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第五話
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「大丈夫なんて安易には言えないけれど、マルヴィナのこともきっとこの武勇伝の中のひとつなのね」
「やめて、お母さん。私、その人を好きになるつもりもないし、城ではきっと惨めよ」
「惨めな思いにならないように、この三日で特訓するんでしょう?」
「そうだけど。不安だわ」
「なんとかなるわ。頑張りましょう」
アガサが言うと、またぎゅっと抱きしめられる。
頭を撫でられると、アガサがぽつりと呟いた。
「私も大変だったけれど、なんとかなったもの。マルヴィナだって平気よ」
「お母さん?」
顔を覗き込もうとしたが、アガサの目には涙しかなかった。
別れの涙だろうと思ったし、マルヴィナの不運を泣いてくれたのだと思ったが、アガサの目に浮かぶ涙は何かそれとは違うような気がして仕方がなかった。
翌日から、マルヴィナはロイツに理由を言って畑仕事を休んだ。
フィッシャー家に呼びつけられた経緯を話すとロイツは心配そうに顔を歪ませると、選別とばかりに備蓄の野菜をくれた。
マルヴィナが断ると、アガサの為だと言って押し切り家まで運び始めてしまった。
(ロイツだって大変なのに)
マルヴィナが申し訳ない気持ちでいっぱいでいると、ロイツは戻ってきてマルヴィナに刺繡入りのハンカチを見せてくれた。
「アガサが、マルヴィナがいなくなった分、もっとこれを売ろうってさ。気丈な人だな」
「うん」
マルヴィナが目に涙を滲ませていると、ロイツは慌てふためいてマルヴィナの背を摩る。
ごつくて大きな手が何度も背を撫でるうちに、マルヴィナもなんとか涙を流さずに済んだ。
「この服ももっと綺麗なものにしなくちゃいけないって。今日から徹夜で作るらしいわ」
「そうか」
「今からナイフとフォークの使い方の練習があるから。ごめんなさい。もう帰るわ」
「分かった。アガサのことは任せとけ」
ロイツは胸を叩くとマルヴィナの背も励ますように叩く。
「ありがとう!」
マルヴィナは別れを惜しむようにロイツに手を振ると家に帰った。
そして待っていたアガサと共に剥き出しの木のテーブルに向かい合わせに座る。
ナイフもフォークも揃っているわけではなく、フォークがあるだけだからナイフはあると仮定してやることになった。
「良い? マルヴィナ。まず、ナイフとフォークはこうやって上から掴むように握るのよ」
「こう?」
マルヴィナはそのまま握るように持つとアガサが首を振った。
「違うわ。それは少し違うの。人差し指を出してそっと添えて。それから、音と立ててはダメよ」
「う、うん」
「うんじゃなくて、はい。言葉も丁寧に。神父様と話す時のように、きちんとした言葉で」
「わかりました」
「そうよ。頑張りましょう」
「は、はい」
マルヴィナは慣れない事ばかりで、頭がクラクラしてきてすぐに疲れた。
しかも、姿勢が悪くなるとすぐにアガサからの注意が入る。
やればやるほど注意され、マルヴィナはため息を何度も吐いて自信がなくなりそうになった時だった。
アガサがにこりと微笑んで言ったのだ。
「大丈夫よ。地方の子爵の子でマナーもろくに学ばなかった末っ子だと言うから。あまりに酷いから村に追いやられたと言えば、マナーがなっていなくてもお咎めないでしょう。まあ、あの初老の男性にどこまで信じてもらえるか分からないけれど」
「でも、そんな嘘信じてもらえるかしら」
「そうね……」
アガサが考え込むように空中を見つめ、マルヴィナを見つめてくる。
不安になって、マルヴィナはアガサをじっと見つめてしまうがアガサはしばらく無言だった。
「大丈夫よ。マルヴィナは綺麗だもの」
「そんな理由、通じないわっ」
「あのレナード様の目に留まったのよ? そこは自信を持ちなさい」
「そうかもしれないけど。でも――」
マルヴィナは俯いて涙を堪えた。
この練習は自分を守る為のものであり、本来のマルヴィナの姿ではない。
いくらアガサから子爵の令嬢だと言われても、育った環境は違うのだ。
外見が美しいから、そこだけが良いと言われても嬉しいとも思わないし、それこそ城にはそんな女性が集められているのだろう。
レナードが名門伯爵である以上、村の娘や街の娘もいるのだろうが、分不相応に変わりはない。
マルヴィナは寝る以外はほぼマナーと礼儀、口の利き方などアガサから教わり、三日後の白髪の初老の男性が来る頃には疲れ果てていた。
その朝、マルヴィナは毎日習ったことで頭をいっぱいにして起き、すでに疲れてしまったような状態だった。
昨夜も遅くまでアガサから教えてもらったが、身についているのかは自信がもてないままだった。
アガサは大丈夫だと言うが、マルヴィナにはとてもそうは思えず結局アガサに言われて眠ることにしたのだ。
そして起きれば、出立の為のドレスがサイドテーブルに用意されていた。
広げて見れば、普段は着ないようなピンク色のドレスにレースやフリル、薔薇のモチーフがあしらわれた綺麗な物だ。
アガサが既存のドレスに手を加えてくれたのだろう。
子爵令嬢が着るような物かは分からないが、少なくともマルヴィナが普段着る泥まみれの服よりは、ずっと素晴らしいものだった。
アガサは机に突っ伏して眠っていて、その作業が徹夜だったことが伺える。
揺すり起こす事が忍びなく、マルヴィナはそっとアガサにブランケットを掛けた。
キッチンにあるパンを取りに行こうと足を向けた時、家の前で騒がしい音がしてマルヴィナは足を止めて戸に向かって歩いた。
何だろうと息を潜めていると、馬の息遣いや人の声が聞こえてくる。
(誰⁉)
マルヴィナが身を竦めていると、戸がノックされた。
一体朝早くから誰だろうと扉をうっすらと開けると、三日前に来た初老の男性が立っていた。マルヴィナは会釈だけすると、初老の男性はにこりと微笑んだ。
「三日経ちましたので、お迎えにあがりました。もう少し扉を開けてくれませんか」
「すみません」
マルヴィナはそっと扉を開けると、初老の男性の隣に長身の男性が立っていた。
髪は黒く軽く撫で付けられ、緑色の瞳は透き通っていて吸い込まれるようだった。
高い鼻梁や薄い唇も、その男性の独特の男性の色香のようなものを感じさせ、マルヴィナは思わず見てしまう。
「マルヴィナ様、こちらはレナード様です」
「は、はじめまして。申し遅れました、マルヴィナ・アストリーと申します」
スカートをそっと持ち上げ膝を折って頭を下げた。
アガサから教わった挨拶の仕方が早速生きてくるとは思わなかったが、様になっているかは疑問だった。
そっと顔を上げると、レナードはうっすらと笑みを称えた表情でマルヴィナを見つめている。
「やめて、お母さん。私、その人を好きになるつもりもないし、城ではきっと惨めよ」
「惨めな思いにならないように、この三日で特訓するんでしょう?」
「そうだけど。不安だわ」
「なんとかなるわ。頑張りましょう」
アガサが言うと、またぎゅっと抱きしめられる。
頭を撫でられると、アガサがぽつりと呟いた。
「私も大変だったけれど、なんとかなったもの。マルヴィナだって平気よ」
「お母さん?」
顔を覗き込もうとしたが、アガサの目には涙しかなかった。
別れの涙だろうと思ったし、マルヴィナの不運を泣いてくれたのだと思ったが、アガサの目に浮かぶ涙は何かそれとは違うような気がして仕方がなかった。
翌日から、マルヴィナはロイツに理由を言って畑仕事を休んだ。
フィッシャー家に呼びつけられた経緯を話すとロイツは心配そうに顔を歪ませると、選別とばかりに備蓄の野菜をくれた。
マルヴィナが断ると、アガサの為だと言って押し切り家まで運び始めてしまった。
(ロイツだって大変なのに)
マルヴィナが申し訳ない気持ちでいっぱいでいると、ロイツは戻ってきてマルヴィナに刺繡入りのハンカチを見せてくれた。
「アガサが、マルヴィナがいなくなった分、もっとこれを売ろうってさ。気丈な人だな」
「うん」
マルヴィナが目に涙を滲ませていると、ロイツは慌てふためいてマルヴィナの背を摩る。
ごつくて大きな手が何度も背を撫でるうちに、マルヴィナもなんとか涙を流さずに済んだ。
「この服ももっと綺麗なものにしなくちゃいけないって。今日から徹夜で作るらしいわ」
「そうか」
「今からナイフとフォークの使い方の練習があるから。ごめんなさい。もう帰るわ」
「分かった。アガサのことは任せとけ」
ロイツは胸を叩くとマルヴィナの背も励ますように叩く。
「ありがとう!」
マルヴィナは別れを惜しむようにロイツに手を振ると家に帰った。
そして待っていたアガサと共に剥き出しの木のテーブルに向かい合わせに座る。
ナイフもフォークも揃っているわけではなく、フォークがあるだけだからナイフはあると仮定してやることになった。
