12 / 38
第三話
6
しおりを挟む
ふと目覚めたのは陽も沈んだ夕方も過ぎた頃だった。
時計を見ると夕方の6時を過ぎていて、芳樹が帰って来る時間まで間もない。
残業・・・してきてよ。
私は暗い気持ちで思った。
1人の時間が欲しかったし、芳樹の為に何かするのも嫌だった。
独身時代のように、ご飯は勝手に出てきて、家中の掃除もしない、お金の事も考えない、そんな生活を送りたい。
そもそも、芳樹の為に何かするという事に嫌気がさしそうだった。
それでも時間は進み、芳樹は帰ってくる。
何を作ろうかと必死に頭を働かせるも、思考は停止。
私は起き上がってぼうっとしていた。
真っ暗な部屋だと気がついたのは、閉めたカーテンから光が差し込んでいない事に気がついたからだった。
私はそっとソファから降り、電気を付けた。
今日はご飯作りたくない。
呑み会がある、そのメールが欲しい。
私はそれとなくメールで送ろうかと、ケータイを握る。
でも、文章が思いつかない。
『食べてきて』『面倒くさい』そんな直接的な表現しか思い浮かばない。
私はソファにもたれ、テレビを付けた。面白くないニュースがやっている。
つまらない事を延々と流し、私に不安を植え付けてくるだけの、役に立たない物。
でもそれでも寂しくて独り、見る。
テレビは不倫のもつれからの殺人事件について、根掘り葉堀り、近隣住民から職場に聞き込みをしていた。
やめて、お願い、これ以上は。
私はチャンネルを変え、子供番組を見る事にした。
明るく、何も悩みもない、楽しい世界が広がった。
私はなぜか、ホッとした。
歌を歌い、人形が喋る、そんな世界に。
心が軽くなる。
そうだ、早く日曜になって芳樹さまに会いたいな。
次回はクライマックスだったっけ。
またかっこいい事してくれるんだろうな。
もういっそ、悪者全部やっつけちゃえばいいのに。
私は一人でタレントの芳樹さまを思い、心を落ち着けようとする。
でも、それを阻止する何かが心を覆っていた。
芳樹には女がいるのよね。
芳樹には・・・。
外の暗闇のように思い出す、その悩み。
突然訪れる、大きな不安。
どうしたらいいか、分からない。
私を突如悩ませたその女。
白木亜美。
どんな女?
新人って言ってたし、どうせ私よりずっと若いんだろうな。
でも、一体どうやって芳樹に?
女性に興味ないと思ってたのに。
私に飽きたのかしら。
ああ、ダメだ。
どうしても噂の事を考えてしまう。
私は自分で自分を抱きしめた。
独りが怖くなった。
テレビだけが雑音のように耳に入る。
芳樹にメール・・・。
呑んできて、と。
でも、本当は独りも辛い。
メールをしたら私の負けだと思う。
ずっと握りしめたケータイをどうすることも出来ず、ソファでぼーっとするしか出来ない。
辛い。もどかしい。
どうしたらいいか、分からない。
考えはまとまらず、私はまた眠ろうかとソファに横たわった。久しぶりに1人で遠くまで出たせいか、体も疲れていた。もちろん、精神的にも。
芳樹が帰ってきてしまったら、適当に外食でいいと考え、瞼を閉じた。
するとケータイが鳴った。
芳樹?
急いでケータイを手にして確認すると、メールだった。
読んでみると、信じられない内容が書いてあった。
『今日、後輩を家に連れていく。メシはいらないが、何かつまみくらいはあると嬉しい。今日は疲れていると思うから、ピザでも取って、ゆっくり待っててくれ』
どういうこと!?
私は画面を見て固まった。
ありえない行動と、後輩を連れて来るという事に。
今まで誰も呼んでないじゃない。
上司だって外で済ませてる。
なんなの、その子!
そもそも、私を労わりなさいよ!
私は芳樹の事が分からなくなった。
今日の私の態度を見て、いつもならすぐにご機嫌取りをしてくれる。私の為に必死になってくれる。
でも今日はそれを無視して、会社の後輩を連れてくるですって?
頭に血が上るのが分かる。
血圧ってきっとこういうときに上昇するんだと思う。
言いようのない怒りがこみ上げ、芳樹の行動に違和感を抱いた。
そもそも後輩って突然なに?!
断りなさいよ。それが後輩としての礼儀じゃない?!。
最近の若い人は分からないわけ?
私は分からない事だらけで、何も手につかない。
しかし、もう芳樹とその後輩は来るのだ。駄々をこねても、無意味だ。
仕方なく出前のピザを頼む事にする。
お金はあるのだ。
でも、芳樹がなんだかおかしいのだ。
ちゃんと私を見ていない。
私は確か財布に5千円札があったはずだと思い、バッグをひっかきまわす。
財布を見たら、千円札が4枚しかなかった。
それがまた、うっとおしい。
ピザ、頼めるけどギリギリ。
確か5000円あったと思ったのに。
今日は多分使ってないし、いつ無くなったのかしら?
