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第二章

第59話 【消えたラルク】別視点:グルド

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 それは突然の出来事だった。ラルクと一緒に森で冒険者の基本を教え、帰宅している途中に怪しげな奴がこちらに向かっていたのを俺は気付いていた。俺はそいつに警戒しつつ、ラルクと喋りながら歩いていると、突然ラルクとそいつが消えた。

「ッ!」

 一瞬の出来事に俺は頭が回らなかった。しかし、直ぐに俺は思考を巡らせ辺りにラルクが連れ去られていないのか探し始めた。

「クソッ!」

 1時間、辺りを探した結果ラルクを見つける事は出来なかった。その後、直ぐに俺は街に戻りギルドに向かった。

「マスター、今良いですか」

「どうしたの、グルド?」

 ギルドに着き、直ぐにマスターの部屋に向かった。マスターは、俺の顔を見て何かがあったと察してくれた。部屋の中に入り、ララさんも交え先程起きた事を全て話した。

「それじゃ、ラルク君は……」

「はい……俺が側にいたのに、クソッ!」

 全てを話した俺は、怒りの矛先をテーブルに向け拳を叩きつけた。
 その後、マスターとララさんは直ぐに動いてくれた。マスターは、転移で城に行きアルスにラルクの捜索を頼みに行き、ララさんは緊急依頼として冒険者にラルクの捜索を頼んだ。

 依頼の紙を見た冒険者の中で直ぐに動いてくれたのは、ドルトス達のパーティーだった。ドルトス達は、依頼が貼られたのを見てギルドに俺が入ってくるのを見ていたので部屋まで押しかけて来た。

「グルドさん、さっきラルクの捜索って依頼の紙見たんだが、アレはどういうことなんですか?」

「ああ……ついさっきな、街の外から帰って来る途中に怪しい奴が前から来ててな警戒はしてたつもりなんだが、一瞬で転移魔法でラルクを連れ去られた……」

「……」

 ドルトス達は俺の言葉を聞き、そして俺の顔を見て言葉を失っていた。そして、直ぐに「グルドさんは、街で待っててください。必ずラルクを連れ帰ってきます」と宣言して、部屋から出て行った。
 しかし、ドルトス達には悪いが街でジッとしておくなんて俺には無理だ。ラルクを一刻も早く見つけてやりたい気持ちを抑える事は出来ない。

「おい、グルド。待ってたぜ」

 ギルドから出た俺は、一度家に戻り遠出用の装備に着替え家から出てくると家の前にフォルノが大きな箱を横に置き、そう声を掛けて来た。

「フォルノ、その横の箱は何だ?」

「見て分からないのか? お前さんの昔の装備だよ。そんな何処で買ったのか知らん装備より、こっちのが良いだろ? それにその立ち姿、どうやったのか聞かないが足治ってんだろ?」

「……」

 フォルノとの付き合いは長い、しかし誰にもバレなかった足の怪我が治っている事を一目で見極めるとは俺は少し驚いた。

「よく、気づいたな……」

「当り前だ。お前さんが俺の所に近寄らなくなっても俺は、お前を見ていたからな」

「流石だな、だが有難いフォルノの装備なら今度こそ竜が相手でもやれそうだ」

 俺がそう言うと、フォルノは「当り前だ。あの頃から俺だって、腕を上げたからな」と言った。フォルノの横に置いてある箱を受け取り家の中に戻り、箱から装備を取り出した。十数年前、竜にやられボロボロとなった装備は綺麗に元に戻っており、一目見ただけで当時から比べて装備の出来栄えが格段に良くなっていた。

「ありがとな、フォルノ」

「おう、ちゃんとラルクを連れて帰っていよ!」

「ああ」

 フォルノと別れた後、街の外に出た。俺はスッと目を閉じ何処に行けば良いのか天に聞くようにして感じた。その結果、先日ラルクに教えた銀龍の山がある方に行けと感じた。

「……ラルク、絶対に見つけるからな」

 俺はそう意気込み、食料が入った袋を持ち直し隣国ルブラン国を目指し歩き始めた。
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