35 / 97
3巻
3-3
しおりを挟む竜王は嬉しそうに告げると、俺に背を向ける。そして飲み食いしているリオン爺ちゃんを見つけ、爺ちゃんの首根っこを掴んで何処かへ消えていった。
ふ~……マジで威圧やべぇだろ、竜王様!
周りに威圧がいかないよう配慮してくれてたみたいだけど、俺だけに威力を与えるよう弱めてあれってヤバすぎる!
「はぁ……強くなったと思ってたけど、まだまだ上には上がいるのか。というか、あれに勝負を挑んでる爺ちゃんは何者なんだよ。能力値の差もあるだろうに……」
それから俺は挨拶回りを終えて気疲れしてしまい、アリスのもとに逃げた。優しく迎えてくれたアリスと一緒に祭りを見て回る。
「アキト君、あっちも見ていい?」
「うん、いいよ。アリスが好きな所を見て回ろ」
俺は運営側の人間だし、祭りの出し物を全て把握している。だから、アリスを案内するようにして、彼女が見たい物、食べたい物の屋台を中心に巡っていった。というか、そのほうが俺も満足できるしね。
ベンチでクラーケンのイカ焼きを食べていると、楽しそうな雰囲気に惹かれたのか、どこからともなく俺の従魔であるスライムのライムが現れて、「ぴっ!」と言いながら頭の上に乗ってきた。
更には姉さんと兄さん、祭りに来てくれていたクラスメイトのルークとリクも合流して、皆で祭りを楽しんだ。
こうして復興祭は大成功に終わったのだった。
第4話 四年の月日
俺が異世界に転生してから、十年の歳月が経った。
そう、いきなりだが、俺は十歳になっている。
五年前までは戦争だなんだと忙しい日々を送っていた気がするが、ここ数年は落ち着いた日々を過ごしている。最近は卒業式の練習が多い。学園生活も終わりが近づいているのが感じられて、少し寂しい気持ちだな。
「アキト君、予定が空いてるんなら、いつものメンバーで卒業旅行に行かない?」
卒業式の練習後、帰ろうとしているとルークに誘われた。
学園に入学して友人第一号になったルークとは、結局五年間同じクラスだった。ちなみに姉さん、アリス、リクとは今は別クラスになっている。姉さんとアリスが、俺とずっと同じクラスのルークに文句を言って、彼を困らせた事もあったっけ。
「卒業旅行か……いいね。俺は賛成だよ」
「良かった~。アキト君いつも忙しそうにしてるから、断られるかと思ってたんだ」
ルークは俺の返事に嬉しそうな顔を見せる。
「いやいや、友人と旅行に行くとなったら予定は合わせるよ。姉さん達にもこの話はしたの?」
「うん。後はアキト君だけだったんだ。アミリスさんとアリスちゃん、リク君は、アキト君の予定に合わせてくれるって」
ルークがそう言ったところで、タイミング良く、別クラスのアリスとアミリス姉さん、リクが教室にやって来た。
ちなみに、このメンバー以外にも俺はたくさんの友人を作る事ができた。なんだかんだ学園生活を楽しむ事ができたなあ。
アミリス姉さんが早速尋ねてくる。
「アキトちゃん、時間は作れそうなの?」
「うん、姉さん達との旅行は是非行きたいし、絶対に日程を調整するよ」
俺が言うと、アミリス姉さんとアリスは嬉しそうに笑った。リクも俺の返事を聞いて「皆で行けそうで良かったよ」と笑みを浮かべる。
今日は卒業式の練習でもう遅いので、具体的な旅行先などは後々話し合うとして、それぞれ帰宅した。俺は姉さんと一緒に家に帰った。
自分の部屋に入るなり、突然声をかけられる。
「遅かったな、アキト」
そこにいたのはレオンだった。
「来てたのか。すまんな、今日は卒業式の練習で遅くなったんだよ」
「あ~、もうそんな時期なのか?」
「そうだよ。ところで何か用事か?」
すると、レオンは懐から封筒を一つ取り出した。
俺はそれを受け取り、中身を確認する。竜王からの手紙で、「そろそろ暇な時期になるだろ? 試合するぞ」という内容だった。
