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第一章
第7話 【冒険者生活の始まり・1】
しおりを挟む誕生日会から一月が経ち、俺は注文していた装備に身を包み。
ナティアと共に家を出て、冒険者登録の為に〝冒険者ギルド〟へと向かっている。
あの日、父さん達に冒険者を許可された俺は、元冒険者である父さんから冒険者について色々と教えてもらった。
「この装備。昨日、到着したばかりだったから動きに支障が出ないか心配だったけど、凄く着心地が良いね」
「それはそうですよ。ライアン様と長年の付き合いのあるドワーフ族の鍛冶師の方に、特別に作った貰った装備ですから」
「……って事は、高いって事か?」
「勿論です。装備一式で軽く金貨数十枚はしていると思いますよ」
ナティアの言葉に俺は、初心者冒険者に与えるような代物じゃないだろと装備を見ながら考えた。
「ユリウス様、装備に金掛け過ぎだと思ってませんか?」
「流石、長年俺のメイドしてるだけあるね。正直、初心者冒険者の俺には勿体ないと思っちゃうんだよね」
「……ユリウス様、ご自分の身分をお忘れですか?」
「それを言われると、何も言えないじゃん……」
その後、冒険者ギルドに到着した俺は馬車を降りて中へと入った。
建物の中には、既に沢山の冒険者や依頼を出しに来た人達であふれかえっていた。
「こんな朝早くからここまで人が多いなんて、冒険者って自由な仕事じゃないの?」
「自由ですが、良い仕事を得るには早い者勝ちで決まりますから、そのために朝早くから争奪戦が行われているらしいですよ」
「へ~……まあ、今の俺は登録に来た新米だからまだ先の話だね」
「そうですね。あっ、ちょうどあそこの列が進んだみたいですから、あの受付の列に並びましょうか」
それから受付の列に並び、自分達の番が来るのを待った。
人が多く、依頼の受理関係で20分程待ちようやく俺の番が来た。
順番が来た俺は受付の人に「登録に来ました」と伝え、登録用紙を受け取った。
記入項目をささっと書き、受付の人から説明を受けた俺はギルドの地下へと移動する事になった。
「上から報告は来てる。君が登録に来た子かな?」
地下にある試験場に行くと、一人の男性が待っていた。
受付で受けた説明に試験監督が待っていると言われていたので、この人が俺の試験を見る人だろうと察した。
「はじめまして、ユリウスです。今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく。俺は今回の試験官を務めるケニーだ。それと先に言っておくけど、俺は取り繕った喋りが出来ない。もしそこが気になるなら他の奴に任せるが大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。冒険者の方がそういった方というのは教わってきてますので」
冒険者でもランクが高くなれば、貴族から依頼を受けたりするからマナーを学ぶ人もいる。
だがそういった事が苦手な人が多いと言う事は、父さんから教えて貰っていたので気にはしない。
「そうか、じゃあ試験の説明をするぞ。試験は簡単で、俺がユリウスの戦闘力を見るから、合格ラインなら冒険者として認める。もし、合格ライン以下だったら認めない。簡単だろ?」
「そうですね。ちなみに戦闘力というのは、剣術だけですか? それとも魔法を使ったりしても大丈夫ですか?」
「勿論。魔法も使って大丈夫だぞ、ただし建物が壊れない程度に使うようにな」
そう説明を受けた後、俺は試験用の武器を手に取り何回か振って感触を確かめた。
そして準備運動を軽くして、開始地点へと移動した。
「もう準備はいいのか?」
「大丈夫です。待たせてしまい申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ。試験に来る冒険者はお前より長い奴も沢山いるからな。それじゃ、始めるとするか」
試合開始の合図と共に俺は、先手を取る為に動いた。
俺はレベル1の中では能力値も高く、剣術のスキルレベルも初心者にしてたはある方だ。
しかし、相手の試験官は俺よりも格上。
そんな相手に今の俺は出し惜しむ事無く、全力で挑んだ。
「ぐふッ!」
「えっ?」
【身体強化】を使って速度と力を上げ、剣を試験官に向かって振り下ろした。
試験官のケニーは、俺の剣が直撃するとそのまま壁際まで吹っ飛ばされた。
「だ、大丈夫ですか!?」
俺は慌てて駆け寄ると、何とか意識は失っておらず「な、なんだ今の力は……」と両手と俺の顔を交互に見ていた。
その後、俺の能力は文句ない所が直ぐに上のランクに上がるだろうとお墨付きをもらって受付へと戻ってきた。
「もう終わったのですか?」
「はい。その一撃で終わっちゃいました」
「あっ、それは残念でしたね……」
受付の人は俺の言葉を聞いて、俺が負けたと勘違いしたようだ。
俺はそんな受付の人に対して、ケニーから貰ってきて合格証明書を見せた。
「う、受かったんですか? という事は一撃で決めたのはユリウス様なんですか?」
「まあね。後、ちょっと声が大きいかな?」
受付の子は俺との話中に段々と声が大きくなっており、今の会話は他の冒険者にも聞こえていた。
その為、そこら中から視線を感じてこの場から早く移動したい気持ちになって来た。
「申し訳ございません!」
受付の子は謝罪をすると、俺のギルドカードの作成をする間、個室で待ってられるように手配をしてくれた。
折角手配してもらったので、俺とナティアは個室へと移動した。
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