋めた。
「どうかした?」
「いえ、今日は、少し甘えたいのです」
「それは構わないよ。私も、ちょっと疲れているから」
そのままレナードの顔が近づいてきて、マルヴィナの唇に触れそうになった時、マルヴィナはハッとした。
肝心な事を聞き忘れている。
「レナード。あの、私、誤解していました」
「何を?」
キスを邪魔されて、レナードは少し不機嫌な声を出す。
それはマルヴィナだって分かっているのだが、どうしても話しておきたいし、レナードからきちんと聞きたいのだ。
噂についての真相を。
マルヴィナは体を起こして、ベッドに座るとレナードも起き上がりそのまま隣に座る。
(きちんと言えるかしら)
不安になりながらも、マルヴィナは自分が思うままに告げようとレナードの方を向いた。
「噂のことですが、キャシーから少し聞きました。でも、レナードの口から真実が聞きたいの」
目を丸くしてマルヴィナを見つめているが、そのうちくすっとレナードは笑った。
おかしいことなんかないと、マルヴィナは口を尖らせるとレナードはマルヴィナの頬を撫でた。
「マルヴィナは本当に、真っ直ぐで素直だね。どうして、そんな風に育ったのかな?」
「さあ。村で育ったせいでしょうか? アストリー子爵の元にいたら、性格がひねくれていたかもしれません」
「そうかもね。本当にそうかもしれない。アガサの判断は本当に正しかったんだね」
マルヴィナはレナードを見つめながら、村で育ったことを気にもしていないことに改めて気持ちの広さを感じた。
レナードだったら、廊下で出会った令嬢の方が身分的には合っているのだろう。
マルヴィナは本題に戻ずべく、レナードの目を見つめ、手を握った。
少し驚いた顔をされたが、マルヴィナはレナードを想うとそうせずにはいられなかった。
「レナード。ここに集められた令嬢や娘たち、皆どうしてレナードと結ばれることはなかったの? 令嬢は身分も相応だし、街娘は美人揃いなのでしょう?」
「そうだね。でも、だからこそダメな時もあったんだ」
「なぜ? 訊いてもいい?」
マルヴィナはぎゅっと手を握り、瞳を見つめた。
するとレナードは悲し気にマルヴィナを見つめ返してくる。
その瞳にマルヴィナの心が切なくなり、真剣に見つめ返すしかなかった。
「令嬢達は、皆私に内緒で部下や友人と恋仲になっていたんだ。その中には子供を身籠った者もいてね。さすがに相談されて、フィッシャー家で引き取ると約束した。けれど、私を良く思わない部下が、それをネタに様々な所に吹聴を始めたんだ。勿論、令嬢もそのたくらみを知っていて、止めてはくれなかった。自分達には関係ないと思っていたんだろうし、一時の恋路を楽しみたいと思ったのだろう。私から選ばれさえすれば良い、そういう思いの物だけだった」
「街娘や村娘は? どうして?」
「彼女達は、私の家柄だけでなく、金が目当てなんだよ。ここに住んでから豪遊し始めてね。マルヴィナは分からないだろうが、ドレスや装飾品を際限なく買うのは彼女達なんだ。いくらでも金があると思っているし、いざ選ばれなかったとしも、ドレスを持ち帰り売れると踏んだんだろう」
「そんなっ!」
「今も荷造りをしながら、ドレスを押し込むことに必死じゃないかな」
レナードは苦笑しつつ、ため息を吐いた。
つまり、まっとうに付き合っていたのはマルヴィナだけなのだ。
城には沢山の女性が集められていたし、信じられないが、レナードが嘘を付く筈もないとそのことを全て信じて、マルヴィナはレナードの頭を抱いた。
「私は、傍に居ます」
「そうしてくれるかな。私がもしも落ちぶれてしまうことがあっても、マルヴィナが傍に居てくれれば、なんとかなりそうな気がするよ」
「レナードにどんなことがあっても、例え病気で寝たきりになっても、私は傍を離れません」
「私もだよ、マルヴィナ。君に出会えたことは奇跡だと思う。必ず幸せにしてみせる」
そのままゆっくりとレナードに抱き寄せられると、唇を塞がれた。
口腔に舌先が入ると、マルヴィナも真似するように舌先をレナードの口内に入れようと貪るようなキスをしてしまう。
レナードを求めて仕方ない気持ちを抑えきれずに、キスに応じたくて仕方がない。
(レナード、好きっ!)
