勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第一章 旅の始まり

第15話

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 式典から三日後、諸々の手続きも全て終わりメアさんが合わせたいと言った俺の家臣となる人達、そして今後フィルバハド領と交易をしてくれると言ってくれた商人達との顔合わせが終わり、やっとの事で旅に出る準備が全て終わった。
 当面の食料や移動手段としての馬車と馬は、王妃の治療としての報酬で用意して貰ったので直ぐにでも旅に出る事が出来る状態となっていた。

「……それで、もう一度言って貰えますか? ミリア姫さん?」

「えぇ、ですから私も一緒に旅に参加させてもらいます。お父様からの許可は既に取ってあります。それにアリサ達からも許可は取っているので外堀は完璧に抑えておりますよ」

「貴女は本当にクロム王の娘さんですね。……何故、旅に同行をしたいんですか?」

 まあ、予想は出来ていたのだが旅の出発前日の夜。クロム王に呼び出されたと思ったら、ミリア姫がクロム王の私室に居て〝旅に同行する〟と言って来た。

「ロイド様。最初に言っておきます。私は、ロイド様が欲しいのです。そのお力もそうですが、お父様にも見せていない未知の力にも惹かれております」

「……はぁ、どうせ俺が嫌だと言っても付いてくるんですよね? 無駄な足掻きはしませよ。その代わり、旅の道中で文句等言わないでくださいよ。旅の仲間として参加するのでしたら、一国の姫扱いをするつもりは無いので」

「そのつもりですよ。これでも、護身術や魔法の訓練は怠ったりしていませんので、アリサ達に比べたら戦力として見劣りしますがそこそこは戦えます」

 ミリア姫は、それはそれはいい笑顔でそう言った。それから、ミリア姫は「明日から、よろしくお願いします」と言って部屋を出て行き、部屋には俺とクロム王だけとなった。

「やってくれましたね」

「何の事だ? ミリアに関しては、自分から言い出したんだぞ? 私は介入しておらん。それに介入出来る余地を作っていたのはロイドだろう?」

「何処がですか?」

「アリサ達だよ。さっさと、3人だけと言っておけばミリアも諦めて遠くから眺めるだけだっただろうが、ロイドがアリサ達を待たせていると知って、それなら自分も行けると思っての今回の行動だ。ロイドが男として、決める所で決めないからこうなったんだ」

 クロム王はそう言うと、ニヤッと笑い「良かったなロイド。お前を慕う女性が増えて」と言って来た。

「……俺達の最初の旅の目的地は、隣国〝迷宮都市アリバ〟という事を知ってての挑発ですよね?」

「おい、ロイド。まさかだが、彼奴に言うのかッ!?」

「その反応、噂猫はまだ迷宮都市に居るんですね。覚悟しててくださいよ。あの人に喋れば、きっと大陸中にクロム王の伝説が行きわたりますよ。良かったですね~」

 そう言いながら部屋を出ると、部屋の中から「おい! ロイド待つんだ!」と声が聞こえてきたが、俺はそんな声は聞こえず部屋の扉を魔法で開けない様に固定して部屋に戻った。
 そして翌日、朝起きると何故か騒ぎになっており、どうしたのかと騒ぎの元へと行くとクロム王の私室前で私室の扉が開かないと騒ぎになっていたらしい。俺はそこで、昨夜結局開けれるようにし忘れていた事を思い出して、こっそりと魔法を解いて部屋の中に入るとシーツを被ってソファーに寝ているクロム王の姿がそこにあった。

「ロ、ロイド。さ、流石にやりすぎだろ……」

「あ~……すみません。魔法解くの忘れてました。テヘッ」

 柄にも無く舌を出して笑って見せると、クロム王は突っ込む気力もなく、それから俺達は食堂に移動した。食堂で朝食を食べた後、城で働く人達やクロム王達から見送られる形で俺達は城を出た。王都の外までは、城の兵士が付いてきてくれるので俺達は街の外にバレない様に荷物置きの所に乗っていた。

「そう言えば、馬車って運転できるか?」

「えっ? 私達は、馬には乗れるけど馬車は……」

「私も乗馬なら出来るのですが、馬車を使った事無いので……」

「俺も旅の時は父さん達がやってたから、使えない……」

 折角、クロム王が用意してくれた馬車が誰も使えない事を俺達は今更知って、そんな会話をしていると馬車を動かしている兵士さんから「それなら、奴隷を買ったらどうですか? 馬車の移動の他に荷物持ちとしても使えますよ」と教えてもらいお金にそんなに余裕がある訳では無いのだが、必要経費という事で俺達は王都を出る前に奴隷商へと行く事にした。
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