65 / 66
第四章 魔王ロイド
第65話
しおりを挟むフィルバハド領と戻って来て数ヵ月が経ち、こちらの生活にも大分慣れてきた。アリサ達も王都よりもこちらの生活のが楽しいと言ってくれたし、ミリアも「静かでいい土地ですね」と王との暮らしよりも良いと言ってくれた。リズは、俺の恋人となった筈なのに相変わらず俺に仕える姿勢でメイド達と一緒に仕事をしている。まあ、そちらのが性に合っていると言われたので今は止める事もせずいつか本当に一緒になった時は辞めさせるつもりでは居る。
メアともあれからは仕事で話事も増えて、多少の仕事の分担を行う様にした。メア自身、自分の疲れを気にせず仕事をする性格だったみいで少し前に凄い熱を出して倒れてしまった。それからは、俺も出来るだけメアと一緒に仕事を分担し、メアへの過剰な負荷がかからない様にした。
「ロイド君、お母さん達が来たよ」
「了解、この資料を見終わったら行くから先にリビングで相手しててくれ」
「はーい」
両親が来た事を伝えてくれたアリサにそう言って俺は見ていた資料を確認し、判子を押して立ち上がった。
「メアはどうする? 父さん達に会うか?」
「すみません、どうしても今日中に終わらせたい作業がありますので」
「そっか、んじゃ無理しない様に頑張ってくれ」
「はい」
仕事部屋にメアを残して俺は部屋を出て行き、父さん達が魔っているリビングに向かった。リビングに着くと、外からでも聞こえる位に中で父さん達とアリサ達が盛り上がっている様だったのでノックをして中に入った。
久しぶりに会った父さん達は変わっていなかったが、母さんから「ロイド、こっちに来る回数減ってないかしら?」とジト目で言われてしまった。俺はそれに対して、仕事が忙しくて行けてない事を伝え、こうなる事を予想していたのでお菓子を作っていたので渡すと直ぐに機嫌がよくなり大事そうにバッグに入れた。
「母さんの使い方を既にマスターしてるんだな」
「親子だしね。はい、父さんにもあげるよ」
母さんに渡したのと同じ物を父さんに渡すと、笑顔で受け取ってくれた。
「そう言えば、今日はロイドから手紙を貰って来たが何か報告があるのか?」
「ああ、うん。……俺達、結婚する事にしたんだ」
父さんからの質問にアリサ達と目線で会話し、アリサ達を俺の近くに来てもらってそう言うと父さんは驚いた顔をし、母さんは「あらあら」とほほ笑んだ。
「まあ、ロイド達の惚れ話は嫌という程聞いていたが付き合ってから結婚まで早い気がするが良いのかい?」
「アリサ達には十分待ってもらってたからね。結婚は早めにしてあげようと思って……というか、そうしないとアリサの我慢がそろそろ危ないからね」
「ちょっと、ロイド君! お父さんの前にそんな事を言わないでよ!」
俺の言葉に直ぐにアリサが顔を赤く染めてそう反論した。その様子を見ていた両親は「まあ、お互いが良いなら私達も賛成するよ」と言ってくれた。それから、俺は父さん達に式の日程等を伝えて今日は泊まって行ってもらう事にした。
翌日、父さん達が帰った後、クロム王の所へと行き父さん達と同じく結婚する事を報告した。すると、何故か王都でパレードすると言い出して来た。
「だから、何でパレードなんですか?」
「魔王が国の姫と結婚するんだぞ? パレードしない訳にはいかないだろう? それに既にロイドの名は国中に知れ渡っている。知っているんだぞ、フィルバハド領がここ数ヵ月で異様に発展してるのは、あちこちから移住する者が増えてるんだろ?」
「まあ、確かに人は増えて来てますし、何故か俺の名前も知れ渡っていますが、そこでパレードになる訳は分かりません」
「良いから、するんだ! ロイドが嫌と言ったとしてもアリサ達に話を通せば、どうせ折れるんだ。ここでやると言っても良いだろ」
「うっ……確かにアリサ達にならやりたいと言うかもしれないが……」
その後、結局俺はクロム王の話術にそそのかされて〝魔王ロイドの結婚お祝いパレード〟を行う事が決定した。その事を家に帰って来てアリサ達に伝えると、凄く嬉しそうに反応してくれたので、この様子を見れただけでも良かったと思いつつ、パレードに向けて準備を進めた。
23
お気に入りに追加
4,604
あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。


竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる