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第十章
第443話 【出発・1】
しおりを挟むあの後、義父さんに負けたフィアさんはガチ凹み状態となった。
現世に戻ってきた後もその状態のフィアさんに、迎えに来たララさんが困惑していた。
「もしかして、負けたの?」
「ウッ!」
ララさんの言葉にフィアさんは更に凹み、涙を浮かべて転移魔法で逃げ去った。
そんなフィアさんの行動に、ララさんは溜息を吐いた。
「マスター、グルドさんと戦うの楽しみにしてたのですが、まさか負けるとは思ってなかったんでしょうね」
「確かに始める前は、凄い元気良かったです」
ララさんの言葉にそう返すと「今晩は付き合ってあげようかしら」と言った。
「それにしてもグルドさん、フィアちゃんを負かすって全盛期以上の力じゃないですか?」
「そうですね。あの頃は、マスターに勝つ事なんて出来なかったでしょうね。まあ、勝てたのは訓練に付き合ってくれたラルクのおかげですよ」
そう義父さんは、横に立っていた俺の頭に手を置いてワシャワシャと撫でまわした。
「フフッ、ほんとラルク君とグルドさんは昔から仲が良いですね」
「色々とありましたからね」
ララさんの言葉に、義父さんは照れたようにそう返した。
それからララさんは、また会いましょうと言って、転移魔法で消えた。
ララさんが居なくなった後、俺と義父さんは家に戻り、汗を流す為に風呂に入る事にした。
「義父さん、良かったねフィアさんに勝てて」
「ああ、昔は手も足も出なかったけど、ラルクとの訓練のおかげで勝てて本当に嬉しいよ」
ニコニコと嬉しそうな顔をして、義父さんはそう言った。
義父さんの試合、俺も見ていて本当に凄いと感じた。
魔法対物理だと、大分魔法の方が有利なのに義父さんは、ほぼダメージも無く勝利を掴んだ。
俺も見習う点が多かったな、特に魔法を切り裂いたあの技。
「ねぇ、義父さんあの魔法を切った技って何なの?」
「あれか? アレは、刀身に自分の魔力を流して相手の放った魔法の魔力の流れを乱す技だ。魔法剣士が、魔法を剣に流すの見た事無いか? あんな感じで、魔力だけを流すんだ」
「……ああ、そう言う事か! 凄いね義父さん、そんな事も出来たんだ!」
頭の中で言葉の意味を理解するのに数秒掛かった俺は、遅れてそう反応した。
そんな俺に対して、義父さんは「便利だし、ラルクにも教えてやるよ」とコツを教わった。
俺は風呂から上がった後、早速その剣技を試す為に庭に出た。
「って、風呂に入った意味が無いな。まあ、いいや思い立ったが吉日っていうし」
そう言って俺は、先程聞いた通りに魔力を剣に流してみた。
魔力量、魔力の流れを見ながら俺は少しずつ魔力を流して行った。
「アスラ、お願い」
「了解、行くよラルク君」
訓練相手には、魔法が得意なアスラを選んだ。
アスラは俺の指示通り、水球の魔法を作り上げて俺に向けて放った。
俺はその魔法に自ら突っ込んで、魔力を流した剣でその魔法を切った。
「ッ!」
一瞬、ビビってしまったが上手く魔法を切り裂く事が出来た。
なので今の感覚を忘れない様に、もう一度同じ魔法をアスラに頼んだ。
しかし、二度目は切り裂けなくてビショビショになってしまった。
その後、何度か魔法に当たりながらも訓練を続けて行き、日が暮れる頃には新たなスキル〖魔法切り〗がスキルレベル2となっていた。
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