勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第二章 迷宮へ挑む

第28話

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 あれから更に数日後、グルルドさんの所で予備の剣や装備を購入した俺達は迷宮都市を出発し、リクサムス王国の王都へと向かう旅が始まった。まあ、道中は一度通った道を変えるだけなので何事も無く進み迷宮都市に来た日数と同じ日数で王都まで戻って来た。

「しかし、まさかこんな早くに帰って来るとは思わなかった」

「確かに、普通に王都に戻って来るのは来年くらいかなって思ってたもん」

 折角、王都まで戻って来たという事で一応は挨拶をしておかないと行けないなと思い城に向かうと、門番が俺達と分かると慌てて走って来た。

「ロイド様方、今お城の中に入られますと騒ぎに巻き込まれてしまいますので、今は城に入らない方が良いです」

 門番からそう言われた俺達は「何かあったのか?」と門番に聞くと、言いにくそうな顔をして騒ぎの原因について話をしてくれた。

「実は、勇者ルイ様が城に来ておられまして……」

「あ~……アリサ達、どうする? 久しぶりに元仲間を見たいか?」

「全然。騒ぎに巻き込まれる前に退散しましょ」

「それが良いです。もし、宿を取ってるのでしたら勇者様がおかえりになられた後、お知らせしに行きます」

 門番の兵士からそう言われた俺達は、本日泊まろうと思っていた宿の名前を伝えてその場を去って行った。そして、外を出歩いているといつ勇者に出会うか分からないので、宿を取った俺達はその日は一切部屋から出ず一日を過ごした。結局、門番は来なかったので勇者は今もまだ城に居るんだろうと思うと、クロム王や王家の方々が大変な目にあってるんだと想像が出来た。

「どうするロイド君?」

「そうだな、取りあえず俺は素材の換金をしてもらわないと意味の無い素材をため込む事になるからギルドに行くつもりだよ」

「あ~そっか……でも、それに私達も付いて行ったら目立ちそうだし、私達は宿で留守番してた方が良いかな?」

「そっちの方が安全だろうね。取りあえず、行ってくるよ」

 俺はアリサ達が泊っている部屋に集まっている皆にそう言って、部屋を出て宿の外に出た俺はマントを被り、顔がバレない様にギルドへと向かった。

「ちょっと! だから、ロイド・フィルバハドって冒険者の場所を教えて欲しいのよ!」

 ギルドの中に入ると、聞き覚えの声で俺の名前が呼ばれてそちらの方を見ると、そこには俺の幼馴染で元婚約者であったルネが居た。俺は、ルネを見た瞬間、急激に吐き気がし出したのでこのままギルドに居ると危ないと思い。換金は諦めて宿に帰る事にした。

「そこのマントを被ってる男。もしかして、ロイドか?」

「ッ!」

 フラフラとした足取りで宿を向かっていると、すれ違った男性からそう声を掛けられてチラッとそちらを見るとルネの父であるベルンさんが居た。

「……」

「お、おい待てロイド!」

「ッ!」

 俺はベルンさんと一瞬目が合ったが、嫌な予感しかしなかったので無言でその場を立ち去ろうとすると、マントを引っ張られ隠していた顔が出てしまった。

「ああ、やっぱりロイドだったか」

「……何ですか、ベルンさん。村から追い出し俺に何か用でも?」

「用だと? お前が畑に魔法を掛けて作物を実らせない様にした事は知ってるんだぞ? そんな態度をとってもいいのか?」

「……は? 何言ってるんだ?」

 強気な口調でそんな事を言ったベルンさんの言葉に俺は素でそう返すと「これを見ろ!」と言ってヘナヘナとした大根を見せられた。

「何ですか? そんな変な大根」

「ロイドが呪ったせいでこんな野菜しかできなくなったんだよ。良いから、早く村の畑の呪いを解け、さもないと罪人として一生牢獄で過ごす事になるぞ」

 そんなバカみたいな事を堂々と宣言したベルンさんの後ろからノーマさんとルネがやって来て「ロイド、見つけたわよ!」と言って来た。

「ロイド、私に婚約破棄されたからって村に八つ当たりはしないでよ。どんだけ心が狭い男なの? だから、私から捨てられたのよ? 顔も悪かったら、中身も悪いのね」

「……」

 ルネにそう言われた俺は、以前の俺だったら傷ついていたかも知れないが既にルネの事は赤の他人、それも敵として思っているのでそんな言葉を掛けられた俺だったが微塵も心を動かす事は無かった。

「一つ言っておきますが、俺は村に呪い何てかけてませんよ。それにそのヘナヘナとした大根、俺が来る以前までの村で取れていた野菜と似ているでしょう? 俺は村に居る間、村の外から来た人間として村の為にと思って畑で作物がより美味しく育つ様に毎日魔法で育てていたんですよ。俺が居なくなったから、以前の野菜に戻っただけですよ」

「なっ! そんな筈ないでしょ! ただの村人が村全部の畑を管理できる程の魔力を持ってるはずないでしょ!」

 ルネは俺の言葉にそう反応したが、俺は今まで秘密にしていた事をこの場で暴露する事にした。

「まあ、確かに俺はただの村人だったよ。村に来てからわね。それ以前、俺は両親に連れられて色んな迷宮や大陸を旅していたんだよ。そして、そんな俺の魔力量は〝100000〟だ。これだけの魔力があれば、村の畑程度なら管理出来るよ」

「「「100000!?」」」

 メリッサ一家が俺の魔力量に驚いていると、遠くの方からアリサ達がやって来てその後ろには兵士さん達も居た。そして、アリサ達が俺達の元に到着すると、今すぐに城に行かないと行けないとミリアから伝えられた。
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