勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

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第一章 旅の始まり

第11話

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 昼食を食べ始めて少したった頃、食堂に一人の女性が入って来た。その女性に対してアリサ達が「ミラノ王妃様!」と驚いて近寄って行った。

「お久しぶりですね。アリサ、ミキ、モモ」

「お久しぶりです。ミラノさん、具合は大丈夫なんですか?」

「ええ、今日は調子が良いから大丈夫よ。……貴方がアリサ達が一目惚れしたロイド君かしら?」

 アリサ達が王妃様と呼んだその人に俺の方を向いてそう言ったので、俺は立ち上がり挨拶をした。

「初めまして、王妃様。ロイド・フィルバハドと申します」

「あらあら、礼儀正しい子ですね。どうも、初めまして私はリクサムス王国王妃ミラノス・フォン・リクサムス。親しい人からはミラノと呼ばれてますから、ロイド君もミラノと呼んでくださいませ」

 ミラノス王妃様は、笑顔でそう言うとミリアと同じく俺の全身を見据えると「アリサ、ミキ、モモ。逃したら行けませんよ」と助言をしていた。その助言に対して、アリサ達は「はい、勿論です」と力強く答えていた。
 ミラノス王妃、改めミラノ王妃様との挨拶が終わった後、ミラノ王妃様も一緒に昼食をとる事になった。その席で、ミラノ王妃様は昔から病弱で居て現在も日によっては部屋から出れない程であると聞かされた。

「……あの、もし良かったらですけど、俺見てみましょうか? 一応、病気とかそういったのに詳しいので」

「んっ? ああ、そう言えばロイドは一時期、医者として金を稼いでいた時もあったな……」

 俺の言葉にクロム王がそう答えると、アリサから「ロイド君って何でも出来るのね」と尊敬の眼差しで見られた。

「でも、私の病気は王国一の医者でも分からないと言ってましたのよ?」

「ミラノ、見てもらうだけでも良いと思う。私はロイドの事を以前から知っているが、此奴は無理だと思う事は口に出さないからな」

 クロム王がそう言うと、ミラノ王妃様は「あなたがそう言うなら……」と言って食事の後、ミラノ王妃様を見る事になった。まあ、しかし既に俺はこの時点でミラノ王妃様の病気が何かであるか気付いていた。
 俺の固有能力である〝魔導の魔眼〟の能力は魔力を見る事が出来、他者の魔力の流れを見る事が出来る。そして、この魔眼の能力を使いミラノ王妃の体を調べると腹部に魔力の塊を見つけた。俺は、その現象に見覚えがあり対処が出来ると思い先程、進言をした。

「ロイド様、お母様を治すことは出来るんですか?」

 クロム王とミラノ王妃様のやり取りを見ていたミリア姫が心配そうに俺に問いかけてきた。俺はそんなミリア姫に「大丈夫ですよ。治します」と断言した。それから、俺とクロム王、そしてミラノ王妃様は食事が終わりミラノ王妃様の部屋へと移動した。

「それで、ロイド君。私はどうしたらいいでしょうか?」

「そうですね。ドアの方を見る様にして立っていて下さい」

「えっ? 立っておくんですか?」

「はい、治療は絶対に動いてはいけませんよ」

 俺はミラノ王妃様にそう言って、クロム王に耳打ちをする。

「クロム王、ミラノ王妃様を守って下さいね」

「んっ? ああ、分かった」

 俺の言葉にクロム王は何かを察知して警戒心を強め、ミラノ王妃様の横に立った。俺は、そんな二人の前に立ち魔眼で見た。魔力の塊があるピンポイントの場所へ聖属性の魔力を手に纏った状態で押す動作を行った。

「ギャッ!」

 すると、魔力の塊はミラノ王妃様の体内から吹き飛ばされ部屋の中央へと出てきた。魔力の塊の正体、それは魔鬼という悪魔の一種で寄生した人物の魔力を吸い取り成長する悪魔である。

「死ね」

「ギャ――」

 部屋の中央に現れた悪魔を俺は、魔法で消滅させた。そして、悪魔が体内から出た事により体内の魔力に変動が起きミラノ王妃様は気絶した。幸いな事にクロム王がミラノ王妃様をキャッチして、そのままベッドに寝かせた。

「まさか、悪魔に寄生されていたとはな……」

「俺は以前、悪魔に寄生されてる人を見たことがあったので直ぐに発見出来ましたけど、高名な医者であったとしてもアレは見抜くことが難しいです」

「そうだろうな……いや、本当にロイドが良かったよ。ありがとう」

 クロム王は俺に対して頭を下げ、そう言った。それから、部屋の中にミリア姫達を入れ、事の詳細を話すとミリア姫から「お母様は、もう大丈夫なんですか?」と聞かれた。

「大丈夫です。後は、体内の魔力が元に戻れば体調も良くなりますし、悪魔が衝く前より元気になられると思いますよ」

「ロイド様、本当にありがとうございます」

 ミリア姫はクロム王と同じく俺に対して頭を下げると、次に「お礼をしたいのですが、何か出来る事はありませんか?」と聞かれた。俺はそのミリア姫からの言葉に対して、旅に必要な物が欲しいと言うとクロム王が「それだったら、馬車と馬。それと旅の間に仕えそうな魔具を渡そう」と言ってくれた。
 
「そんなに貰って大丈夫なんですか?」

「いや、ロイド。大丈夫も何も、お前は一国の王妃の病気を治したんだぞ? こんなんじゃ、到底恩は返されんよ。ロイド、お礼の品の準備に少し掛かるからその間は城で暮らしておくと良い」

 クロム王はそう言うと、アリサ達にも「アリサ達もそれでいいか?」と聞くと、アリサ達は俺が良いならと言った。俺は流石にお礼を受け取らないのは失礼かと思いその提案に乗った。しかし、俺はこの提案に乗った事を後に後悔した。
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