「成程ね。タイミングを見計らって連絡してきたのか……もうこれ以上、先延ばしは無理そうだな……」
「そうみたいだな。諦めて死んでくるんだな」
「……俺が竜王と戦う前に、レオンでウォーミングアップさせるぞ?」
「やなこった」
四年前、クローウェン領の復興祭で竜王と初めて会ってから何度か試合を申し込まれていたが、忙しかったので断っていた。だが、それも限界のようだ。
「みんなには悪いけど、ちょうど卒業旅行をしようって話になってたし、行き先は竜人国にしてもらおうかな。竜王と対戦なんて、思い出としてはインパクトあるだろうし」
「そうだな、インパクトしかないだろうよ」
落ち込む俺を見て、レオンはニタニタと笑っている。
マジでこいつから先にやらせてやろうかな。
「まあいいや。とりあえず竜王には、もう少し待っててもらうように連絡しといてくれ」
俺がそう指示すると、レオンは「了解、じゃあな」と言って転移魔法でいなくなった。
俺は制服から着替えると、ソファーに座る。そして改めて自分の体を観察する。
「しかしエルフって凄いよな~。十歳でこれって……」
四年前の時点でも六歳にしては成長が早かった。十歳になった今は更に体格が良くなっている。
エルフの血が流れていると、長寿かつ成長が早いという特徴がある。俺の今の身長はかなり伸び、顔立ちは大人びると同時に整っている。髪型は爺ちゃんや父さんと同じように、金髪を少し伸ばして切り揃えており、いい感じに美少年な雰囲気だ。
「姉さんも一気に身長伸びてたし、俺より薄いっていってもエルフの血は凄いんだな」
そんなふうに自分の体の作りに感心していると、メイドから夕食の準備ができたと呼ばれた。
食堂に着き、既に家族が待つ席に俺も着く。
「エリク兄さん、帰ってきてたんだ」
俺の席の横に座る兄さんにそう声をかける。ちなみに兄さんも成長し、美少年から美青年へ進化を遂げていた。
「うん、さっき帰ってきたんだよ。ほら、アキトにもお土産あげるよ」
エリク兄さんからお土産を受け取ると、俺はお礼を言って異空間へ入れる。
兄さんは学園を卒業し、今では父さんの補佐をしつつ王様の仕事を勉強している。兄さんは物覚えが良い。以前は「アキトが王様をやればいい」なんて言っていた父さんも、ここ数年はそういう事を言わなくなった。
俺は兄さんにふわっとした話題を振る。
「兄さん、最近の調子はどう?」
「う~ん、ボチボチかな?」
「そっか。まあ兄さんの後ろには俺がいるから、いつでも頼ってくれていいからね。一応、俺は家臣として、この国に仕えてるって事になってるし」
「うん。ありがとね、アキト」
兄さんはいつもの笑顔を見せて、俺の頭を撫でた。
兄弟の仲が悪くなるかもと思っていた時期もあったが、そんな事は全く起きなかったな。逆に、この数年で前よりも更に仲が良くなった。男兄弟ゆえに姉さんが立ち入れない部分もあって、嫉妬される事さえある。
食事を済ませ、風呂に入った俺は、自室に戻るとベッドに横になった。
もうすぐ学園も卒業――そう思うと感慨深いものがあり、この五年間の思い出がよみがえってくる。入学当初、友人ができなくて苦労したり、学園祭に出場できなくて悲しんだり、色んな事があったな。
「ってか、転生してまだ十年か。でも学生終了ってあっという間だな……って、それはアリスも一緒か」
俺と一緒に学園に通うために、転生者でもないのに持ち前の努力で俺についてきた可愛い婚約者。最近じゃ成長して綺麗になってきた事で男子から人気が出ていると影から聞いた。
「アキト様、今よろしいでしょうか?」
「んっ? どうした?」
突然、影のリーダーであるディルムが現れたので、俺は体を起こした。
ディルムがこんな夜更けに来るなんて、緊急事態か?
