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第十章

第400話 【弟子には負けない・1】

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 それぞれ自分達の目標の為、迷宮にたどり着いた。
 場所は、楽園内にある〝B-ランク〟の迷宮に挑むことにした。
 本来であれば、もう少し強めの所に行くのも良いのだが、レベル上げというよりもまずは自分達の技術を上げるのが先だと話し合ってここになった。

「陣形は、ルーカスとレティシアさんが前衛で後衛はアスラに任せる。俺は、リンがやってたサポートに回るで良い?」

「僕は良いよ」

「私も」

「いいっすよー」

 3人の返答を聞いた俺は「それじゃ、行こうか」と言って迷宮の中へと入って行った。
 〝B-ランク〟の迷宮、最初の敵はゴブリン集団と出くわした。
 これだったら、丁度良くレティシアの剣術相手になるだろうと思い。
 俺とアスラは周りの警戒をして、ルーカスはレティシアさんのサポートに回ってもらった。

「今日、調子いいかも!」

「ですね。姐さんの動きがいつもよりキレが良かったっす」

「訓練の成果ですね」

 いつもより良い動きが出来たレティシアさんは、嬉しそうに飛び跳ねた。
 それから、次の魔物も出て来たのでアスラに対処させると、アスラも今日は調子良いみたいなので今日は良い感じに進みそうだ。

「【雷炎】!」

 アスラは以前、俺が教えて〝火と雷〟の合成魔法を完璧にマスターし、魔物を屠った。
 あれ? 今の【雷炎】俺が使っていた時よりも早くなかったか?

「何だか今日は魔法のキレか凄く良いよ。デーラ様に魔力循環の強制解放される前よりも、キレが良い感じ」

「……もしかして、やっと体に馴染んできたんじゃないのか? あれから、結構時間も経ってるし」

「そうかも知れないね。今回の迷宮探索で勘を取り戻せたらいいな~」

 そう言っているアスラだが、俺から見たら既に十分の魔法を扱っている。
 俺ものんびりしていたら、ステータス面で勝っていても技術面で負けてしまうな……
 これでも一応は〝師匠〟という立場である俺は、アスラの急な成長に焦りを感じた。

「ルーカスちょっと良いか?」

「どうしたっすか?」

 アスラの成長速度に焦りを感じた俺は、前衛でレティシアさんとの連携で楽しそうに魔物を狩っていたルーカスを呼んだ。

「ちょっと間、レティシアさんとアスラを頼めるか? 弟子の成長ぶりに焦りを感じてさ」

「あ~……確かにアスラ殿の成長ぶりは焦りますね~……」

 その後、俺はレティシアさんとアスラに「一人で潜って来る」と言って、皆と離れた。
 それから皆と離れて一時間程がたった頃、俺はこの迷宮の最下層と当たる場所で魔法の訓練を行っていた。

「ッ!」

「グギャッ!!」

 その訓練内容は、目を閉じた状態で半径〝1m〟に入って来た全ての物質に対して即座に反応し、魔法を放つ。
 極めて危険な訓練方法を行っていた。
 以前もこれに似た訓練方法を行っていたが、その時は半径10mほどの距離でもしも失敗しても第二第三の攻撃が出来たが、今のこれだと一発外せば命も危ない状況である。

「チッ、また顔から外れた……瞬時に判断するのが難しいな……」

 魔物の死体を確認した俺は、顔に当たったと確信した魔法が首に当たっているのを確認してそう呟いた。
 瞬時に相手の位置を計算してから魔法を放つこの訓練法は、単純な魔法の技術力を上げられる。
 技術力を上げれば、俺でもまだ完璧に使いこなせていないレベルの魔法を使いこなす事も可能になる。

「はぁ……アスラの成長ぶりが羨ましい……」

 まあ、俺はお詫びの品としてのスキルを貰い強化されている人間だが、アスラの場合は天賦の才能だ。
 俺との魔法のセンスのレベルが違いすぎるんだよな……

「っと、落ち込んでいる暇はないな! こっちだって、技術面+レベルを上げて素の能力値の差を開けば師匠面もまだまだ出来る!」

 そう意気込み俺は〖マッピング〗を使い、魔物が居る場所へと向かった。
 その日は結局一日、一人で行動をしてアスラ達とは事前に打ち合わせていた階層で合流した。

「ラルク君どうだった?」

「ああ、一人で魔物を沢山狩りまくったからなレベルも上がったし、新たな魔法も考えて来たよ。アスラに負けるか! って思いで沢山、魔物を狩って来たからな」

「そこは一度くらい僕に勝たせてくれても良いと思うんだけど、先を行くラルク君を追いかける方が楽しいから、そっちの方が僕は燃えるけどね」

 アスラはやる気満ち溢れる顔でそう言って、明日の迷宮探索時に今日一日で強化された俺の魔法を見せる約束をした。
 
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