「良い? マルヴィナ。まず、ナイフとフォークはこうやって上から掴むように握るのよ」
「こう?」
マルヴィナはそのまま握るように持つとアガサが首を振った。
「違うわ。それは少し違うの。人差し指を出してそっと添えて。それから、音と立ててはダメよ」
「う、うん」
「うんじゃなくて、はい。言葉も丁寧に。神父様と話す時のように、きちんとした言葉で」
「わかりました」
「そうよ。頑張りましょう」
「は、はい」
マルヴィナは慣れない事ばかりで、頭がクラクラしてきてすぐに疲れた。
しかも、姿勢が悪くなるとすぐにアガサからの注意が入る。
やればやるほど注意され、マルヴィナはため息を何度も吐いて自信がなくなりそうになった時だった。
アガサがにこりと微笑んで言ったのだ。
「大丈夫よ。地方の子爵の子でマナーもろくに学ばなかった末っ子だと言うから。あまりに酷いから村に追いやられたと言えば、マナーがなっていなくてもお咎めないでしょう。まあ、あの初老の男性にどこまで信じてもらえるか分からないけれど」
「でも、そんな嘘信じてもらえるかしら」
「そうね……」
アガサが考え込むように空中を見つめ、マルヴィナを見つめてくる。
不安になって、マルヴィナはアガサをじっと見つめてしまうがアガサはしばらく無言だった。
「大丈夫よ。マルヴィナは綺麗だもの」
「そんな理由、通じないわっ」
「あのレナード様の目に留まったのよ? そこは自信を持ちなさい」
「そうかもしれないけど。でも――」
マルヴィナは俯いて涙を堪えた。
この練習は自分を守る為のものであり、本来のマルヴィナの姿ではない。
いくらアガサから子爵の令嬢だと言われても、育った環境は違うのだ。
外見が美しいから、そこだけが良いと言われても嬉しいとも思わないし、それこそ城にはそんな女性が集められているのだろう。
レナードが名門伯爵である以上、村の娘や街の娘もいるのだろうが、分不相応に変わりはない。
マルヴィナは寝る以外はほぼマナーと礼儀、口の利き方などアガサから教わり、三日後の白髪の初老の男性が来る頃には疲れ果てていた。
その朝、マルヴィナは毎日習ったことで頭をいっぱいにして起き、すでに疲れてしまったような状態だった。
昨夜も遅くまでアガサから教えてもらったが、身についているのかは自信がもてないままだった。
アガサは大丈夫だと言うが、マルヴィナにはとてもそうは思えず結局アガサに言われて眠ることにしたのだ。
そして起きれば、出立の為のドレスがサイドテーブルに用意されていた。
広げて見れば、普段は着ないようなピンク色のドレスにレースやフリル、薔薇のモチーフがあしらわれた綺麗な物だ。
アガサが既存のドレスに手を加えてくれたのだろう。
子爵令嬢が着るような物かは分からないが、少なくともマルヴィナが普段着る泥まみれの服よりは、ずっと素晴らしいものだった。
アガサは机に突っ伏して眠っていて、その作業が徹夜だったことが伺える。
揺すり起こす事が忍びなく、マルヴィナはそっとアガサにブランケットを掛けた。
キッチンにあるパンを取りに行こうと足を向けた時、家の前で騒がしい音がしてマルヴィナは足を止めて戸に向かって歩いた。
何だろうと息を潜めていると、馬の息遣いや人の声が聞こえてくる。
(誰⁉)
マルヴィナが身を竦めていると、戸がノックされた。
一体朝早くから誰だろうと扉をうっすらと開けると、三日前に来た初老の男性が立っていた。マルヴィナは会釈だけすると、初老の男性はにこりと微笑んだ。
「三日経ちましたので、お迎えにあがりました。もう少し扉を開けてくれませんか」
「すみません」
マルヴィナはそっと扉を開けると、初老の男性の隣に長身の男性が立っていた。
髪は黒く軽く撫で付けられ、緑色の瞳は透き通っていて吸い込まれるようだった。
高い鼻梁や薄い唇も、その男性の独特の男性の色香のようなものを感じさせ、マルヴィナは思わず見てしまう。
「マルヴィナ様、こちらはレナード様です」
「は、はじめまして。申し遅れました、マルヴィナ・アストリーと申します」
スカートをそっと持ち上げ膝を折って頭を下げた。
アガサから教わった挨拶の仕方が早速生きてくるとは思わなかったが、様になっているかは疑問だった。
そっと顔を上げると、レナードはうっすらと笑みを称えた表情でマルヴィナを見つめている。
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