勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第二章 迷宮へ挑む

第25話

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 ダンジョンマスター、それは〝迷宮〟に必ず住まう迷宮ボスとは違う迷宮の主だと説明された。主に表のボスを迷宮ボスとすると、ダンジョンマスターは裏ボスという感じらしい。そして、裏ボスであるダンジョンマスターはその迷宮のあらゆる物事を操作していると説明された。

「操作してるって、どんな事をしてるんだ?」

「色々だよ。魔物を生成したり、宝箱を設置したり、鉱石や植物を生やしたりね。君達が迷宮に入りたいと思う様な事をしてるんだよ」

「……成程、それで迷宮の魔物が一定して現れていたのか」

「そうそう。まあ、私がそんな事をしてるのには理由があって迷宮の運営には魔力が必要で、君たちの様な冒険者を迷宮に誘い込み魔力を使ってもらいたいんだよ」

 リクからそう言われた俺は、ふと自分の頭の中でその理由について考え、ある答えにたどり着いた。

「俺達が使う魔力は、迷宮に吸収されているのか」

「ビンゴ! 流石ロイド君だね。理解が早くて助かるよ。今言った通り、迷宮では外からやってきた者達が使う魔力を吸収し、それを使って新たな魔物や宝、そして迷宮の拡張を行ったりしてるんだよ」

「……と言う事は、ここは良い立地なんだな」

「そうだね。まさか、迷宮の近くに都市を構えるなんて思いもしなかったよ。まあ、当時の私が迷宮に人を誘い込みたいが為に魔物は利益になりそうな魔物を選び、鉱石や植物を多く生やしていたおかげだね。あの頃の自分には今でも感謝してるよ」

 そう言ったリクに対して俺は「所で、リクはいつからこの世界に居るんだ?」と尋ねた。

「そうだね。いつからだろう? 最初の頃は、迷宮の運営に慣れる為に色んな事を研究していたりして時間を忘れていたけど、覚えている限りでは千年以上前からはこの世界に居るね」

「……見た目では分からんな」

「見た目は当時のままだよ。神からダンジョンマスターに選ばれた際に〝不老〟のスキルを渡されているから、当時から姿は変わってないよ。まあ、こっちに転移させてもらう時にちょこっと見た目をいじったけど、地球で暮らしていた時とあまり変わってないかな」

 コロコロとキャラが変わるリクは俺の言葉にそう返事を返した。

「それで、俺達をこんな所に呼んで結局何がしたかったんだ?」

「んっ? いや、あのまま行くと私の部屋にたどり着きそうな勢いだったから今の内に知り合って迷宮を壊されない様にしようと思ってね。ロイド君は色んな迷宮を行ったことがあるから知ってると思うけど、迷宮の心臓ともいえる〝コア〟を取られるとその迷宮もは死んじゃうんだよ」

 リクはそう言うと、また「パチンッ」と指を鳴らすと手元に紫色のオーブを出現させた。俺はそれには見覚えがあり、両親と旅をしている時、迷宮攻略の為に潜った迷宮の最下層のボスを討伐した後に開かれる門の奥にあるオーブと一緒の物だった。

「ロイド君もこれには見覚えがあるだろう?」

「ああ……と言う事は、知らず知らずの内に俺は何人ものダンジョンマスターを殺してたって事になるのか……」

「んっ? ああ、迷宮は死ぬけどダンジョンマスターは死なないよ? 一応、心臓と対にはなってるけど、ダンジョンマスターが死ぬのは魔力が完全に切れた時だから安心して、ロイド君に壊された迷宮にも私の知り合いが居てあの家族おかしい! って聞かされてたから、今回先に会いに来たんだよ」

 リクにそう言われた俺は、いつの間にか変な所でも噂が流れていた事に驚きつつ「ダンジョンマスター同士でも交流はあるんだな」と変な質問をした。

「狭い世界だからお互いに情報交換しつつ、この世界で遊んでるんだよ。まあ、偶にダンジョンマスターになった自分を神か何かと勘違いして、魔物を生成しまくって世界を征服しようと企むダンジョンマスターも居たけど、成功はしなかったね。結局、迷宮は冒険者にとって美味しい金策の場所だから、どんなに魔物をため込んでも枯れるまで狩る冒険者は居るからね」

「……それは、俺達にも言ってるのか?」

「そうだね。まさか1層から50層まで全ての魔物が狩りつくされるなんてこれまでなかったから、柄にも無くビクビクしてたよ」

 リクは笑いながらそう言った。それから、俺は迷宮について色々と聞いていると交代の時間帯になったので起きてきたアリサ達が場所が移動している事に驚いて俺の元へ走って来ると、リクの顔を見て「あっ!」と叫んだ。

「あれ? 加賀さん?」

「えっ、嘘!? 委員長何でこっちの世界に居るの!?」

 アリサはリクに向かってそう叫ぶと、後から出てきたミキやモモも驚いたようにリクを見ていた。
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