10 / 66
第一章 旅の始まり
第10話
しおりを挟むアリサ達と今後の話し合いが終わり、それから暫く部屋でゆっくりしていると、クロム王から俺だけが呼ばれてクロム王の私室へとやって来た。
「俺だけ呼び出して、どうしたんですか?」
「あぁ、ロイドには話しておこうと思ってな……何故、魔王が突然人間国へと進軍してきたか知ってるか?」
「知りませんよ。というか、魔王が何故、今頃になって人間国へ進軍してくるのか意味が分かりませんでした。タイミング的に勇者召喚とバッチリだったので、この国が魔王軍の領地を奪い取って、それの逆鱗に触れて魔王が進軍してきたんじゃないかなと思ってました」
俺がそう言うと、クロム王は「流石にそこまで私は馬鹿な王では無いよ」と苦笑して言った。
「まあ、でもロイドの予想は半分あってるよ。ロイドは貴族のシステムを知っているか?」
クロム王にそう聞かれた俺は「はい」と返事をする。
貴族のシステムとは、爵位の事である。上は公爵から下は男爵まで5つに分かれており、公爵ともなれば国の運営に携わる者達である。逆に子爵や男爵は、貴族としては最下層組であり国の運営に携わる事も無ければ領地も小さな村程度しかもらえない。しかし、そんな爵位だが武勲や国の為に何かを起こなえば王から認められて爵位が上がる事がある。
昔は、戦争が活発であり当時の男爵だったものはこぞって戦争に参加し、一代で侯爵まで登りつめた貴族も居る。
「あの、それを聞くって事は、もしかしてですけど……」
「あぁ、そのもしかしてだ。今回の魔王進軍、それは我が国の者が魔族領に向かい戦争を引き起こしたんだ」
「なっ!」
俺はクロム王から告げられた言葉に絶句してしまった。魔族との戦争、それは人間同士で戦うよりも損害が互いに出てしまうので魔族同盟と数代前の人間国同盟が盟約を結んだのだ。
「……でも、それが分かっているんなら犯人を捕まえて話し合いを行えばよかったんじゃないですか? 蜘蛛の魔王を討伐してしまった以上、他の魔王も黙っていないと思いますよ?」
「ああ、私も直ぐに犯人を捕まえて蜘蛛の魔王と話し合いを行おうとした。しかしだ、ここで問題になったのが犯人が一人では無かったのだ……」
クロム王はそう言うと、紙を数枚机の引き出しから取り出して俺に渡して来た。
「それは、我が国の中で蜘蛛の魔王との戦争を引き起こした者達であるが、全て一家諸共魔族領に向かい現在国に帰って来ていない」
「……捨て身で戦争を引き起こしたんですか?」
「多分そうだろう。そこで、ふと感じるのが、何故捨て身になってでも戦争を引き起こしたのか? だ。私は、信頼できる者達と数日に渡り話し合いをし、ある答えにたどり着いた」
クロム王はそこで一拍置き、続けてこう言った。
「裏で手を引いている者が居ると」
「……それは、あくまで仮設ですか? それとも、何かの情報を元にですか?」
「半分半分だな、戦争が起こる数年前からこの資料に乗っている者達は他国の者とよく取引をしている所を目撃されていたみたいなんだ」
クロム王の言葉に俺は目を閉じ、頭の中で色々と整理をして「成程」と呟いた。
「それで、俺にそれを話したって事は、俺が旅の道中で怪しいと思った者を調べて欲しいって事ですか?」
「そうだね。私としては、戦争の原因を作った者を捕らえて何故あのような事をしたのか問い詰めたいんだ」
「……分かりました。ですが、それをする為の旅では無いので、見つけられなくても文句は言わないでくださいよ。正規の依頼でもないので」
「あぁ、正規の依頼って流石にこれは極秘にしておかないと、国中がパニックになるからね」
クロム王からそう言われた俺は「出来るだけ、周りに目は配って旅をしますよ」と言った。それから、俺はクロム王から戦争の原因を作った貴族と面会をしていた人物であろう他国の者の似顔絵と特徴が書かれた紙を受け取り、部屋を退出した。
その後、昼食の時間となり城の食堂に行くとクロム王の娘でありこの国の第一王女のミリア・フォン・リクサムスと会い、互いに初対面だったので自己紹介を互いに行った。
「ふむふむ、成程ですね。アリサ達が好きになるのも分かりますよ。ロイド様、結構お強い方ですよね?」
「まあ、それなりにですけどね。ミリア姫は、他者の能力を見る事が出来るんですか?」
「いえ、そんな高度な事は出来ませんよ。ただ、私は人の力を見抜くのに長けた目を持っていますので……アリサ達も良い人を見つけましたわね」
ミリア姫にそう言われたアリサ達は「でしょ、ロイド君って……」と俺の事をミリアに嬉しそうに話をしだした。それから、昼食をメイドに運んできてもらい俺達は昼食をご馳走になった。
46
お気に入りに追加
4,604
あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる