179 / 206
第十章
第432話 【違和感・3】
しおりを挟む手紙を読み終えた後、俺と義父さんは重たい雰囲気となった。
手紙に書かれていた事、それは〝聖国について話がある〟と書かれていた。
「聖国についてって、もうあの国は変わったんじゃないの?」
「俺もアルスから偶に聞いては居たが、順調に国が変わって行ってると聞いている。だから、聖国について話があるという事は〝今の〟聖国についてじゃなくて〝前の〟聖国について話があるんだと思うぞ……」
「……」
俺と義父さんは手紙を見つめながら、話し合いの日付まで誰にも言わない様にした。
それから数日後、俺と義父さんは王都の城へとやって来た。
「ここに来るのも久しぶりだな」
「まあ、その来るのが普通の用事で来たかったけどね……」
「だよな……」
俺と義父さんは、そんな重たい雰囲気のままアルスさんが待つ部屋へと辿り着いた。
アルスさんは俺達が入ってくると、作業を中断して俺達を出迎えてくれた。
「よく来てくれたね。グルド、ラルク君」
「〝聖国について〟何て書かれてたら、来るしかないだろ……」
「まあ、そうだよね。でも、グルド達が思っている以上にヤバイ状況なんだよね」
アルスさんの言葉に、俺と義父さんの顔は強張った。
今回呼び出した〝聖国について〟だが、義父さんの考えは当たり〝今の〟聖国についてじゃなかった。
以前の、女神に支配されていた頃の聖国の残党が、数日前までは密かに生き延びてとある活動をしていたとアルスさんは言った。
そのとある活動、それは〝封印された竜〟の封印を解く為だったと伝えられた。
「なっ!? 竜の封印って、まさかあの竜なのか!?」
アルスさんの言葉に、義父さんは立ち上がり驚いた声を上げた。
そんな義父さんの様子にアルスさんは、落ち着いた様子で返答した。
「そうだよ。十数年前、レコンメティスを襲った竜。グルドが一人で戦い、冒険者生命を奪ったあの竜の事だよ」
「えっ!?」
アルスさんの言葉に、次は俺が驚いた声を上げた。
驚く俺と義父さんに、アルスさんは言葉を続けた。
十数年前、義父さんが撃退する事に成功した竜だが、その後も暴れまわり凄腕の魔法使いの人達によって地底へと封印されていたらしい。
しかし、その封印は聖国の残党によって解かれ、地底の奥底で竜が目覚めたとアルスさんは言った。
「それは、本当なのか?」
「本当だよ。封印した本人、師匠が言っていたんだ。あの竜の封印が解かれたって、それに封印を守る為に各地に作っていた祠が壊されていたんだ。一番重要な森林国にある祠が襲われた時点で気付くべきだったよ……」
アルスさんは悔しそうな顔をして、そう言葉を吐き出した。
森林国、祠……もしかしてフェリルが守っていた森か?
「あの、アルスさん森林国の襲われた祠ってフェンリルが守って居たりしますか?」
「ああ、そう言えばラルク君は現場に丁度居たね。そうだよあそこには竜を封印する為の祠が隠されていたんだよ」
「って事は、あの時の火事は聖国の残党が……」
「そうなるね。火事を使って、自分達は祠を破壊して封印の解除を行っていたみたいだ」
その言葉に、俺は「あの時もっと周りを見て居れば……」と落ち込んだ。
その様子にアルスさんは気が付き、俺のせいじゃないと言ってくれた。
「しかし、聖国の残党はどうやって祠の在処を知っていたんだ? 最初から知っていたのか?」
「いや、その筈はないよ。あの竜は他国にも脅威だから、封印の場所は一国に対して一つしか知らない筈だよ。誰かが教えたとしても、全部の祠を知るには相当な時間が掛かる。だから、どうやって在処を知ったのか謎なんだよ」
そのアルスさんの言葉に、俺の脳内にサマディさんの声が聞こえた。
サマディさんは、その場に呼び出して欲しいと言ったので、アルスさん達に許可を取り、この場にサマディさんを呼び出した。
100
お気に入りに追加
20,571
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。