勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花

文字の大きさ
上 下
2 / 66
第一章 旅の始まり

第2話

しおりを挟む
 場所は変わらず、しかし話を聞くという事なので魔法で作った椅子に俺達は座った。

「それで、話って何ですか?」

「ええ、まずは私達の仲間でもあった勇者の行い。それを謝罪させてください。本当にごめんなさい」

「ごめんなさい。ロイド君」

「すまない」

 アリサは本当に申し訳なさそうに謝罪をすると、他二人も俺に対して頭を下げた。そんな3人に対して俺は、この人達が悪い訳では無いと思い「頭を上げてください。貴女方が悪いわけでは無いので」と言った。

「ありがとうございます。それで、次が本題なのですが……ロイド君。貴方は、これからどうするおつもりなのでしょうか?」

「……そうですね。まあ、貴女方に言うべきなのか分かりませんが、村から追い出されましたし、何処か遠くに行こうと思います。これでも、多少腕には自信がありますので」

「そうですか……それでしたら私達と一緒に旅に出ませんか?」

 アリサは先程までの申し訳なさそうな雰囲気から一変して、笑顔でそう提案をした。その提案に対して、ミキは「ちょっと、アリサちゃん。急に言ったらロイド君が混乱するでしょ」と待ったを掛けた。

「ロイドさん、ごめんなさい。アリサが唐突に言っちゃって」

「い、いえ」

「アリサちゃん、まずは説明をしないといけないわよ。私達はロイドさんの想い人を奪った勇者の仲間ってまだ思われてるんだから」

「あっ、そっか!」

 ミキの言葉にアリサはそう反応をする。そして、俺はここで先程から不思議に思っていた事についてアリサ達に尋ねた。

「先程から〝仲間でもあった〟や〝仲間ってまだ思われてる〟って既に貴女方が勇者の仲間じゃないみたいな言い方してますけど、それってどういうことですか?」

「それについて、今から説明します。まず、私達はこの世界とは別の世界。所謂、異世界から来たという事は知ってますか?」

 ミキの言葉に俺は「はい」と答える。
 2年程前に俺達が属す国。〝リクサムス王国〟が異世界から勇者を召喚したと国中、世界中に大体的に知らせた事は今でも覚えている。しかし、魔王は存在しているが戦争等ここ数百年行われていない。
 それなのに何で勇者何て召喚したのか疑問に思われていたが、それと同時期に〝蜘蛛の魔王軍〟がリクサムス王国に攻めてきた。結果として、2年間の〝蜘蛛の魔王軍〟とリクサムス王国は戦争が起こり丁度良く召喚した勇者達によって魔王を討伐したのである。

「私達、3人は元の世界でも仲が良くいつも一緒にいたのですが件の勇者とは同じ学び舎の同じ部屋で勉強を共にする程度の間柄でした。まあ、先程からの勇者への態度から察しが付きますが私達は勇者を嫌っております。ですが、この世界では魔王が進軍してきており助けを待つ人が居ました。なので、私達は2年間我慢をして勇者と旅に出て魔王を打ち取って来たのです」

「……勇者の事が嫌いって、それは勇者は知ってるのですか?」

「知りませんよ。だって言ってませんもの、多分彼は私達が好意を寄せていると思っているんでしょうね。……本当にクズな人間です」

「ッ!」

 ミキの最後の言葉にはガチの殺気が感じ取り、一瞬驚く直ぐにミキは殺気を沈め「すみません。取り乱しました」と謝罪をした。それから、アリサとモモからも同じように勇者に対しての文句を聞かされ、本当にこの三人は勇者の事が嫌いなんだと分かった。

「それで、そんな勇者が嫌いな貴女方は何故この様な話を俺にしたんですか?」

「ロイドさん、それは最初にも言いました通り、私達は貴方と共に旅に出たいからというのもあるのですが……私達は、三人ともロイドさんに一目惚れしたんです」

「へっ?」

 ミキの思いもよらぬ告白に俺は情けないような声を上げた。そんな俺に対してミキは「この気持ちは本当です」と真顔で告げられた。その言葉に俺は違和感を覚える。俺と彼女達が出会ったのは、たった一週間前である。そして、ただの村人でもあった俺は彼女達とは接点が全くない。

「えっと……俺と貴女方が会ったのって、一週間程前じゃないですか? その間、全く話してませんでしたよね?」

「ええ、ロイドさんには婚約者が居ると村の人から聞きまして一歩引いておりました。しかし、先程その婚約者は勇者に鞍替えしました。なので、私達はロイドさんの元へ出てきたんです」

「え~っと……」

 ミキのその真っすぐな瞳で告げられた言葉に俺は動揺していると、アリサとモモも俺に寄って来て「この気持ちは本当です」とミキ同様に真っすぐな瞳で俺を見つめてきた。

「ちょ、ちょっと待ってください! 俺、貴女達の事を勇者の仲間って程度しか知らないんで、そんな事を言われても困ります!」

「ええ、分かっています。こちらが一方的に好意を寄せたとしても、ロイドさんが困ってしまうのは分かります。なので、私達の事を知ってもらう為にも一緒に旅に出たいと最初に申したのです」

「ロイド君、私達勇者の仲間だったからそれなりに強いから旅のお供には最適だよ?」

「それにこっちには、異世界の知識を持ってる3人が居るんだ。今後の生活は私達に任せてもらっても構わないからな」

 ミキ、アリサ、モモは動揺する俺に対してそう畳みかけてきた。その時、俺達の話し合いをしている場に人が近づいてくる気配を感じ取りそちらの方を見ると勇者と、その横にルネが腕に抱き着いた状態で出てきた。





しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...