勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第一章 旅の始まり

第14話

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 それから挨拶が無事に終わり、貴族達が解散した後、俺はクロム王に私室へと来るように言われた。

「何ですか、式典も終わって挨拶周りも終わったんですから、もう用はない筈でしょ」

「そう、嫌な顔をするな、呼び出したのは今後ロイドの下で働く者を紹介する為だ。入って来るんだ」

 クロム王がそう言うと、クロム王の私室の出入り口とは別の扉から一人の女性が出てきた。その女性は、俺より少し小さいくらいの女性にしては身長が高く、髪は赤色で肩に付くかつかないくらいの髪型をしていた。

「初めましてロイド様。私は、メア・フォン・フォルドザードです」

「フォルドザード? ……もしかして、フォルドザード公爵様の娘ですか?」

「はい、フィルド・フォン・フォルドザードは私のお父様です」

「……公爵の娘が、成り上がりの貴族の下についても大丈夫なんですか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。それにこの申し出はお父様からですから大丈夫ですよ」

 メアさんからそう言われた俺は「何故?」と聞くと、ミラノ王妃様は実は元はフォルドザード家の者でフォルドさんの妹だと聞かされた。長年、苦しみ続けてきた病気を治してくれた恩人である俺に何か手を貸す事は出来ないのか考えた結果、勉学に秀でており領地経営の全てを父であるフォルドさんから教え込まれたメアさんを俺の元へと差し出すという事だったらしい。

「メアさんはそれでいいんですか?」

「はい、私は以前から父の様に領地を任せてもらいたく、領地経営の全てを学んできたのですが、私には兄も居ますし弟も居ます。実家に居たとしても、領地を任せてはもらえなかったでしょう。なので、今回の父からの提案は私としても凄く嬉しかったんです」

「そうなんですか……まあ、別に俺としても知識がある方がやってくれるなら有難いですけど……クロム王、これの裏に何かあったりするんですか?」

「私は毎度ロイドみたく悪知恵が働くわけでは無いぞ? 今回のはフォルドからの申し出を私としても良いと思ったから、許可しただけだ」

 俺がジト目をしながら聞くと、クロム王はそう答えた。それがどうやら本心の様だったので、俺は改めてメアさんと握手を交わして領地の事を頼みますとお願いした。それから、メアさんは「私の他にも領地に行く者が居ますので、近い内にご挨拶をしたいのでお時間が空いてる日がありましたら、教えて下さい」と言って部屋から出て行った。

「ロイド、良かったな、メアはこの国でも人望が広く、商人とも顔が広いから領地の事は全て任せても大丈夫だぞ」

「……それは良かったですよ。俺には領地経営なんて、全く無理ですからね。畑仕事くらいしか、これまでやった事ないので」

「んっ? ロイド、村では畑仕事をしていたのか? そんな強いのに?」

「村では、危険な事が少なかったので力を使う場面が無かったんですよ。自警団の人も居ましたからね。なので、俺は魔法を使って畑仕事をしていたんですよ。全属性が使えるので野菜に適した環境を作ってやって、一つ一つ丁寧に作った野菜を食べるのは結構好きでしたからね。村の全ての畑の水回りや土を皆の為と思ってやってましたから」

 俺がそう言うと、クロム王は「ふむ……」と顎に手をやり何やら考え始めた。

「ロイド以外には畑仕事をしてる者はいたのか?」

「そりゃ、村ですから居ますよ。ただ、俺の様に水や土の手入れは誰もしてなかったと思いますよ?」

「成程な、と言う事は暫くしたらその村は一気に生産力をなくすだろうな」

「えっ? 何でですか?」

 クロム王の言葉に俺はそう聞き返した。

「まず、ロイド。畑仕事をしてる者で魔法を使って、野菜一つ一つにあった環境を作るなんて奴はいない。それをやれる程の魔力があれば、冒険者になった方が良いからな」

「そうなんですか? 俺を村から追い出す時に、畑の事を言われましたけど「ロイドのやってる事何て俺等でも出来る!」とか言って追い出されましたよ?」

「そりゃ、外から見たら土をいじってるだけだから誰でも出来る様に見えるだろう。多分、近い内にロイドが居た村は今までのような野菜が取れずに混乱するだろうな」

「……まあ、俺を追い出した村ですから、その話が本当なら自業自得でしょうね」

 そう言った俺に対してクロム王は「確かにそうだな」と納得してくれた。

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