互いに舌先を絡め合い、突き、蕩けるようなキスをして求め合う。
「んっ……ふっ……あぁ……レナード、レナードぉ」
「どうした? 今日はいつもと随分違うよ」
「だって。私、あなたに……選ばれたことを、今まで悔やんでいたから……」
「それは仕方ないさ。今は受け入れてくれるだろ?」
「はい……心から……んっ……はぁ……」
とめどもなく溢れる満たされるような気持ちに、マルヴィナは涙が自然と零れた。
自分の出自や育ちを全て受け入れ、そして愛してくれるレナードに感謝したい。
逃げてばかりではいけない。
そっとベッドに寝かされると、レナードはマルヴィナの胸元をはだけさせ露わにすると、キスの雨を降らし始める。
それに堪えきれずにマルヴィナは身を捩らせくねらせる。
「逃げないで。もっと見せてよ、マルヴィナの綺麗な姿を」
「でも……こんなっ……ひっあ……」
ピンク色の突起に吸い付かれるようなキスをされると、吐息は淫靡になり、背は仰け反り体中で反応してしまう。
「やっ……あっ……」
「ここは、マルヴィナの好きなとこのひとつだろう?」
「で……も……」
マルヴィナと会話をしていても、レナードは舐めることを止めずに舌先を動かす。
これではすぐに果ててしまうと、マルヴィナは逃げるように身を捩るのだがレナードが逃がすまいと、マルヴィナをひっくり返して四つん這いにさせられる。
後ろから覆いかぶさるようにマルヴィナの突起を弄り始めると、同時にうなじや耳朶にキスが始まる。
甘い痺れに堪えきれず、けれど逃げることも出来ずにマルヴィナは下肢が蜜で溢れていくのを感じて頬を染め上げるばかりだった。
「あっ……レナード……もう、限界よ」
「欲しいのかい?」
「あ……の……」
まだ優しく責められていたいとは言えず、マルヴィナは黙り込んだ。
下肢は蜜で溢れているし、何も言えないままではきっと勘違いされてもおかしくはない。
でも、もっと触れて欲しいいうには、すぐにはいえなかった。
「もっと、……触れてください」
吐息混じりにレナードに求めた。
勿論、顔なんて見れずに背を向けたままだ。
「マルヴィナ、本当に可愛いね。どうして欲しいのかな? 好きな部分でもあるの?」
「そ、そういう意味ではっ! レナードに触れられるだけで、幸せだから」
「でも、それじゃあマルヴィナが幸せかは分からないよ?」
「そう……かもしれないけれど」
本当に、レナードに触れてもらえれば良かったのだ。
どこという指定はない。
だが、レナードを煽ってしまったようでマルヴィナは困惑し頬を染めた。
(胸以外?)
マルヴィナは真剣に考えてみるが、それ以外だとすると蜜で溢れる秘丘しかない。
そこへレナードを誘導するのはとても出来ない。
かといって、体のどこが触れて欲しいかと言われても困るばかりだ。
「じゃあ、まずはドレスを脱ごうか。全て脱がせてあげるから」
そう言って、レナードは手早くマルヴィナのドレスを脱がし始める。
下着すら剝ぎ取られてしまうと、マルヴィナはすぐに裸になって後ろから抱かれる状態に戻っていた。
手際のよさには驚いてしまいそうだが、そんなことよりもレナードとの続きが待っているのだ。
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