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第一章
第6話 【誕生日会・4】
しおりを挟む「こんな所に居たんですね。ユリウス様、食事の準備が出来ておりますよ」
「あっ、そっかまだご飯食べてなかった。ごめん」
ナティアは俺を飯の時間だから探しに来たみたいで、その言葉を聞いた俺は急いで食堂へと向かった。
食堂には既に他の家族は揃っていて、俺が一番最後だった。
それから、家族と一緒に食事をしながら他愛もない会話をしつつ、いつも通りの時間を過ごした。
「ユリウス。さっき会った時に比べて、表情が明るくなってるみたいだけど、婚約者の件は受け入れきれたのかしら?」
「うん。色々と考えたけど、結局はいつか決める事だしね。それに貴族として生まれて、不自由ない暮らしが出来てるんだからそれ相応の決まりは受け入れようって」
「……偶にユリウスの年齢が本当か分からなくなるわね。まあ、理解してくれて嬉しいわ」
「そうだな。いい婚約者を見つけられるように私達も頑張らないとな」
その後、朝食を食べ終え解散となった。
解散後、俺は父さんと母さんに話があると言い三人だけ部屋に残り、父さん達に残ってもらった理由を伝えた。
「血筋なのかしらね……」
「ハハハ、ユリウスは私には性格が似てないと思っていたが根っこ部分は似ていたみたいだな」
俺が両親に頼んだ事、それは冒険者になりたいという願い。
この世界で強くなる為には、今みたいに家でぬくぬくと生活していたら一生強くなんてなれない。
「だが5歳になったばかりの子供が冒険者になっても、せいぜい薬草採取か低ランクの魔物討伐の依頼しか受けられないと思うぞ?」
「そこは大丈夫と思うわよ。ユリウスの魔法の腕は、騎士団の魔法使いレベルよ」
「なっ、そんなに魔法の腕がいいのか!?」
母さんからの言葉に父さんは、目を大きく開いて驚いた表情をした。
以前、一人庭で魔法の訓練をしていた際、いつの間にか近くに来ていた母さんに俺は魔法が使える事がばれてしまった。
ただ俺がまだ5歳にも満たない子供という事で、母さんと俺の二人だけの秘密という事にしていた。
「母さん、流石に騎士団レベルじゃないと思うよ。実戦とか一切した事が無いし」
「そうかしら? 全属性の魔法をあそこまで使えるのは、相当だと思うけど」
「ぜ、全属性? ユリウスは全ての属性魔法が使えるのか!?」
本日二度目の驚きに父さんは、立ち上がったがすぐに座り直した。
「全属性……という事は、魔法使いとしては上は目指せないのか」
「ライアン。さっきも言ったてじょ、ユリウスの魔法の腕は相当高いって」
「しかし、全属性の持ち主は魔法使いとして大成はしないと言う事はユフィも知ってるだろ?」
困惑した様子の父さんに対し、母さんは「一度、見せた方が早いわね」と言って俺達は食堂から訓練場へと移動してきた。
この時間帯は兵士達も休み時間で訓練場には、そこまで人が居なかった。
「じゃあ、ユリウス。魔法使ってみて」
「はい。それじゃ、まずは簡単な魔法から」
母さんの言葉に返事をした俺は、最初に〝無属性〟の魔法を放った。
そして、続けて〝火、水、風、土〟と順番に魔法を使い。
更に〝雷、氷、光、闇〟と出し、最後に属性魔法の中でも難しい〝時空〟の魔法も披露した。
「〝転移〟が可能だと言う事は、既にスキルレベルは3にはなっているのか?」
「うん。最近、ようやく上がって使えるようにはなったけど、長距離の移動にはまだ試した事はないよ」
「まさか、ユリウスがここまで魔法が使えるとはな……」
「でもさっき母さんが〝騎士団レベル〟とは俺は思ってないんだけど、父さんから見てどう?」
そう俺が聞くと、父さんは「十分、騎士団レベルだよ」といった。
「えっ、でもスキルレベルはまだ3で初心者レベルだよ?」
「スキルレベルは確かに大事だが、ユリウスの場合は全ての属性をそこまで使えると言う事になるんだ。一般的に保有属性魔法の平均数は2だと言われている」
「そんな中、ユリウスは全ての属性を既にそのレベルまで使えてるんだから、十分騎士団レベルに匹敵すると言ってるのよ」
その後、あまり納得が出来てない俺だったが父さんは十分、俺の力を認めてくれたから結果的には良かった。
ただ冒険者として活動する前に、俺は父さん達と約束事を決めた。
「まっ、勉強頑張れば許してくれるなら良かったか」
冒険者の許可の対価として、勉強面を疎かにしないという約束をした。
正直、この世界の数学やらは地球の方がレベルが高く、今更覚え直す事は無かった。
歴史に関しても、幼い頃から本を読んできてるから問題もない。
「ダンスと礼儀作法くらいだな心配なのは……」
四大公爵家の生まれである俺は、他の貴族の作法よりもより厳しくみられる。
これまでは前世の記憶があるおかげで、ある程度は乗り越えれて来た。
しかし、これからは大人との対話が増えて行き、いつかボロが出てしまう可能性もある。
その為、今の内にそこら辺もちゃんとしておいた方がいいだろう。
「取り合えず、目的だった冒険者にはなれそうだから、しっかりと計画を立てて動くか」
それから俺は外に出て、妖精達に冒険者になる事を報告して計画について話し合いを行った。
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