バラの招待状

如月一花

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第三十三話

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 レナードがそれを慰めたこともあるくらいだ。
 毅然とした振る舞いを見せてはくれるが、どの女性も、既に体の関係を持ち、レナードから解放されるのを心待ちにしているのは明らかなのだ。
「私よりも好きな人がいる、そのことは分かっているよ。でも、部下や友人と恋仲にならなくともいいだろう? それとも、彼らの方が魅力的だったかな」
 レナードは自虐的に言うが、子爵令嬢達は黙り込んだままだ。 
 きっと、バレることなく関係を続けられると思っていたのだろう。
 もしかしたら、只の遊びで済まそうと思っていた者もいたかもしれない。
 どちらにしても、真っ直ぐレナードを好いてくれた者はいなかったのだ。
「家柄良くても、性格に問題ありではだめですわねっ!」
「なんですって!」
 今にも取っ組み合いの喧嘩になりそうな雰囲気の中、勝ち誇るように言ったのはさっきの街娘だ。
 この日を待っていたのは確かだろう。
 家柄では勝てず、レナードに着々に近づいて、関係を作ることに必死なのは伝わってきた。
 でも、それだけなのだ。
 愛情、恋心、そういう気持ちを彼女達からは感じたことはない。
 レナードは最初こそ思われて嬉しかったが、次第に彼女達の近づく理由が分かってしまうと、心がシンと冷えるように冷めていったのだ。
「君たちも、彼女たちと大して変わらないよね。私との結婚は金の為だと、街で吹聴しているらしいじゃないか」
「あっ……ちが……」
「違うとは言わせないよ。フィッシャー家の行きつけのレストランで、知人が聞いたんだ。君が豪遊する様を見て、私に結婚相手を選ぶことを慎重になるようにと助言をくれた」
「それは、その……」
 娘達の悪いところは、フィッシャー家の金を際限なく使うことだった。
 村の為、街の為に尽力するフィッシャー家の人々の目を盗むように、調度品を盗んだり、メイドや執事に金をせびったり、買い物に出掛ける時は全てフィッシャー家での支払いにするように命じていたそうだ。
 そして、彼女達は口々に、『金の為に結婚する』『こんな結婚本位じゃない』と言って回っていたらしい。
 レナードがそれを友人から耳にして調べさせると、あらゆるところで聞いて、何も言えなくなってしまった。
 このティールームに集められた女性達全員が、レナードには興味がないのだ。
 レナードに興味があるフリをしながら、恋をしたり、金を食い潰していたりしていた。
 そして、もっと悪い話題がある。
 令嬢達に向き直り、じっと見据えた。
 彼女達は身震いしてから肩を抱くと、顔を青ざめさせた。
「私の悪い噂を流しているようだね。自分達の失恋や、恋の失敗とを重ねて。体を弄んでいるという噂さえ流れいるらしいが……」
 レナードは眉間に皺を寄せた。
 部下との恋仲になった女性が流した噂ならば、少々心配な噂でもある。
 でも、彼女達は何も語ろうとはせずに黙り込むだけだ。
「そんなデマを流して何を考えているのか分からないが、フィッシャー家に嫁ぐ身には相応しいとは思えないと、よく理解して欲しい」
 令嬢達は黙って頷いていた。
 家柄も申し分なく、美人だらけだ。
きっと仲には部下にそそのかされて体を許したものもいたのだろう。 
 逆恨みしてレナードの悪い噂を流すことを決めた者もいたのかもしれないが、マルヴィナとの結婚とは別問題だ。
 ティールームが静まり、レナードは緊張で喉がカラカラになる。
 次に話すことは彼女達を家に送り返すことを説明しなくてはいけないからだ。
 一番反抗するのは、きっと街娘や村娘だろう。
(金を湯水の如く使っていたからな)
 レナードはまた女性達を見渡すと、皆表情をこわばらせた。
 今にも倒れるんじゃないかというくらい、顔が青ざめている者もいる。
「突然で申し分ないが、明日から自宅に帰って欲しい。これからはマルヴィナとの結婚の準備を始めたい」
「勝手です!」
 声を上げたのは子爵令嬢だった。
 驚いてレナードは目を見開く。
 街娘や村娘はざわついているものの、仕方がないという表情を見せていた。
「どうして? 君には帰る所だってあるのだし、立派な屋敷もある」
「私は……。ここに来て初めて好きな人が出来たのです。この屋敷に居る限り、その方とお会いできるのです。レナード様には申し分ないとは思いますが、そんな急に帰れと言われても」
「そうですわっ!」
 令嬢達の反論が一気に始まると、レナードは恋とは恐ろしいとしばらく黙って見守った。
 恋仲になっている、その話は聞いていたし、純潔を捧げてしまっただろうとも聞いていた。
 でも、元々初心な乙女だっただけに、初めての相手に想いも強いらしい。
「連絡先を交換すればいいだろう? それに、関係を絶たなければいい」
「でも……フィッシャー家の薔薇の招待状で集められたと家中の者が知っているのです。別の者と恋仲になって帰ってくるなど、恥晒しですわ」
「そうかもしれないが……」
 レナードは呆れて何も言えなかった。
 と同時に、マルヴィナが当初レナードを拒絶したことを思い出し、ここに集まっている令嬢も同じだったのかもしれないと気付かされた。
 断ることは出来ないと、半ば強引に連れてきたのは失敗だったと反省しつつ、レナードは子爵令嬢達に頭を下げる。
「私も悪かった。恋をして分かったよ。止められない時もあると。お父上達には手紙を書こう。そのまま付き合って、結婚を許してもらえることを私も願う」
 少し甘すぎかとも思ったが、マルヴィナのことを思い出すと彼女達を責められなかった。
 そして、隠れて逢瀬を重ねるという行為がどれほどふたりの距離を縮めたかも、想像出来る。
 レナードだって、マルヴィナを抱いた時に離したくないと何度も思ったのだから。
「だから、どうかマルヴィナとの結婚を祝福して欲しい。私もまた、マルヴィナが好きなのだ」
 必死に願い令嬢や娘達の目を見て言う。
 皆後ろめたい気持ちがあるせいか、きちんと目を合わせてくれないが次第にレナードの方を見て頷いてくれた。
 街娘のリーダーが「私はすぐに出て行く」というと、娘達は口々に出て行くと言い出す。
 令嬢達も、準備が整い次第に出て行くことをレナードに伝えてきた。
 レナードは心から感謝し、そして薔薇の招待状によって縛り付けてしまったことを悔いた。
(もっと私が欲を出したせいだ)
 けれど、そのせいでマルヴィナとも出会い、結婚までに至る。
 そう思うと何が正しくて間違いが分からなくなりそうだった。
「村に帰るには多少なりとも金が必要だろう?」
 せめてもの償いにと村娘にそういうと、きっと睨みつけられる。
 なぜだろうと首を傾げると、娘は腕組みをした。
「私はレナードに選ばれたことを誇りに思っているし、お金で解決して欲しいなんて思ってない。村だって、それなりに居心地が良いのよ?」
「そうかもしれないが、贅沢は出来ないだろう?」
「元々の生活に戻るだけよ。お金なんて村に持って帰ったら、たかられちゃうわ」
 ふんと鼻を鳴らしながら、娘は部屋から出て行った。
 怒らせたと思ったが、娘達の顔はどこか誇らしげで、誰もが満足していた。
 金を使い切る亡者とばかり思ったのだが、案外サバサバしているとレナードは見習ってしまう程だ。
 令嬢達も部屋を去ると、今度はマルヴィナの事が気になってくる。
 今頃はキャシーと街を散策している頃だろう。
(何をしているだろうか)
 レナードはキャシーに、ここで話すことを簡単に話して欲しいとお願いしていた。
 後は自分から話すつもりだし、簡単で良いと命令していたが、キャシーがどこまで喋ってしまうかは、不安でもある。
(マルヴィナ。早く会いたい)
 
