勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第二章 迷宮へ挑む

第27話

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 リクから迷宮探索を止めるようにお願いされて宿に戻って来たのは3日前で、現在迷宮都市のギルドで素材の鑑定を行って貰っている。流石に250層まで探索したので素材の量も質も高く、買い取りが難しいと言われた物が多数あった。

「しかし、よくもまあ軽々と探索済み階層を更新してきたの」

「そうですか? 以外に簡単でしたよ。まあ、仲間が強いってのもありましたけど、ここより意地の悪い迷宮も攻略した事がありますからね」

「……流石、幼少期から迷宮に入り浸ってた変人だのう」

「別に潜りたくて潜っていたわけではないんですからね。それと、そんな口をするんでしたら、買い取り不可能と言った素材を商業ギルドで買い取ってもらっても良いんですからね? 良いんですか、あちらに高価な素材や宝を持って行ったら、どうなるか分かりますよね?」

 俺がそう脅すと、先程までのニヤニヤとした表情を一変し、嫌そうな顔をした。

「全く、ギルドマスターを脅す奴なんて早々におらんぞ……」

「先にやったのは、ミシュエラさんですからね?」

 それから、俺はミシュエラさんから硬貨が入っている麻袋を受け取り部屋を出た。そして、一階に戻って来るとアリサ達が近くに寄って来た。

「どうだった。ロイド君?」

「うん、思っていたよりかは換金して貰ったから最後にグルルドさんの所で予備の装備を買ってから帰れるぞ」

「やった~、やっぱり予備が無いと心配だからね。良かった~」

 アリサがそう喜んでいると、俺達の近くに誰かが寄ってくる気配を感じ取った。俺はその近寄って来る人物の方を見ると、見覚えのある人物だった。

「よ~、ロイドちゃん。久しぶりだにゃ~」

「この街で見かけなかったから、違う街に行ってるのかと思ってましたよ。ネルニャードさん」

 近寄って人物に対して俺がそう言うと、アリサ達が「知り合い?」と聞いて来た。そんなアリサ達に俺は軽く、ネルニャードさんについて教えてやった。

「この人は、ネルニャードと言って見ての通り猫人族の一応は冒険者という肩書を持ってる人だ。まあ、冒険者って言うよりも情報屋に近いけどな」

「よろしくにゃ」

 ネルニャードさんはアリサ達に笑顔でそう言うと、アリサ達も自分達の自己紹介を行った。それから、ネルニャードさんに話もあるので、一緒に宿へと戻って来てアリサ達が寝泊まりしている部屋へと集まった。

「それにしても、ロイドちゃん。大きくなったにゃ~、あの頃はあちしの腰くらいしか背が無かったのににゃ~」

「そりゃ、大きくもなりますよ。最後にネルニャードさんと会ったの5歳の頃ですよ」

「ネルニャードさん! ロイド君の小さな頃知ってるんですか!?」

「知ってるにゃ~、あの頃のロイドちゃんは本当に可愛かったにゃ~」

 ネルニャードさんが幼少期の頃の俺の事を話し始めると、アリサ達は興味深々に聞き始めた。俺は、そんなネルニャードさんが話している途中に割り込み「何か用があって、俺の所に来たんじゃないんですか?」と聞いた。

「そうだったにゃ! ロイドちゃん、クロの件について詳しく知りたいにゃ!」

「あぁ、やっぱりそれ耳にしましたか」

 ネルニャードさんが既に俺が王都のギルドで一部の冒険者に伝えた内容を知っていた事に、やっぱり噂好きだなと思いつつ、最初から最後まで全てネルニャードさんへと教えた。

「にゃ! クロム王がクロなのにゃ!?」

「そうですよ。疑うのであれば、クロム王の目の前で冒険者時代の名前を言ってみてください。反応しますよ」

「ロイドちゃんが嘘を言うはずないにゃ……しかしにゃ、まさかクロム王がクロだったにゃんて……」

 そう呟くと、ニヤッと表情を変えて「何て面白い内容にゃ!」と叫んだ。そして、メモ帳に俺が話した内容を書き留めると「うにゃ~、ロイドちゃんと会えて本当に良かったにゃ~」と喜んでいた。

「そう言えば、ロイドちゃん達は迷宮攻略をしていたのかにゃ?」

「はい、数日前にここの迷宮に来て250層まで攻略して帰還してきたんです」

「250? うにゃ、と言う事は探索済み階層を50層も伸ばしてきたんだにゃ、凄いにゃ!」

 250層と聞いたネルニャードさんは、驚いたように反応した。それから、どんな魔物や鉱石があったのか聞きたい様子だったので、皆の了解を得て全て話をした。普通は、迷宮や地理の情報は高く売れたりするので金銭のやり取りをしてから少量の情報を流すのがセオリーなのだが、俺もアリサ達もそんなノウハウも無いのでネルニャードさんに対して、どんな魔物・どんな植物・どんな迷宮だったのか全て話した。

「ありがとにゃ、ロイドちゃん達」

「良いですよ。俺達は情報を売れる力はありませんからね。ネルニャードさんが上手く使ってくれた方が良いですよ。それに、俺達は一旦迷宮都市から離れますし」

「んにゃ? まだ、先があるのに迷宮攻略を諦めるのかにゃ?」

「はい、ちょっと有用な情報を貰ったのでそっちに行こうと思いましてね」

 俺がそう言うと、ネルニャードさんは興味深々と言った感じに耳を立てたが「そちらは俺達に価値があるので教えられませんよ」と言うと、耳をシュンッと下げた。
 その後、ネルニャードさんと暫く話してから、宿の前まで見送りネルニャードさんが去って行くのを見届けた。

「ロイド君の小さかった頃の話、聞きたかったな~……」

 アリサ達はネルニャードさんから俺の昔話を聞けなかったのがショックだったのか、それから暫くはテンションが低かったが夕食時には戻っており、食事の後は明日からの予定を話し合った。
 
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