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第十章

第426話 【国王の行動、王妃の思い】

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 野菜の在庫問題を解決して数日が経ち、俺はレコンメティス国の王城へとやって来ていた。
 最近、アルスさんから呼び出される事が無かったので、何だろう? と思いながら、城へとやって来た。

「ラルク君に折り入って頼みがあるんだ」

 アルスさんの部屋に入るなり、深刻そうな顔をしたアルスさんにそう言われた。
 こんなアルスさんは珍しいなと内心思い、アルスさんへ返事を返した。

「頼みですか? 俺が出来そうな事なら、協力しますよ?」

「実は、先日とある用事で城を出て居たんだ。でも、その時に偶々仕事が残っていて、そこをエマに見つかってさ……」

「あ~……」

 その言葉を、聞いただけで理解した。
 そして、次のアルスさんの言葉まで予想が付いた。
 エマさんの機嫌を取って欲しいんだろうな……

「エマの機嫌を治すのに協力して!」

 うん、だろうね。

 予想通りの言葉に、俺は溜息を吐いた。
 この人とのこんな会話、これまで何回もあった。
 その度に思って来たことだが、アルスさんは学習をしないのだろうか?

「アルスさんって、学習しないんですか……」

「うぐっ、だって王都に余り来ない吟遊詩人が来たから、見に行きたいって思って……」

「なら、エマさんに許可をもらって一緒に見に行くとか、すればいいじゃないですか。エマさんだって、アルスさんを缶詰状態にしたいわけでは無いと思いますよ。一人で行くから、後から痛い目を見るんですよ」

 そう俺はアルスさんに説教をしてから、エマさんのご機嫌取りをどうするか考え始めた。
 これまで色んな物でご機嫌取りをしてきたから、ご機嫌取りの弾数がほぼ無い。
 温泉旅行であれば、多少緩和されるだろうが、帰ってきた後にお仕置きが回る可能性もある。
 というのも、何度も温泉旅行でご機嫌取りを行い。
 それで許されると思ったアルスさんが、調子に乗った結果、旅行中は楽しんでいたが帰宅後に物凄いお仕置きをされたのだ。

「アルスさんが調子に乗ってなかったから、温泉旅行でご機嫌取りが出来たんですけどね……」

「ご、ごめんね……」

「はぁ……それじゃ、こういうのはどうですか?」

 俺はそう言って、考えたご機嫌取りの作戦をアルスさんに伝えた。
 その作戦は至ってシンプルな〝王都の街中を一緒に歩いて、楽しいデート〟作戦だ。

「そ、そんなので大丈夫かな?」

「確証は無いですが、何度も使った温泉旅行よりマシでしょう。今の王都は、デートスポットが沢山あります。少し前に、アスラ達の為に作ったデートに適した場所の資料を渡しますので、エマさんが喜びそうなルートを考えて、エマさんを楽しませてください」

「わ、分かったよ。これでも、エマとは長い付き合いだからね。エマが好きそうな場所は分かっているよ!」

 アルスさんはそう笑顔で言い、俺は用事も済んだので城を出て行った。
 翌日、夕方頃に以前まで俺の護衛をしてくれていた影の人から、アルスさんからの手紙を貰った。
 手紙には、エマさんとのデートが上手く行き、何とか怒りを鎮める事が出来たと書かれていた。

「お父様、成功したの?」

「みたいだね。でも良かったよリアから事前に、エマさんがアルスさんと一緒にデートをしたいって言ってるのを聞いておいて」

 そう実は、アルスさんに呼ばれる前にリアから、エマさんがデートをしたいと言っているのを聞いていた。
 なので俺は、それっぽくアルスさんに提案して、アルスさんがエマさんをデートに誘うように仕向けた。

「お母様が怒る理由って、職務を放棄するのもあるけど、お父様に置いて行かれたって方が大きいの、いつになったら気づくんだろう」

「教えても良いけど、アルスさん本人が気づいて欲しいってエマさんが言ってたから俺達が教えるのも無理だしね」

「早く気づいて欲しいんだけどね~」

 リアはそう言い、俺も「そうだね」と返して、いつかアルスさんがエマさんの本心に気付く日が来て欲しいと願った。
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