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第十章
第429話 【出産・3】
しおりを挟むそれから数週間が経ち、暑い暑い夏が明けて、少し寒さを感じる秋へと季節が変わった。
そんな季節の変わり目に、これもまた偶然なのか3人の妻達の出産日となった。
「俺と義父さんって、本当に色々と重なるね……」
「誕生日が一緒だった時も驚いたが、まさか子供が生まれる日まで被るとはな……」
同じ部屋で3人の妻が頑張るのを、俺と義父さんは部屋の外で見守っていた。
そこには他にもアスラやレティシアさん、この日の為にとフレーディア家とレコンメティス王家、ルブラン国王家の皆が駆け付けて来てくれた。
「手紙を貰った時は、本当に驚いたよ。嘘でしょ? って、手紙を二度見したよ。まさか生まれてくる子供達も同じ日に生まれるって、義理の親子なのにどこまで運命的なんだって」
「俺も聞いた時は驚いたよ。まさかここまで被るとはな、妊娠したのはシャルルのが早かったが。神様が合わせたんじゃないかって疑った程だ」
アルスさんの言葉に、義父さんはそう言った。
義父さんの気持ち、それは俺も感じてサマディさんに態々尋ねた。
すると、それを聞いたサマディさんも驚いていた。
「……生まれる者に関与するのは、神のルールを破る事だから、それはほぼ無いと思うよ。ラルク君の時見たいに、神の悪戯でされる可能性もあるけど、最近の神界は監視の目も厳しくしてるから流石に無いと思う。これは本当に、ラルク君達の運命がそうさせたんだよ」
「マジですか……」
サマディさんの言葉を聞いた俺は、神の力じゃない事にその時改めて驚いた。
そんな思いでを思い出している俺だが、先程から落ち着いていられる状態じゃなかった。
「リア達、大丈夫かな……」
「シャルルも頑張ってくれよ……」
前世でもそうだったがこの世界でも、出産時に母体が壊れ、死に至る事がある。
俺と義父さんは、それだけはならないで欲しいと願い。
頑張っている妻達を心の底から、応援していた。
それから十数分経った頃、部屋の中から妻達が苦しむ声が聞こえて来た。
「頑張れ、頑張れリア、リン……」
「頑張れ、シャルル……」
応援する事しか出来ない俺達は、そう手を組み願い続けた。
「「「おぎぁ、おぎぁ!」」」
「ッ!」
踏ん張る声が聞こえてから数分後、赤ちゃんの泣き声が聞こえて来た。
その声を聞いた俺達は、慌てて椅子から立ち上がり、部屋の中へと入った。
すると、そこには元気な赤ん坊が3人と、先程まで頑張っていて疲れ切った母親達の姿があった。
「グルド。可愛い赤ちゃんでしょ?」
「ラルク君、女の子だよ~」
「ラルク君、こっちに来てみてあげて」
自分達が産み落とした新たな生命を抱えながら、笑顔で俺達を迎えてくれた。
俺と義父さんは、母子共に無事に出産が終わり泣きながら、妻達のもとへと近づいた。
生まれて来た子供は、全員が女の子だった。
リア達が生んだ子は、髪色は母親達のを受け継ぎ瞳の色は俺のを受け継いでいた。
「可愛いな」
無事に生まれて来てくれた赤ん坊達に、俺は優しくそう言った。
すると、赤ん坊達は嬉しそうに笑ってくれた。
そんな風に俺とリア達の横では、義父さんも嬉しそうに生まれて来た赤ちゃんに釘付けになっていた。
「義父さんの顔に驚かないって、肝が据わった赤ちゃんだね」
そう言うと、義父さんは「う、うるせぇ」と小さく反論した。
そんな義父さんが面白いのか、義父さんの子供は嬉しそうに笑った。
「……髪色は俺に似たが顔の形はシャルルにそっくりで成長したら綺麗な女性になるだろうな」
義父さんは笑っている赤ん坊に、再び釘付けとなっていた。
これは、義父さん相当な親馬鹿になるだろうな……いや、俺の時に既になっていたか。
そう心の中で思いながら、廊下で待っていたアスラ達を部屋に入れて赤ちゃん達と面会させた。
その後、ゆっくり過ごしたいだろうからと、折角来てくれた人達は帰宅した。
「そう言えば、義父さんの子供の名前結局何になったの? 色々と悩んでいたけど」
「ああ、名前か。ルシャラにしたよ。俺とシャルル、そしてラルクの名前を入れたいってシャルルが言って、色々と文字を変えて女の子だったらこれが良いってなったんだ」
「そ、そんな決め方してたんだ。いや、まあ俺達も似たような決め方だけど、俺の名前の文字入れても良かったの?」
「そこは俺も良いと思ったよ。だって、俺とシャルルの今があるのはラルクのおかげだからな」
照れたように義父さんはそう言って、俺もなんだが恥ずかしくなった。
「んで、ラルクの方はどうなんだ? ラルクも相当悩んでいただろ?」
「うん、リアが生んだ子はローラ。リンが生んだ子は、ランって名前を付けたよ。義父さん同じ考えで、自分達の名前から考えたんだ」
「ローラと、ランか。良い名前だな」
「ありがとう、ルシャラちゃんって名前も良い名前だね」
スヤスヤと眠る子供達を見ながら、お互いに子供達の名前を褒め合った。
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