勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第二章 迷宮へ挑む

第29話

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 ミリア達から言われた俺は、直ぐに城に行く為に転移魔法で城の門の前に移動して来た。そして、門番は俺達の顔を見ると直ぐに門を開けて中に入り王が居る部屋へと通された。案内されてきた部屋に入ると、中にはクロム王とクソ勇者が居た。

「おぉ、ロイド! よく来た!」

 クロム王は俺が入って来ると、嬉しそうに反応し、逆にクソ勇者は噛み潰したような顔をして俺の方へと顔を向けた。

「何でお前が、この部屋に通されるんだ? それにミリア姫、何故貴女がその村人と一緒に居るんですか?」

「お父様、それで話はどうなってるんですか? 何故、私達が呼び出されたのですか?」

 ミリアはクソ勇者からの質問に対して無視をして、クロム王へと呼ばれた理由について尋ねた。すると、そんなミリアの態度に怒りを覚えたのかクソ勇者がクロム王を遮り自分で話し始めた。

「そりゃ、この世界を救ってあげた救世の勇者様が一人の村人にコケにされたから、それの報復に罪人になる様に頼みに来たんですよ」

「世界を救ったですか……確かに、貴方は魔王の一人を倒し、この国を助けてくれました。しかし、その結果自分の力と地位を使い一人の人間を幸せの人生から追い出したんです。そんな人間が救世の勇者だなんて名乗らないでください。反吐が出ます」

「なッ! 俺は、あんた達のせいで安全な世界からこっちの世界に来てやったんだぞッ!」

 クソ勇者はミリアの言葉に激高し、声を荒げてそう言い放った。その言葉にミリアは若干、後ずさりしたがそんなミリアの肩に手を置いたアリサ達が「大丈夫よ」と言って一歩前に出て、衝撃の言葉をこの場に居る者達が聞いた。

「来てやったって、別にあんたが特別な存在だと思ってるわけ? 私達は、神様から他に素質がある人が居ないから絶対に来て欲しいって言われてたけど、あんた別の人間でも代えが出来たのよ? それなのに、あんたが勝手に妄想して承諾したんでしょ、今さら文句言ってんじゃないわよ」

「そうそう。私達の他の素質のある人は居ないって神様が頭を下げてたけど、あんたの場合他にも沢山〝勇者〟の素質を持つ人間は居るから別に嫌なら断っても良いって言われてただろ?」

「そうですよ。それに神様も本当は、貴方をこちらの世界に連れて行きたくないとも言ってましたよね? それなら、今から帰ったらどうですか?」

 アリサ達からそう言われたクソ勇者は「うっ、煩い! 世界を救ったことには変わりないんだぞ!」と反撃とも言えない言葉を発した。そして、その直後俺達が入って来た扉の方からドタドタとした音が聞こえ、バンッと扉が開くとルネとルネの両親が入って来た。

「ちょっと! ロイドが何で転移魔法を使えるのよ!」

「……別にルネには関係ないだろ、それと今は大事な話をしてるから黙っててくれるかな?」

「なッ! 何よ。ちょっと、ルイ様! 早く、ロイドを罪人扱いにしてもらう様に頼んでください!」

 ルネは先程までの会話を聞いていないのでクソ勇者にそう進言した。しかし、先程のアリサ達の言葉で沈黙しているクソ勇者はルネの言葉に反応する事は無かった。

「そんなに嫌だったんなら、今から帰れば? アルバハルバ様も別に帰っても良いって言うと思うわよ?」

「か、帰らない。折角、恋人も出来たんだ。今更、帰る訳ないだろ!」

「あっそ、ならもう金輪際、私達に迷惑を掛けないでくれる? 私達もあんたと違って忙しいのよ」

 アリサがそう言うと、クソ勇者は悔しそうな顔をして部屋を出て行き慌ててその後ろをルネとルネの両親が出て行った。

「アリサ、ミキ、モモ。助かったよ。一応は、国を救ってくれた勇者相手だったから言い返せなくてな……」

「良いんですよ。あいつは単なるお飾りでしたからね。あいつと旅をしている時は一番、足手まといでしたからね」

 アリサの言葉にミキが「本当に、聖剣だけ置いて帰ってほしかったです」と言い。モモは「性格がクソ過ぎて一緒に居るのも嫌だったな」と言った。それから、クロム王が「そう言えば、何で王都に居るんだ?」と聞いて来たので、迷宮であった事を軽く伝えて、王都の近くに迷宮があるらしくてそちらに来たと伝えた。
 その後、俺達は宿へと戻り勇者達との遭遇のせいで精神的に疲れたので夕食まで休む事にし、それぞれの部屋に行き俺はベッドに入り眠りについた。

「ッ!」

「チッ! 起きやがったか……」

 精神的に疲れているとは言え、近くに勇者が居ると分かっていた俺は警戒心を解かずに横になっていると、休み始めて一時間程たった頃、休んでいる俺の部屋に勇者が奇襲を掛けてきた。

「とうとう、そこまで落ちのかクソ勇者」

「はっ、武器も装備も着て無いお前が強がるなよ。今から、俺が静かに殺してやるからよ!」

 勇者はそう言うと「ダンッ」と床を蹴り、俺に向かって飛び掛かって来た。俺は、そんな勇者に「馬鹿か、俺は魔法が使えるんだぞ」と言って魔法を発動させて、窓の外へと放り出し、落ちた勇者の元へ魔法を使って静かに降り立った。
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