6 / 38
第二話 芳樹
2
しおりを挟む
すると返事がすぐに来た。
『辛いです』
やっぱりな。
困ったもんだな。
どうして女どもはこういう子を狙うかな。
いや、男もからかって噂するからな。
仕事が出来ない奴に限って、噂を流して優位に立ちたがる。
困った俺は、ケータイを眺めた。
後輩ではあるものの、デスクが近いわけじゃない。
おまけに俺は役職がついてるわけでもない。平社員だ。
ただ、先輩でお目付け役なだけだ。
担当になった後輩は他にもいるし、白木を特別扱いすれば、白木の同期が妬む。
困った。
助けたくとも、噂をしてる奴ら全員に一喝出来るほど、俺は偉くないし勇気もない。
そもそも、そんな奴がいたら凄い。
ただ、せっかく育てた後輩を潰されるのは嫌だった。一人前になった時に酒を呑みたいし、単純に、俺の教えた後輩が増えて欲しい。
考えているとまたケータイが鳴った。
『先輩、私弱い人間です。何も言い返せません』
俺はこれにはすぐに返事をしようと思い、ケータイを取った。
『弱くないし、言い返す必要もない』
送信を押そうとした時、俺はそろそろヤバイと思い、さっさと押した。
美恵が2階から降りてくる予感がする。
俺はさもテレビばかり見ているという仕草をし始めた。
ケータイはパジャマのポケットの中だ。
降りて来ないので、2階に上がろうかと考えてみる。
俺はいつも通りのグータラ亭主のように、腹を掻いた。
美恵ベッドで寝転がりながら、テレビを見ていた。
さっき1人で色々と妄想したせいか、生身を見たら抱きつきたくなった。
「美恵」と呼んでも、返事すらない。
いきなり抱きしめてみようかと、ニヤニヤしながら近寄る。
俺はもう一度美恵の名を呼ぶ。
「美恵、そんなにテレビ面白いか?」
ニヤニヤしながら、美恵の胸を目指す。足音を立てないように。
「別に」
素っ気ない返事が相変わらずだが、聞こえているらしい。この素っ気なさと、セックスの時の違いが堪らないんだよなあと、ニヤニヤが止まらない。
そして、隣に寝ころぶと美恵を後ろから抱き締め、そっと胸も揉む。
「ちょっと、やめて」
「いいだろ、これくらいは」
「うざいのよ」
今、何て言った、美恵。
俺はフラフラと美恵から離れた。
確か、『うざい』と。
俺をそういう煙たいものの様な扱いにするのか。
もう煙たがるのか?
まだ子供もいないんだぞ?
早くないか?
俺に飽きたか?
え?
俺は混乱して、手から力が抜けて、体を離した。美恵は気にもせず、テレビを見ている。
音がうるさく寝室に響き渡っていた。
俺はフラフラと寝室を出た。美恵が振り返る事はなかった。
『辛いです』
やっぱりな。
困ったもんだな。
どうして女どもはこういう子を狙うかな。
いや、男もからかって噂するからな。
仕事が出来ない奴に限って、噂を流して優位に立ちたがる。
困った俺は、ケータイを眺めた。
後輩ではあるものの、デスクが近いわけじゃない。
おまけに俺は役職がついてるわけでもない。平社員だ。
ただ、先輩でお目付け役なだけだ。
担当になった後輩は他にもいるし、白木を特別扱いすれば、白木の同期が妬む。
困った。
助けたくとも、噂をしてる奴ら全員に一喝出来るほど、俺は偉くないし勇気もない。
そもそも、そんな奴がいたら凄い。
ただ、せっかく育てた後輩を潰されるのは嫌だった。一人前になった時に酒を呑みたいし、単純に、俺の教えた後輩が増えて欲しい。
考えているとまたケータイが鳴った。
『先輩、私弱い人間です。何も言い返せません』
俺はこれにはすぐに返事をしようと思い、ケータイを取った。
『弱くないし、言い返す必要もない』
送信を押そうとした時、俺はそろそろヤバイと思い、さっさと押した。
美恵が2階から降りてくる予感がする。
俺はさもテレビばかり見ているという仕草をし始めた。
ケータイはパジャマのポケットの中だ。
降りて来ないので、2階に上がろうかと考えてみる。
俺はいつも通りのグータラ亭主のように、腹を掻いた。
美恵ベッドで寝転がりながら、テレビを見ていた。
さっき1人で色々と妄想したせいか、生身を見たら抱きつきたくなった。
「美恵」と呼んでも、返事すらない。
いきなり抱きしめてみようかと、ニヤニヤしながら近寄る。
俺はもう一度美恵の名を呼ぶ。
「美恵、そんなにテレビ面白いか?」
ニヤニヤしながら、美恵の胸を目指す。足音を立てないように。
「別に」
素っ気ない返事が相変わらずだが、聞こえているらしい。この素っ気なさと、セックスの時の違いが堪らないんだよなあと、ニヤニヤが止まらない。
そして、隣に寝ころぶと美恵を後ろから抱き締め、そっと胸も揉む。
「ちょっと、やめて」
「いいだろ、これくらいは」
「うざいのよ」
今、何て言った、美恵。
俺はフラフラと美恵から離れた。
確か、『うざい』と。
俺をそういう煙たいものの様な扱いにするのか。
もう煙たがるのか?
まだ子供もいないんだぞ?
早くないか?
俺に飽きたか?
え?
俺は混乱して、手から力が抜けて、体を離した。美恵は気にもせず、テレビを見ている。
音がうるさく寝室に響き渡っていた。
俺はフラフラと寝室を出た。美恵が振り返る事はなかった。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる