勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第二章 迷宮へ挑む

第38話

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 アリサ達との話し合いが終わった後、一人となった俺は少し前から気になっていた〖覇者〗というスキルの能力を理解しておこうと思いステータスを開き、〖覇者〗のスキル項目を確認した。

名前:覇者
説明:覇道を極めし者、神々の試練を乗り越えた者に与えられるスキル。その力は絶大であり様々な能力を手にする。

「……能力一覧とかは載ってないのか? リフェル何か知ってるか?」

(うむ、我も主の全てを知っている分けではないから分からない事もあるが、覚えている限りでは〝鑑定、空間作成、配下契約〟の3つは持っている筈じゃ)

「成程、ミルスさんに聞いてみるか……」

 俺は頭の中でリフェルとの会話を止めて、ミルスさんへ話しかけるように切り替えた。すると、ミルスさんは直ぐに俺の念話に気が付き目の前に現れた。

「どうしたんですか、ロイド君?」

「はい、実は〖覇者〗のスキルについて確認しようと思ってみたんですけど、能力が書かれていない様で確認出来ないんですよね」

「えっ? そんな事は……」

 ミルスさんは驚いたように反応し、俺の方をジッと見ると複雑そうな顔になった。

「どうやら、ロイド君の呪いは完璧に解かれていなかったようですね。長年掛かっていた事で魂の奥深くまで呪いが掛かっている様です。そのせいで一部の能力に制限に掛かっているみたいです」

「それは解呪できそうですか?」

「……無理そうですね。これは、メリア本人では無いと解けない呪いです。すみませんロイド君、私共では力になれそうにないです」

 ミルスさんは申し訳なさそうに頭を下げてそう言った。俺は、そんなミルスさんに「ミルスさんが謝る事では無いですよ」と止めて、疑問に思った事を尋ねた。

「全能神でも無理な呪いを母さんは扱えるんですか?」

「えぇ、彼女はこの世界でも僅かにしかいない呪術師の中でもトップクラスなんです。彼女は、呪いを使う際に自身の固有能力でもある〖血魔法〗を同時に使って従来の呪いとは違った呪いを相手に掛ける事を得意としてるんです」

「呪術の天才と言う事ですか……」

「そうなります。以前、彼女が本気で呪いを掛けた相手を聖神が解呪しようとしたのですが、解呪に成功しなかったんです」

 ミルスさんのその言葉を聞いた俺は、神をも超える能力を扱える人が存在するのかと驚いた。それから、ミルスさんは「また、何かありましたらお呼びください」と言って消えた。

「結局、分かんなかったか……まあ、良いか。取りあえず、一旦リフェル達の様子を見に行くとするか」

 俺はそう呟き〖覇者〗の能力の一部である空間作成で作ったというリフェル達の住処へと入る入口を出現させて空間の中へと入った。そして、空間の道を通って出た先の光景に俺は驚きを隠せなかった。

「なんだ、これ!?」

 青い空、白い雲、そして地平線まで続く海や天まで届かんとする大きな山々がそこにはあった。

「主殿! ようこそ、主殿の世界へ!」

 その光景に驚いていると、竜の姿をしたルドラが俺の元へとやって来て瞬時に人間の姿となると片膝をついてそう言った。

「なあ、ルドラ。これって、俺が作った世界なのか?」

「はい! 主殿が我等の住処となる場所を用意すると言って、お作りになられた世界です」

 ルドラは自信満々にそう言って「主殿、皆の者も主殿が来るのを楽しみに待っていますので、取りあえず移動しましょう」と言って竜化した。俺は、ルドラの言葉に「ああ」と言って背中に乗り、ルドラはゆっくりと空へと飛んだ。
 数分後、この世界に入ってきた以上に俺は驚く事となった。

「何だ。あの都市は!?」

「驚きましたか? あちらは、この世界の唯一の都市です。我等、竜種から外の世界では一番弱いとされる魔物のスライム族まで多種族が住む都市です」

 ルドラは嬉しそうにそう俺に言うと都市が近づくにつれて降下して行き、下に居る者達が見える位置の所を飛び始めた。すると、下の方から歓声が聞こえたので向くと、そこには〝ロイド様万歳!〟〝ご主人様おかえりなさい!〟と言った看板を掲げた魔物や亜人、普通の人族等が居た。

「彼等は全て、主殿に忠誠を誓った者達です。主殿が力を忘れた数年間、彼等はいつか主殿が戻って来ると信じて、互いに協力しあいこの都市を築き上げたんです」

 その後、ルドラ達が用意したと言う壇上の上に俺が下りるとその周りには多くの人々が集まっており、俺の姿を見るや大きな歓声を上げた。
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