勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第四章 魔王ロイド

第55話

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 クロム王との話し合いから数日が経ち、レオンの訓練も大分進んだ頃、俺は蜂の魔王が治めていた領地にある復旧された城の会議室に居た。何故、俺がこんな所に居るのか? それは、数日前にクロノスを使い全魔王に対して〝話し合いがしたい〟という手紙を出し、場所の指定をここにしたからである。
 まあ、手紙の内容はクロノスに任せていたので、今のような短い文では無いと思うが最後に付け加えで〝未参加は敵と見なす〟とそのままつけるように言っておいた。

「ご、ご主人様……本当に私がこの場に居ていいんですか?」

「ああ、リズが一番適任だからな下手にクロノスやルドラをこの場に居らせていたら話し合いの途中で騒ぎ出しそうだからな、かといって俺が配下も連れずに一人で居るのも魔王としての格を下に見られるからな」

「うぅ……分かりました。ご主人様が下に見られない様に私、頑張ります!」

 リズが意気込んだようにそう言ったと同時に部屋の扉をノックする音が聞こえ返事をすると、魔王達が到着したとメイドから報告されて中に通してもらった。
 部屋の中に入って来た魔王達、現在この世界に存在する魔王は10体居るが俺を含めてこの場に10人全ての魔王が揃った。そしてそんな魔王達はそれぞれ一人ずつ側近を連れて来ていた。

「まず、最初によく集まってくれた。早速で悪いが今回呼んだ理由を話させてもらう」

 全ての魔王が部屋に入り席に着いたと同時に俺がそう言うと、魔王の一人である青年風の男性が「ちょっと待て」と言って話を遮って来た。

「何か?」

「何か? じゃねえよ! まず、俺達が来てやったことに感謝の言葉はねえのか?」

 その青年が怒気を含んだ口調で言うと、同じ気持ちなのか数人の魔王が頷き、残りの魔王は静観していた。

「感謝の言葉……そんな物、無いに決まってるだろ? 呼んだのは確かだが、手紙を最後まで見たか? こなかったら敵とちゃと書いてあっただろ? 俺と敵となりたくないからここに来たんじゃないのか?」

「ハッ! あんな挑発紛いの文面を見たから来たと思ってるのか? 笑えるね! 俺達が来てやったのは、新米の魔王がどんな物か確認する為に来たんだ。だから、余り挑発に乗るなよ?」

 青年風だった男性は背中から黒翼をバンッと出現させつつこちらに向かって睨みつけてきた。そんな男性に対して、俺は席を立ちあがり男性の近くへと近寄った。

「力の差を考えて喋れよ雑魚」

「ガッ!」

 近寄った俺は膝で青年の腹を蹴り、頭を掴んで地面に叩きつけた。その光景を見ていた魔王と魔王の側近達は緊張感が増したのか一瞬にして黙った。

「てめぇ……」

「言っておくが、お前が死んで新しい魔王の方と話し合いをする事だっていいんだぞ? 既に神様から次の候補者も聞いているからな、ここにいる既存の魔王を全員殺して新しい魔王達と新しい世界を作って行くことだっていいんだぞ?」

 未だ俺に押さえつけられ苦しそうな表情をしている青年の魔王に対して俺がそう言った。それから、黒翼の魔王も落ち着き席に着き直したので改めて話し合いを再開した。
 今回集めた理由、それは魔王達で連絡を取り合い世界のルールを守りつつこの世界で暮らしていこうと言う提案をする為だった。その過程で俺は神様から聞いた内容を伝えると、魔王達は驚いた顔をしていた。

「確かに魔王が死んだら新しく魔王が誕生して10の魔王を保っていたな……」

「ああ、魔王同士が争っても意味が無いし、魔王が他国に攻めれば面倒な勇者という存在が出てくる」

 俺がそう言うと、古株であると言った竜人の魔王が「成程な……」と呟き、俺と同じく今回新しく魔王となった人狼の魔王が「世界のシステムで俺は魔王に……」と呟いた。

「悪くない話だと思う。お互いに干渉せず現在の領地を繁栄させていけばいいだけの事だ。苦しくなったら魔王同士で助け合えば良い、俺はそれを話したくて今回集まって貰った」

「ふむ……私はこの提案に乗ろう。争いは何も生まないと分かっていて争うのは馬鹿の所業だ」

「私も良いわよ。現状困っても無いし、争いは嫌いだもの」

「儂も良いぞ」

 次々と魔王達が提案に賛同する中、一人だけ俺の提案に反対した者が居た。それは最初に俺と喧嘩した黒翼をもつ青年だった。

「ちっ、俺は嫌だね。何で魔王同士で仲良しこよししないといけないんだよ!」

「はあ……一人は馬鹿な魔王が居ると思ったが、ここまで馬鹿とはな……一つ教えてやる。俺は既にお前が聖国と絡んでいる事は知ってるんだよ。そして、お前が蜘蛛の魔王と蜂の魔王を使って、人族と炎竜人族を襲った事も知ってる。それらを水に流して話し合いに参加させてやったが、ここで死んでもらうよ」

 俺がそう言うと黒翼の魔王は「なッ!?」と驚いた顔をした。そして違う方からも驚いた声が上がった。それは、竜人の魔王だった。

「お前が、蜘蛛の魔王をけしかけたのか? 私はずっと疑問だったんだ。あの争いを拒む奴が何故、人族へ戦争を仕掛けたのか……お前だったんだな黒幕はッ!」

 竜人の魔王は怒りで己を忘れ、黒翼の魔王に対して部分竜化した手で翼を切り裂き更に頭を掴み握り潰した。

「ッ! す、すまない。我を忘れてしまった……」

「いや、良いよ。俺も彼奴との話し合いは無理だ感じていたからな、今から新しい魔王を連れてくる。皆は待っててくれ」

 俺はそう言って、事前に次の魔王となると知っていた人物の所まで転移魔法で移動した。

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