 キャシーと共に街に出てきたが、マルヴィナが落ち着いて買い物をすることは出来なかった。
 楽しそうに買い物を誘うキャシーだったが、宝石を見ても、ドレスを見ても、どうでもいいと思えてしまうのだ。
「マルヴィナ様、こちらをご覧ください! 凄い装飾品ですわ」
 窓越しに見えたガラス細工に、マルヴィナも思わず目を奪われる。
 グラスなのだが、細かい細工が施されているのだ。
 値段を思わず見て、目を見開いた。
「キャシー、これってこんなにするものなのね。やっぱり」
「お値段を見てはいけません。気に入ったら買えば良いのです」
「でも……そういうわけにはいかないわ」
 ガラス越しに見ていたせいか、店主がぬっとドアを開けて出て来た。
 そしてふたりの姿を見るなり、クックッと笑い出す。
 それに気がついたキャシーが「無礼な」と一言言い放つが、店主は笑うのを止めなかった。
「だってよお。どこぞの令嬢が、ウィンドウショッピングなんて、滅多に見れるものじゃないからな。どこのご令嬢なんですい?」
 キャシーはきっと睨みつつも、言葉を詰まらせていた。
 マルヴィナがアストリー子爵の令嬢であると告げるわけにもいかないし、レナードとの婚約を公けにするにはまだ早い。
 もしかしたら、破断になるかもしれないと、マルヴィナは今でも思ってしまうのに、自分が婚約者だと言えないのだ。
「ある家のご令嬢です。お忍びで街に来ています」
「へえ。とても綺麗なお嬢様ですな?」
「そりゃもう。で、あのグラスはいくらです?」
「あれかい? あれは売り物じゃないよ。見せのシンボルさ」
「そうなんですか……。マルヴィナ様、売れないそうです」
 キャシーがすまなそうに言うが、マルヴィナは全く困ることなく、むしろ店のシンボルを買うような事があってはいけないと、キャシーを諭した。
 けれどキャシーはそれでは恰好がつかないと、店主に何か綺麗なガラス細工はないかと訊く始末だ。
「あるよ。沢山あるから、見て行ってくれ」
 店主が先に入るとキャシーは嬉しそうに着いて行ってしまう。
 マルヴィナは余計な買い物しなくてもいいのに、とキャシーの後を追って入った。
「ここのガラス細工は皆村の職人が作ったものでね。一握りの選ばれた職人しか作れないのさ」
「そうなんですか!」
 キャシーは嬉しそうに言うが、マルヴィナは落ち着かずに目を泳がせる。
(何か安いものでも買って、早く帰りたい。高い調度品なんて売りつけられたら大変だわ)
 そう考えているうちに、店主は店の奥から大きな皿を持ってきた。
 装飾もさることながら、皿の大きさにも圧倒される。
「これなんてどうだい? 城に飾るのにちょうどいいだろう?」
「そうですね」
「キャシー!」
 耐え切れずにマルヴィナはキャシーの腕を引いた。
 何か適当なものはないか店内を探すが、値札がどれにもついていない。
(どうするつもりなのっ⁉)
「これはこれで素敵よ。でも、言ったでしょう? 素性を明かせないから、もっと小さな、手で持って帰れる物じゃないと買えないのよ」
「ふーん、そうかい。じゃあ、このガラスのスプーンだ」
 言われれ見せられたのは、小さな匙だった。
 装飾はされているが、明らかに今までみた物よりかは劣るのは分かる。
 でも、マルヴィナはガラスで出来た匙など珍しく、じっと見つめてしまった。
「では、それにしましょう。マルヴィナ様もお気に入りですから」
「でも……」
「気になるのでしょう? お部屋に飾ってください」
 キャシーは代金をすぐに支払い、店主は包装しキャシーに渡してくれる。
(こんな急に買ったりしていいのかしら)
 買い物の仕方がいまいち要領を得ず、マルヴィナは店を後にした。
 すると段々レナードの事が気になってきてしまう。
 まだ街に来たばかりだが、もう帰りたくなりキャシーの腕を思わず引いた。
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