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第三章 対蜂の魔王軍
第44話
しおりを挟むあの後、母さんは泣きつかれたのか疲れた様子だったのでアリサ達に頼み別室に移動させてもらい俺と父さんと二人きりで話をする事にした。
「それで、父さん。現状どんな感じなの?」
「あぁ、状況は最悪と言っていいな。蜂の魔王〝クイーン・ビー〟は、俺達に戦争を吹っかける前に周辺国を既に手籠めにしていたみたいで、戦争が始まって直ぐに物資の進路を断たれ、食糧も今は枯渇気味で兵士達も疲労が抜けきれていない」
「……本当に最悪な状況だね。それで、こっちの兵力は?」
「通常兵士が5000、民家兵士が3000だけだ。一応、死者は今の所出て無いが、もう時間の問題という所だ」
父さんは本当に悔しそうに言うと「彼奴ら、俺等の聖域である空に大量の毒を撒いて陸上での戦争に持ち込んでいるんだ」と呟いた。
「成程、分かったよ父さん。取りあえず今は兵士達の気力回復が先だね」
「しかし、もう食料は……」
「父さん? 俺の力は知ってるんでしょ、大丈夫だよ。俺が居ない間も配下達は自分たちなりに頑張っていたみたいだよ」
俺がそう言うと父さんは「えっ?」と間の抜けた顔をしていた。それから、1時間程が経ち炎竜人族軍の本部である砦では兵士達や民間人が楽しそうに食事をしていた。
「凄いなロイド。あれだけ疲れ切って元気が無かった兵士達が笑っているよ」
「まあ、美味しい食事に暖かい風呂と疲れを癒す神器ですからね」
あの後、俺は異空間の中に入り予定していた通り食料の備蓄が足りなかったと伝えると用意していた数万人分の食料を砦へと運び炊き出しを始め、更に疲れを癒すための風呂も魔法で作り、疲れ切った兵士達に癒しを提供した。
「主よ。ちょっと、良いでしょうか?」
「ごめん、父さん。ちょっといってくるね」
父さんと兵士達の顔を見ているとクロノスから呼び出され、父さんから少し離れた所でクロノスが得た情報を受けた。
「成程、蜂の魔王は今は自分の領地に戻っているんだな」
「はい、現在この周りや周辺国に居るのは蜂の魔王の部下達だけで有り、魔王自身は領地で優雅に暮らしておりました」
「了解、引き続き調査を頼む」
「はい、お任せください」
クロノスはそう言うと、シュタッとその場から消えた。俺のイメージだと、悪魔は影からヒッソリと出てくるイメージだったのだがクロノスはどちらかというと暗殺者みたいな動きをしている。そして、そのクロノスの舞台も全員が暗殺者の様な動きで調査隊として現在動いている。
クロノスとの話が終わった俺は、父さんの所に戻ると心配した様子で「何かあったのか?」と聞いて来たが、「何も、ただ炊き出しが全員に回ったって報告してきただけだよ」と返答し、その後も兵士達の様子を見ていた俺達は母さんが起きた事をアリサ達に報告され、母さんが寝ている部屋に向かった。
「あなた、ロイド。ごめんなさい……」
「大丈夫だよ。母さん、今は兵士達に休んで貰ってるから母さんも休んでて」
俺がそう言うと、母さんは嬉しそうな顔を浮かべて「ありがとうロイド」と言った。それから、俺は母さんの為に栄養たっぷりのスープを作ってあげて食べさせてあげると、恥ずかしそうではあるが嬉しそうな顔を浮かべて食べ、そんな母さんと俺を見ていた父さんは目元に薄っすらと涙を浮かべていた。
その後、母さんは再び眠りについたので俺達は部屋を出て父さんも兵士に呼ばれたのでアリサ達と共に父さんから使っても良いと言われた部屋に集まった。
「ロイド君、良かったね。両親と和解できたみたいで」
「あぁ、良かったよ。自分が考えていた最悪の想定じゃなくてな」
俺がそう言うとアリサ達は「ロイド君、メリアさんが大切に想ってるって分かった時、涙流してたもんね」と言いミキとモモも「あの時、私達もホッとしたよ」と言った。
「……そうか、俺も泣いていたのか」
「うん、でも仕方ないよ。捨てられたと思っていた家族が、本当は大切に想っててくれたんだからね」
「そうですよ。ロイド様、あの涙は仕方ない事です」
アリサとミリアにそう言われた俺は「そうだな」と呟き、今後について話し合いを行った。その話し合いで現在、蜂の魔王は領地で優雅に暮らしている事をアリサ達に伝えると「戦争を仕掛けておいて……」と悔しそうにしていた。
「だから今度は、俺から仕掛ける。既にクロノス達に情報を揃えて貰っている状況だ」
「そうなんだ。それで、私達は何処に行けばいいの?」
「アリサ達には、この砦で兵士達を守ってやってほしい。食事と風呂で少しは体力が回復はしているが、まだ安心できない。それは父さんも母さんも一緒だ」
俺がそう言うとアリサ達は「分かった。ロイド君、死なないでね」と心配した顔つきで言われた俺は「死ぬつもりは無いよ」とアリサ達の頭を撫でてやり、俺は部屋を出て行った。
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