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第一章 旅の始まり
第3話
しおりを挟む茂みから出てきた勇者とルネは俺達を見つけると「アリサ、ミキ、モモ。何でお前らがそいつと一緒にいるんだ?」と言いながら近づいて来た。
「何偉そうに私達の名前を呼んでるのよ? さっき、話したでしょ魔王討伐も終わって、あんたと一緒に居る意味は無くなったからパーティーは解散だって」
「ふっ、そんな事言ってルネと一緒になる俺の気を引こうとしたんだろ? 大丈夫だって、俺はアリサ達もちゃんと優しくしてやるからな」
勇者はそう言って、アリサの肩に手を置こうとしたがその手をアリサは払いのけて俺の方へ近づいて来た。アリサと一緒にミキとモモも俺の後ろへと隠れるとアリサが勇者に向かって心底嫌そうな顔をして勇者に対しての気持ちを伝えた。
「ごめんなさいね。私達、あんたよりロイド君のが好みなのよ。あんただって、その雌猫と一緒になるんだからいいでしょ? もう金輪際関わらないで頂戴」
「なッ! 俺より、その薄汚い農民風情が良いのか!?」
「ハァ? 何処が薄汚い農民なのよ? あんたの方こそ、そんな面で決めるような雌猫の何処が良いのよ!」
アリサは俺の悪口を言った勇者に対してそう言うと、勇者は激高し「ルネの悪口を言うなッ!」と自分の事は棚に上げてその様に言うと、攻撃魔法を発動させアリサに向かって魔法を放った。
俺は、流石にこんな至近距離から魔法が当たるとアリサ達でも危ないと思い咄嗟にアリサ達の前に入り、勇者の魔法を弾き飛ばした。
俺に守られたアリサは頬を赤く染めて「ありがとうロイド君」とお礼を言った。そんなアリサに対してミキとモモが「良いな~」と羨ましそうに見ていた。
「なっ、俺の魔法を弾き飛ばしただと?」
「……いい加減にしろよ。クソ勇者。仲間との喧嘩に魔法何て使ってんじゃねえよ」
村での出来事から既に勇者に対しての〝敬う〟気持など消え去っていた俺は、先程からの観察で俺より弱いと判断し、挑発する言葉を放った。
「あぁん? 俺の魔法を弾き飛ばしたくらいで何良い気になってんだ農民風情が? こちとら、魔王を討伐してきた勇者様だぞ?」
「ハッ、その農民風情に弾き飛ばされるような魔法しか使えない勇者様が魔王を討伐? そりゃ、仲間が強かったおかげだろ?」
俺のその言葉に勇者は「ふざけるのも大概にしろよ?」と言いながら、腰に差していた剣を抜いた。その剣は、俺が村や街で見かけた剣とは違い輝かしい剣をしていた。所謂あれば勇者にしか扱えないと言われている〝聖剣〟だろう。
「お~お~、実力に合わない剣を持たせて貰って良かったですね。仲間と装備のおかげで魔王を討伐出来て、いや~それで勇者を名乗ってられるなんて俺には無理ですよ~」
「ちょ、ロイド君。流石に聖剣を抜いた彼奴を余り煽らない方が……」
剣を抜いた勇者に対しても俺の態度が変わらないのに対して、アリサが心配した様子で俺に声を掛けた。そんなアリサを見て勇者は「ハッ、今更もうおせぇよ」と言って俺に向かって突っ込んできた。
俺は、心配しているアレサ達に「大丈夫だよ」と言い。突っ込んできた勇者へと正面から接近し、剣をギリギリで避けた俺は、聖剣の持ち手部分を蹴り上げ勇者から剣を奪い取った。完全に舐めて掛かって来ていた勇者は、剣を取られた事に驚き呆然とし、そんな勇者の腹に向かって回し蹴りを叩き込み吹っ飛ばした。
「ガハッ!」
「「「「えっ……」」」」
吹っ飛ばされた勇者は、木に背中から当たり苦しそうな声を上げた。その一連の動作を見ていたアリサ、ミキ、モモ、そしてルネは勇者と俺を交互に見て驚きを隠せていなかった。
「ちょ、ちょっとロイド! 何で、あんたがルイ様より強いのよ!」
「……強いんじゃなくて、そこのクソ勇者が弱いだけだろ。それにルネ。君にはもう関係ない話だろ?」
俺はそう言って、俺の後ろに立っていたアリサ達に対して「さっきの話だけど、もう色々と考えるのが嫌だから、取りあえず一緒に旅に出てくれる?」と尋ねると、三人はコクコクと頷いてくれた。
三人の了承が取れた俺は、勇者から奪い取った聖剣を手に取ると勇者の所まで持って行った。そして、未だ背中の痛みから立ち上がれない勇者に対して俺は腰を落として目線を合わせた。
「ルネの件は分かったよ。俺はもうお前とルネ、それに村に関わらない。だけど、逆にお前等が俺に関わってきたら、今度こそ容赦はしないからな? そこの所よーく考えて行動するんだぞ?」
勇者に対して強い殺気を放ちながらそう伝えると、勇者は俺に対してに恐怖心を抱き、魔王を討伐した勇者でありながら涙を流し、失禁しながら「わ、分かったよ。金輪際、お前にもアリサ達にも関わらないから、もう許して下さい」と謝罪をされた。
そんな勇者を俺は、一瞥してその場から去って行った。去り際にルネが俺に何か言っていた様だが、俺にはもう彼女の言葉を聞きたくないという思いが有り俺はルネ、勇者、そして村との縁を切ったのであった。
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