初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる！

第十章

第448話 【竜・３】

　地面に激突した竜は、直ぐに起き上がりすくみあがってしまうほどの咆哮を上げた。
　その咆哮に冒険者の人達、義父さん達、魔物達すらも足が止まってしまった。

「ッ！」

　そして竜は、止まっていたシャファルに対して鋭い爪で攻撃をしてきた。
　シャファルはその攻撃をギリギリで避け、追撃を放って来た竜に尻尾で叩き空へと飛んだ。
　竜は尻尾で叩き落とされた事に更に怒り、奇声をあげながら追って来た。

「ラルク、振り落とされるんじゃないぞ！」

「ああ、分かってる！」

　先程より更飛行スピードを上げたシャファルと、今度は追いかける側に回った竜の追いかけっこが始まった。
　その追いかけっこ中、俺は的確に竜に魔法を当て続け、徐々に傷を負わせて行った。

「グルァァ！」

「うぉッ！」

　竜は怒りによって、我を忘れブレスを連発しながら追って来た。
　距離を詰められない様にシャファルは魔力を感知しながら、そのブレスを避け続けた。

「ラルク、そろそろ奴は一旦冷静になる頃だろう。そうなる前に、一気にたたみかけるぞ」

「了解ッ」

　シャファルの言葉に、俺は返事をして俺とシャファルは竜の攻撃を躱し、同時に竜に対して攻撃を放った。
　シャファルは渾身のブレスを腹に当て、俺は伸ばした神剣で竜の翼を切った。
　翼と腹部のダメージで竜は飛ぶことが困難になったのか、地面へと落ちて行った。
　俺とシャファルは竜が落ちて行った地点へと向かい、もう飛ぶことは無理だろうと思い、俺もシャファルの背中から降りた。

「イデルさん！　フィアさん！　強力な魔法を放ってください！」

　竜が落ちた地点の近くに、イデルさんとフィアさんが居たので俺はそう声を掛けた。
　勿論俺自身も魔法を放つ準備をして、一斉に竜に対して魔法を放った。
　更にそこに魔力を溜め、先程までのブレスより更に強力な攻撃をシャファルも放った。

「どうじゃ、やったか？」

「魔力は……」

　シャファルの言葉に、俺は直ぐに魔力の感知を行った。
　すると、竜が居た場所から竜の気配は消えていた。

「消えてる。か――」

　そう言葉に出そうとした瞬間、俺は嫌な予感がして真上を見た。
　すると、そこには前方に居た筈の竜が居た。
　更に竜は、俺達が与えた傷は既に癒えていた。

「皆、逃げて！」

　最大の攻撃を放った直後、更に突然の逃走の指示に皆反応が遅れた。
　シャファルでさえ、俺の言葉を聞いて真上を確認しており、ブレス同士の相殺は無理だと一瞬で判断した。
　今この場で動けるのは、竜の存在にいち早く気づいた俺だけだった。

「やらせるかぁぁぁ！」

　シャファル、イデルさん、フィアさん、義父さん、冒険者の人達。
　ここで攻撃を防ぎきれなかったら、皆の命が散ってしまう。
　俺は皆を魔力の波動で吹き飛ばし、竜の攻撃に対して自分持つ攻撃魔法全てを合わせて魔法を放った。
　しかし、その俺の攻撃は竜のブレスを相殺する事は出来ず、一瞬で魔法を壊されてしまった。

「あ――」

　防ぎきる事が出来なかったブレスは、俺へと直撃した。
　直撃する瞬間、俺はこの世界に来てからの記憶が流れた。
　ああ、これが走馬灯っていうやつか。

　そう俺は思いながら、目の前が真っ暗となった。