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第四章 魔王ロイド
第52話
しおりを挟むあれから特に語るような出来事は無く、俺が魔王となって一ヵ月の月日が経った。リクサムス王国へと戻って来た俺達は、冒険者活動を再開したのだが依頼の数が少なく活動をしていても暇が出来てしまっていた俺達は、俺の領地であるフィルバハド領へと拠点を移していた。
「アリサ、そっちの様子はどうだった?」
「特に異常は無かったよ。ロイド君」
「そうか……よし、ミリア達を集めて昼食とするか」
領地へとやって来て一ヵ月、俺達は領内の魔物が住んでる地帯を異常が無いか探索を行っていた。何故、こんな事を? それは、領地に来ても俺達の仕事が全く無かったからだ。貴族へとなり領地を貰った際に俺の部下へとなったメアだが、優秀すぎて俺達がやる事が全く残っていなかった。既に領内の情報は完璧に調べ上げて税金に関しても適切な量を取る等、仕事をこなしていた。
なので、俺達は頻繁に情報が変わると言う事から魔物の生態調査を行っているのである。
「ん~、それにしても私達って本当にやる事がないよね……」
「あぁ、本当にな……」
まず何故、冒険者の仕事が少ないのか。それは、現在この地域の気温が下がり始めて魔物達も活発だった頃から大人しくなってきて、冬眠の準備を始めているからだ。
「迷宮都市に行って委員長に会いに行くのも良いけど、それだけで行くのもね」
「リクが迷宮を攻略しても良いっていうんだったら、行っても良いけど多分無理だろうしな……」
アリサとそんな話をしながらミリア達を集めて昼食をとった。昼食後は、調査の続きを行い領主の為に用意された屋敷へと戻って来て資料をエマに渡して今日の仕事は終わった。
「なあ、エマ。俺達に仕事って他に無いのか?」
「無いですね。基本的に既に自分達で出来る事はするように手配しておりますので、ロイド様が居なくても回る様にしております。もとより、ロイド様が運営をしないと言ってたのでやったのですが、いけませんでしたか?」
「いや、そこに関しては有難いんだけど、暇すぎて毎日が退屈なんだよ。冒険者の活動も思う様に出来ないしな」
俺はエマに対して「無茶を言って悪かった」と謝罪をしてから部屋を出た。エマに資料を渡して退出した後、アリサ達とリビングでお茶を飲みながら雑談していると屋敷へと手紙が届いた。その中に俺宛の手紙が入っており、クロム王からの呼び出し状が入っていた。
「おっ、アリサ達! 暇が無くなる匂いがするぞ!」
「「「「ッ!」」」」
アリサ達は俺の言葉を聞くと、バッと立ち上がり一斉に俺に掴まったので俺は手紙を持って来てくれたメイドに「エマに仕事が出来たから王都に戻る。と言っておいてくれ」と言って転移魔法で王都へと移動した。王都へと戻って来た俺達は、早速城へとやって来てクロム王が居る部屋へと突撃した。
「クロム王、どんな仕事ですか!」
「暇してるだろうから呼んだが、本当に暇だったんだな……」
クロム王は俺達の顔を見るとそう言って、取りあえず座れと言われたので俺達はソファーに座ってクロム王の話を聞くことにした。
「ロイド、今回お前達を呼んだ理由はこの国に関わる重要な事だ。それを分かったうえで聞いて欲しい」
「はい」
そんな前置きに俺達はコクリと頷きながら返事をすると、クロム王は言葉を続けた。
「ロイド、お前達にやってほしい事、それは我が国の軍事力の強化に協力してほしい」
「軍事力の強化ですか? それは、俺達が軍に入ると言う事ですか?」
「いや、違う。元はアリサ達にそうなってくれたら良いなと思っていたが、それでは我が国が強い者を引き入れて強気になっただけであると気付いてその提案は白紙になった。今回頼むのは、ロイド達に兵士達の訓練をして欲しいと言う事だ」
クロム王はそう言いながら引き出しから紙の束を取り出して立ち上がり、俺達の前のテーブルの上に置いた。俺はそれを手に取り中を確認すると、そこには兵士達の能力値など大まかに書き写されていた。
「見て分かる通りに、そこには現在この国に仕える兵士達の能力を書いてある。ロイド、それを見てどう思う?」
「……正直、低いと思いますね。俺の実家でもレベル100は普通に居て低くても80はあります。それなのにこの国の兵士は平均が20か30は、もし別の種族か攻められた場合、手も足も出ませんね」
「その通り、魔王から攻められる前は戦争など殆どなく平和ボケをしていたが、いつ襲われるか分からない立場に居るのが人族だ。直ぐにでも軍事力の強化を行い対等、もしくは一矢報いる事が出来る程度まで上げ、他国への牽制をしたいと思っている」
その言葉を聞いた俺達は話し合い、特に問題も無いのでその提案を受ける事にした。それから、アリサ達には先に兵士達について調べてもらう為に部屋を出て行き、部屋の中には俺とクロム王だけとなった。
「しかし、魔王に攻められた我が国を新たな魔王が協力して立て直すと言うのは、面白い事だな」
「確かにそうですね。新魔王であるこの俺が手を貸す代わりにはこの国の軍事力、周辺国に負けない強さにしてみせますよ。ハハハ」
「……兵士達が死なない程度に頼むぞ、魔王様」
クロム王からの言葉に調子に乗って返すと、心配した顔つきでそう言われてしまった。
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