「以前から見張っていたのですが、遂に情報を掴む事ができました!」
その報告に、ビクッと俺の体が反応する。
ディルムには、数ヵ月前からとある人物をずっとマークさせていた。それは――元影のトップであり、俺の執事でもあるシャルルだ。シャルルがここ最近、俺や奴隷達に隠れて何かやっているのを察知した俺は、ディルムにシャルルを見張るように命じていたんだ。
「ッ! でかした! あの馬鹿、何度問いつめても『そんな事は知りません』と言ってごまかしていたからな。それで一体何をしていたんだ?」
「はい、こちらです」
ディルムは異空間から、シャルルが隠していた物を取り出した。
「……俺の像?」
「はい。一番小さく持ち運びやすい物を持ってきたのですが、これと同じようなアキト様の像が大量に……」
「やめろ、それ以上は言うな!」
嫌な予感がした俺は、ディルムの言葉を遮った。
もしこれが普通の奴隷達のした事だったならば、別に咎めたりはしない。だがあの馬鹿に限っては、絶対に阻止しなければいけない。以前もこれと似たような事をしていて、一度やめさせたのだが、また隠れてやっていたのか。
「ディルム、とりあえずご苦労だった。もう普通の仕事に戻っていいぞ。後は俺が始末をつけておくから」
「はい、分かりました。ですが、今回報告したのが私だとはシャルルに言わないでください。後で私の所に来そうなので……」
「大丈夫だ。俺が見張っていて気付いた事にする。それに奴が詮索してこようとしたら、酷いお仕置きをするつもりだからな」
ディルムは安心したように部屋から出ていった。
あの馬鹿、こんな像を作って一体何をしようとしていたんだ?
「これが持ち運びやすいって事は、これよりも大きいのがあるんだよな……もしかして奴、俺の像を教会とかに置くつもりなんじゃ……」
俺はふと、シャルルが最近、領内で教会の整備をやっていると言っていたのを思い出した。
つまり、整備に紛れて、俺の像を置くつもりだったんじゃないか――そう考えるとブルッと体が震えた。
「マジでディルムが見つけてくれて良かったな……」
明日キッチリとシャルルに話をつけなければいけないと決意し、俺はそのまま眠りについた。
翌日、学園が終わってから、シャルルと話をした。
最初は口を割らなかったシャルルに対し、俺はディルムが持ってきた像を見せ、像が隠してある部屋へ移動した。この部屋は更なる調査で判明していた。
こうして俺の予想通り、シャルルが教会の整備に紛れて、俺の像を置くつもりだった事が暴かれた。
「どっちがいい? 辛いのと、魔力が少なくなるの?」
俺がお仕置き用メニューを選ぶよう迫ると、シャルルはフルフルと首を横に振った。
全力でお仕置きを嫌がるシャルルだったが、俺はこれ以上馬鹿な真似をしないよう、キツい調教をする事にした。
「両方だな」
「イヤァァァァ!!」
シャルルの悲鳴が城中に響く。
しかし、シャルルを助けに来る者はいなかった。
◇ ◇ ◇
シャルルの調教から数日後のある日。
今日は学園が休みなので、俺は領地の仕事をする事にした。
最初に、不在にしていた間の資料を確認する。
仕事は忠実にこなすシャルルと、その配下の奴隷達、そして協力的な民達のおかげで、クローウェン領は着実に発展し続けていた。
「なんだかんだいっても、シャルルは仕事が完璧なんだよな……ったく、奴はなんでこう性格だけがあれなんだ……」
忠誠心があるのはいいんだが、ありすぎるのも困るんだよな。
ちなみに、ディルムや他の奴隷達も俺に対しての忠誠心は厚いが、シャルル程常軌を逸してはいない。というか、そうだったら困るよ。あいつだけでも制御が大変なのに、シャルルみたいな奴が量産されたら精神衛生上良くない。
噂をすればではないが、シャルルが声をかけてくる。
「アキト様、お疲れの様子ですが。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。って、もう昼時か?」
俺は魔石で動く時計を確認する。既に昼を過ぎていた。
ああ、だから腹の虫が鳴いていたのか。朝からずっと仕事をしていたから何も食べていなかったな。
「すまん、ちょっと飯を食べてくる。確認が終わった書類は、いつものように保管しておいてくれる?」
「はい、分かりました」
シャルルに指示を出し、俺は食堂へ向かう。
「しかし、王都より発展しないようにするのも難しいよな……この四年間、じっくりじっくり成長させてきたが、これ以上の調整は難しいだろう……」
王家の威厳を保つため、次期国王である兄と第二王子の俺を比べられないため、俺は意図的にクローウェン領の発展を遅くしていた。そのためこの四年間で、チルド村とラトア以外の街・村は急激な開発をしていない。変化といえば食料事情が良くなり、誰も飢える事はなくなったくらいだ。
「まっ、飢え死にする者が出なくなっただけでも民から絶大な人気を得たし、いい事か。逆にこれ以上領地に手をかけると、王都と比べられて変に目立ってしまう可能性もあったしな」
食事を済ませた俺は仕事に戻った。その後一時間程で書類の確認は終わり、他の仕事に手をつける。
すると突然リーフが現れ、話しかけてくる。リーフは俺と契約を結んだ妖精だ。
「主様~、今日はお仕事だけ~? 退屈~」
「悪いな、リーフ。今週は確認する書類がたくさんあってな。明日はアリスと魔法の特訓の日だし、我慢してくれ」
「う~、分かった~。それじゃフレムの所に遊びに行ってくる~」
「いってらっしゃい」
火の妖精・フレムの所へ退屈で死にそうだったらしいリーフを送り出すと、俺は紙とにらめっこする仕事を続けた。
こんなふうにして一つの仕事が片づくと、転移魔法で次の仕事場へ向かう。
一日中仕事を続けた俺は、帰宅して夕飯を食べると風呂に入り、自室へ戻った。
「領地のほうは順調に進んでいるか……はぁ、後の問題は竜王だな……」
暇ができたから行くと返事した手前、春休みには向かう事になるだろう。俺の命運も尽きたか……死ぬ事はないと思うが、アレと戦うのは本当に嫌だ。
「はぁ、ほんと真面目にどうにかならないかな……」
そう願うものの、誰も竜王を止めてくれない。
こうして竜王との戦いまで一ヵ月を切ったが、俺は逃げられないものかと色々考えていた。
第5話 竜人の国
結局、竜王と戦いをする心が決まらないまま学園の卒業を迎え、竜人国へ行く準備が着実に進んでいた。
卒業旅行の行き先は、竜王との約束もあって竜人国にしたいと皆に伝えると、特に反対意見もなくすんなりと決まった。
……だけど、どうにか戦わない言い訳ができないものかな。
頭を抱えていると、そこにレオンが来てこう言われる。
「アキト、もう諦めたらどうだ?」
「くっ、くそう! レオン、お前が先にやれ! そして少しでも体力を削れ!」
「やなこった! 竜王自らアキトを指名したんだんだろ? 俺なんて相手にする意味ないだろ? それに今回同行はするが、俺は休暇中の身だからな。せっかくの家族旅行だ、楽しむぞ~」
「ったく、娘に嫌われたらいいのに……」
そう、三年前、レオンとクロネは子を授かった。性別は女の子で、名前は自分達から取り、レオーネと名づけたらしい。普段はチルド村で暮らしている。
奴隷の子だから、勿論身分は奴隷となるわけだが、幼児に仕事をさせるのはマズい。そう考えた俺は、自分の奴隷については、十歳以下は仕事に従事させないという決まりを作った。
「ああ、そういえばレオーネからアキトに渡してほしいって言われて、手紙を預かっていたんだった」
レオンが言いながら、俺に箱を手渡してきた。
「んっ? レオーネからか?」
受け取って中身を確認すると、手紙と記録用魔道具が出てきた。
『アキトさま、パパがアキトさまのわるぐちをいってました』
子供の文字でそう書かれた手紙を、レオンは俺と一緒に見る事になった。その下にはクロネの文字で『報酬:お菓子』と書かれている。
レオンが声を上げる。
「お、おい……これはどういう事だ!?」
「んっ? ああ、レオンがたまに隠れて俺の悪口を言っていると耳にしてな。証拠がないし、どうしたものかと思っていたんだけど……一緒に暮らしてるレオーネなら証拠を掴めるんじゃないかと思ってな」
そう言いながら、俺は証拠となるものが記録されているであろう、魔道具を起動した。
魔道具は映像を映し出し音声が流れる。
『ったくよ~、アキトの奴、ますます凶悪になって、アレは子供にみせかけた悪魔だな!』
映っていたのは、レオンとレオンの部下達が酒を飲んでいる姿である。レオンは酒に酔いながら、楽しそうに俺の悪口を言っていた。
「ふむふむ、これは完全に黒だな~」
「ちょっ、ちょっと待てよ、アキト!」
レオンが焦って言うが、俺は耳を貸さない。
「諦めろ、レオン。お前は自分の娘に、お菓子の生贄にされたのだ」
転移魔法で逃走しようとしたレオンに、俺は魔力を消す魔消弾を撃ち、レオンの魔法を止める。更に、俺はレオンの手足に枷を嵌めた。
「くっ、レオーネが少し前から、アキトの作るお菓子が好物になっていたのは知っていたが……まさか娘に売られる日が来るとは……」
ガックリした様子のレオンを見て、俺はニヤニヤと笑う。
「いや~、俺がいない所だったら安全だと、油断したのがいけなかったな」
「娘を使ってくるとは思わないだろ! 卑怯だぞ!」
「卑怯もクソもあるか。まあ、これでお前を竜王と戦わせる理由ができたな。竜王も、お仕置き代わりだったら戦いを引き受けてくれるだろうよ」
喜ぶ俺の陰で、レオンが小声で言う。
「クソッ、子供の皮をかぶった悪魔だって事実を言っただけだろ……」
「それが悪口だろうが」
悔しがるレオンにそう告げながら、俺はクロネに【念話】を飛ばす。
「クロネ、レオーネからの報告が届いてな。レオンを俺の前座として、竜王と戦わせる事にしたんだ。お前もレオーネと一緒に見に来るか?」
『あら、それは名案ね、ご主人様。最近、レオンったら家で酒ばっかり飲んでてうるさかったのよ。それで喧嘩したばかりだし、いい気味だからレオーネと一緒に見物させてもらうわ』
「了解。まあ試合が終わった後は、普通に休暇を楽しんでもらって構わないから。それと、レオーネに『よくやった』と伝えておいてくれ。報酬のお菓子は直ぐに準備して持っていく」
クロネとの【念話】を切って、俺はレオンのほうを向く。
レオンの奴、昔に比べて色々と駄目になってるんだよな……元々は軍人なのに、実戦を経験する事がなくなって平和ボケしたんだろう。定期的に訓練はさせてはいるけれど、レオンや自警団リーダーのジルといったトップ戦力の奴らは、最近目標がないせいか、体がなまり気味だ。今回の事は、レオンにとっても気を引き締めるいい機会になるだろう。
俺は張り切って言う。
「さてと、これで俺の道連れになって墓場に行く奴ができたか。そうとなれば、気持ちを切り替えて用意を進めるぞ~!」
「さっきまで行きたくないって愚痴ってた癖に、何いきなりやる気出してんだよ!」
「えっ? だって、道連れになる奴ができたんだぞ? 俺一人だったら嫌だけど、道連れがいるなら話は変わるだろ? しかもレオンが前座だから、お前が先に死ぬ姿も見られるしな。それなら、俺が死ぬ価値もあるってもんよ!」
「な、なんなんだよ、この主は……こんな事を考える子供なんていないだろ! だから、悪魔だって言ってるのに……」
ルンルンと準備を進める俺の横で、床に膝をついてレオンは泣いていた。
◇ ◇ ◇
二日後、全ての準備が整い、ジルニア国から竜人国へ向かう飛行船に乗る。俺、アリス、ルーク、リク、アミリス姉さんは卒業旅行の目的地――竜王が治める竜人国ドラコーンへ出発した。
「……なんで、父さん達もいるの?」
何故か飛行船には、ジルニア国王家ご一行が乗船していた。
父さん、そして爺ちゃんが口々に言う。
「えっ? そりゃあ、アキトが竜王様と戦うって聞いたからね。父として、息子がどう戦うのか見ておきたいだろ?」
「儂もじゃ」
というわけで……いざゆかん、竜人の国へ!
31
お気に入りに追加
10,105
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
神に愛された子
鈴木 カタル
ファンタジー
日本で善行を重ねた老人は、その生を終え、異世界のとある国王の孫・リーンオルゴットとして転生した。
家族に愛情を注がれて育った彼は、ある日、自分に『神に愛された子』という称号が付与されている事に気付く。一時はそれを忘れて過ごしていたものの、次第に自分の能力の異常性が明らかになる。
常人を遥かに凌ぐ魔力に、植物との会話……それらはやはり称号が原因だった!
平穏な日常を望むリーンオルゴットだったが、ある夜、伝説の聖獣に呼び出され人生が一変する――!
感想欄にネタバレ補正はしてません。閲覧は御自身で判断して下さいませ。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。