勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第一章 旅の始まり

第12話

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 王妃様の病を治療してから五日が経った。治療の翌日には目を覚ました王妃様はこれまで、悪魔のせいで食欲も抑えられていた事から目覚めて数時間は食欲が止まらずクロム王も心配していたが、摂取した料理は全て魔力へと還元されているので大丈夫だと伝えた。そして、五日経った今では、ミリア姫と一緒に庭で散歩が出来る程に元気を取り戻していた。

「それで、クロム王。もう一度言ってください、何て言いました?」

「だから、ロイド。お前を私の国の伯爵の爵位を与えると言ったんだ。既に大臣達と話してそう決まっている」

「何故、そうなるんですか? 俺は、ただお礼の品を渡したいと言われたから残っただけで、クロム王の家臣になるつもりは無いですよ」

「あぁ、だがなロイド。世間はそれは認めてくれないだろう。既にミラノの病気が治っている事は王都の住民は既に知っているし、時が経てば国外まで噂は広がるだろう。そして、その治した人物がロイドであることも既に知られている。そんなロイドに対して、お礼の品がたかだか金で済むと思うか?」

 クロム王は笑顔でそう言うと、続けて「無理だろう?」と言った。

「だから、ロイドに爵位を与える事で民衆にも他国にも王妃の病を治療した者に適した報酬を与えたとみせしめる事が出来る。それとも、ロイドはリクサムス王国が他国から〝礼も真面出来ない国〟だと思われても良いのかい?」

「あぁ、もう! 分かりましたよ。爵位を貰えばいいんでしょ、貰えば! ったく、最初からコレが狙いだったな……」

「いや、ミラノの病を治したのは本当に偶然だ。アレには私も、どうしようもないと諦めかけていたからな、治療してくれた事には心から感謝している」

「心から感謝しているんなら、俺が嫌がる事は止めてくれませんかね」

「それとこれとは別だな」

 俺の言葉にクロム王は笑顔でそう答えた。結局所、あの時お礼の品を渡すと言った時点でクロム王は俺を家臣に迎え入れようと考えていた。王妃の治療前なら、村から出てきたただの青年なので無理に家臣に引き入れる事は出来なかったが、王妃の不治の病を治したことで建前が出来、それを使って俺を家臣に迎え入れようと考えたみたいだ。

「貴族になっても、俺は旅をしますよ? 領地の統治何て、今の俺には出来ないので」

「あぁ、そこら辺の事は考えている。ただ、俺はロイドを私の国の一員だと他国に知らしめる事が出来るなら構わないんだよ。遅かれ早かれ、ロイド。お前は他国から狙われる」

「……そんなに俺って、必要に人材ですかね?」

「理解していないのか? まあ、確かに今のロイドを見た所で必要とされる事は無いだろうが、冒険者時代のロイドを知っている者が居たら、確実に狙われるぞ」

 クロム王は真顔で断言した。俺はそんなクロム王から見つめられ「はぁ~」とため息を吐いた。

「ったく、城に何て来なけりゃ良かったよ……」

「これも運命だと思って諦めるんだな、明日の式典にはちゃんと出るんだぞ」

「はいはい、分かりましたよ。国王様」

 既にクロム王に対しての敬う気持ちなど薄れ掛かっていた俺は、部屋を出る際にそう返事をしてクロム王の私室を退出した。そして、部屋を出た俺は城の廊下を歩いていると後ろからミリア姫から話しかけられた。

「ロイド様、明日の式典には出てもらえるんですか?」

「えぇ、出ますよ。嫌々ですけどね……」

「えっと……本当にごめんなさい。お父様が色々と無茶を言ったみたいで……」

「ミリア姫が謝罪する事ではないですから大丈夫ですよ。それにクロム王には、きちんと罰を与えるつもりですからね」

 俺はミリア姫に悪い顔をして言うと、ミリア姫は「ほ、程々にお願いしますね……」と困った様に言ったが、クロム王の知名度が上がるだけなので心配が無いですよとミリア姫に行った。それから、俺は王家に仕える礼儀作法を教える人から明日の式典の為の作法を夕食時までミッチリと教わった。

「ロイド君、明日は頑張ってね。私達も、式典は参加できるみたいだからロイド君の晴れ姿バッチリ見ておくね」

「ロイドさん、もし緊張しましたら言って下さい。精神を安定させる魔法もありますので」

「ロイド、明日が楽しみだな」

 夕食の後、アリサ達からそう言われた俺は「ありがとう」と言って食堂を出てクロム王の私室へとやって来た。

「……ロイド、やってくれたな」

「何がですか?」

「ギルドから連絡があったぞ、お前がお昼頃に来て〝暗黒の剣士クロ〟がクロム王だと、ギルド内で大きな声で言っていたと聞いたぞ」

「そうなんですか? まあ、でも大半の人間は信用してないと思いますよ。あっ、でも昔の俺を知っている冒険者が何人かいて、その人達は「マジか、仲間にも知らせてくるッ!」と言って王都を旅立って行きましたよ」

 俺がそう言うと、クロム王は「それ紅蓮の騎士連合のグラムだろうが……彼奴の仲間って事は……」と言って頭を抱えた。

「良かったですね。グラムさんが王都に居て、各地に散らばっている今では有名な冒険者達に暗黒の騎士クロさんの正体がクロム王だと知らせられますね」

「……まあ、仕方ない。ロイド、お前はもう後に戻れない事をしたんだ。明日の式典では覚悟をしておけよ」

「これ以上、俺に何をさせるというんですか、それに覚悟をしておけというのはこっちのセリフですよ。暗黒の騎士クロの伝説を国中に広めてやりますからね。一時の間、一緒に旅をしていた仲間ですから色々と知ってますからね」

 俺とクロム王は互いに睨み合いながらそう言って、俺は部屋を退出した。

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