勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第一章 旅の始まり

第13話

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 クロム王の私室を出た俺は、その足で城の敷地内の外へと出てくると訓練の最中であるモモを発見した。この城の生活が始まって、モモは「体が動かせないのは嫌だ」と言って、数時間程の訓練を兵士と一緒にやっているみたいだ。しかし、モモは兵士との訓練が終わった後、こうして一人で訓練をしているので凄い人だなと最近感じてきている。

「んっ? ロイド。話し合いは終わったのか?」

「まあ、終わりましたよ。色々と文句は言われましたけど」

 そう言うと、モモは剣の構えを崩して「お疲れ様」と言ってくれた。それから、俺は借りてる部屋へと戻って来て明日の式典の為に覚えないと行けないセリフを頭に叩き込んでから眠る事にした。
 翌日、嫌な気分の中起き上がると外は俺の気持ちとは反対に快晴であった。

「ロイド様、起きていらっしゃいますか?」

「あぁ、起きてますよ。着付けですよね直ぐに行きます」

 起きてから数分後、部屋でゆっくりと考え事をしているとメイドが一人俺を呼びに来たので、俺は部屋を出てからメイドと一緒に移動し、移動した先で式典用の服に着替えさせられた。

「よくお似合いですよ。ロイド様」

「ありがとうございます」

 メイド達に褒められながら俺は部屋を移動して、待合室へと入った。待合室には大きな鏡が有ったので自分の今の服装を確認すると、白い紳士服に身を包んでいる自分が余りにも自分の中では違和感がありすぎて、益々気分が悪くなった俺は、鏡から離れた所に椅子を移動させて、時間が来るのを待つ事にした。
 そして、待合室に入って30分程が経った頃、扉の方から「ロイド様、準備が整いました」と報告され、俺は重い足取りで扉へと行き廊下へと出た。

「ロイド様、大丈夫ですか? 顔色が悪いようですけど?」

「あぁ、大丈夫ですよ。ただ、こういった事は初めてなので緊張してるんですよ」

 俺の顔色が悪くメイドから心配された俺はそう言って、王達が待つ部屋の前へと辿り着いた。俺は部屋の外で深呼吸をし、扉を開けて中へと入った。部屋の中には、大勢の貴族、重役を持つ者達が居り部屋の中央の段差を上がった所には、これ見よがしにキラキラとした感じのクロム王とミラノ王妃様が豪華な椅子に座っていた。

「ロイド・フィルバハド。不治の病と診断され苦しみ続けておられてミラノス王妃様の病を治した事を称え、新たに伯爵の爵位を授ける。これより、ロイド・フォン・フィルバハドと名乗り新たな貴族として、リクサムス王国に仕える事を誓うのであれば、この貴族だけが持つ事を許された剣を受け取りたまえ」

 クロム王の横に仕えていた大臣にそう言われた俺は、差し出されいた剣を受け取り、クロム王へと跪いた。それから、長々とクロム王から言われ式典は無事に終わった。式典の後、新しく貴族となった俺は既に居る貴族との挨拶があったが、俺の事をよく思っている貴族は普通に接してくれていたが、良く思っていない貴族は若干の嫌悪感を出しつつ挨拶だけ済ますとサッと何処かへと消えて行った。
 そんな、挨拶周りが終わり精神的にも肉体的にも疲れ掛かっていた俺は、テラスへと出て外の空気を吸っていた。

「おや、今夜の主役がこんな所に夜風に当たっていてもよいのですか?」

「人混みはどうにも合わないみたいでして、それに貴方こそこんな所に居ても良いのですか? フィルド・フォン・フォルドザード公爵様」

 テラスで夜風に当たっていると先程、クロム王の横で使えていた大臣の一人。フォルドザード公爵が俺の所にやって来た事に実感の驚きを抱きつつ質問をした。

「ふふ、私はロイド君に興味があるから来たんだよ。……君は、クロムの昔を知ってるみたいだしね」

「んっ? クロム王の事を呼び捨てって、公爵様はクロム王と親しい仲なんですか?」

「まあね。小さい頃から、私はいずれクロムの側近になる事が決まってたから、ずっと一緒だよ。だから、クロムがここを逃げ出して冒険者をやってた時の話を聞きたいと思って、ロイド君の所に来たんだよ。クロムは、どんな冒険者だったんだい?」

 公爵にそう聞かれた俺は、当時のクロム王の伝説をいくつも話した。公爵はクロム王の話を聞いて、お腹が痛いという程笑って聞いていた。そんな俺達の元に話の種でもあるクロム王がやって来ると、クロム王の顔を見た公爵は更に笑っていた。

「ロイド、お前まさかフィルに冒険者時代の事を話したのか?」

「はい、話しましたよ。聞きたいと言われましたので、上の立場の人から尋ねられたら答えるしかありませんからね」

「更に上の私が止めろと言ってるんだが?」

 クロム王の言葉に「それとこれは、話が違いますよ」と言うと、クロム王は溜息を吐き、未だ笑っているフィルザード公爵の頭に拳骨を落とし「笑うのをやめろ!」と怒っていた。
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