面倒・・・。
私はため息を吐いた。
危うく芳樹の為につまみを作らなくてはいけない所だったのだ。
簡便してほしい。
私は芳樹になんと返事をしようか悩んだ。出来るだけ困らせたい。私はこんなに悩んでいるのだから。
時計を見ると夕方の6時を過ぎていて、芳樹が帰って来る時間まで間もない。
残業・・・してきてよ。
私は暗い気持ちで思った。
1人の時間が欲しかったし、芳樹の為に何かするのも嫌だった。
独身時代のように、ご飯は勝手に出てきて、家中の掃除もしない、お金の事も考えない、そんな生活を送りたい。
そもそも、芳樹の為に何かするという事に嫌気がさしそうだった。
それでも時間は進み、芳樹は帰ってくる。
何を作ろうかと必死に頭を働かせるも、思考は停止。
私は起き上がってぼうっとしていた。
真っ暗な部屋だと気がついたのは、閉めたカーテンから光が差し込んでいない事に気がついたからだった。
私はそっとソファから降り、電気を付けた。
今日はご飯作りたくない。
呑み会がある、そのメールが欲しい。
私はそれとなくメールで送ろうかと、ケータイを握る。
でも、文章が思いつかない。
『食べてきて』『面倒くさい』そんな直接的な表現しか思い浮かばない。
私はソファにもたれ、テレビを付けた。面白くないニュースがやっている。
つまらない事を延々と流し、私に不安を植え付けてくるだけの、役に立たない物。
でもそれでも寂しくて独り、見る。
テレビは不倫のもつれからの殺人事件について、根掘り葉堀り、近隣住民から職場に聞き込みをしていた。
やめて、お願い、これ以上は。
私はチャンネルを変え、子供番組を見る事にした。
明るく、何も悩みもない、楽しい世界が広がった。
私はなぜか、ホッとした。
歌を歌い、人形が喋る、そんな世界に。
心が軽くなる。
そうだ、早く日曜になって芳樹さまに会いたいな。
次回はクライマックスだったっけ。
またかっこいい事してくれるんだろうな。
もういっそ、悪者全部やっつけちゃえばいいのに。
私は一人でタレントの芳樹さまを思い、心を落ち着けようとする。
でも、それを阻止する何かが心を覆っていた。
芳樹には女がいるのよね。
芳樹には・・・。
外の暗闇のように思い出す、その悩み。
突然訪れる、大きな不安。
どうしたらいいか、分からない。
私を突如悩ませたその女。
白木亜美。
どんな女?
新人って言ってたし、どうせ私よりずっと若いんだろうな。
でも、一体どうやって芳樹に?
女性に興味ないと思ってたのに。
私に飽きたのかしら。
ああ、ダメだ。
どうしても噂の事を考えてしまう。
私は自分で自分を抱きしめた。
独りが怖くなった。
テレビだけが雑音のように耳に入る。
芳樹にメール・・・。
呑んできて、と。
でも、本当は独りも辛い。
メールをしたら私の負けだと思う。
ずっと握りしめたケータイをどうすることも出来ず、ソファでぼーっとするしか出来ない。
辛い。もどかしい。
どうしたらいいか、分からない。
考えはまとまらず、私はまた眠ろうかとソファに横たわった。久しぶりに1人で遠くまで出たせいか、体も疲れていた。もちろん、精神的にも。
芳樹が帰ってきてしまったら、適当に外食でいいと考え、瞼を閉じた。
するとケータイが鳴った。
芳樹?
急いでケータイを手にして確認すると、メールだった。
読んでみると、信じられない内容が書いてあった。
『今日、後輩を家に連れていく。メシはいらないが、何かつまみくらいはあると嬉しい。今日は疲れていると思うから、ピザでも取って、ゆっくり待っててくれ』
どういうこと!?
私は画面を見て固まった。
ありえない行動と、後輩を連れて来るという事に。
今まで誰も呼んでないじゃない。
上司だって外で済ませてる。
なんなの、その子!
そもそも、私を労わりなさいよ!
私は芳樹の事が分からなくなった。
今日の私の態度を見て、いつもならすぐにご機嫌取りをしてくれる。私の為に必死になってくれる。
でも今日はそれを無視して、会社の後輩を連れてくるですって?
頭に血が上るのが分かる。
血圧ってきっとこういうときに上昇するんだと思う。
言いようのない怒りがこみ上げ、芳樹の行動に違和感を抱いた。
そもそも後輩って突然なに?!
断りなさいよ。それが後輩としての礼儀じゃない?!。
最近の若い人は分からないわけ?
私は分からない事だらけで、何も手につかない。
しかし、もう芳樹とその後輩は来るのだ。駄々をこねても、無意味だ。
仕方なく出前のピザを頼む事にする。
お金はあるのだ。
でも、芳樹がなんだかおかしいのだ。
ちゃんと私を見ていない。
私は確か財布に5千円札があったはずだと思い、バッグをひっかきまわす。
財布を見たら、千円札が4枚しかなかった。
それがまた、うっとおしい。
ピザ、頼めるけどギリギリ。
確か5000円あったと思ったのに。
今日は多分使ってないし、いつ無くなったのかしら?
面倒・・・。
私はため息を吐いた。
危うく芳樹の為につまみを作らなくてはいけない所だったのだ。
簡便してほしい。
私は芳樹になんと返事をしようか悩んだ。出来るだけ困らせたい。私はこんなに悩んでいるのだから。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる