愛され王子の異世界ほのぼの生活

霜月雹花

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3巻

3-2

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 レオンが盛大に驚いているな。
 クラーケンが再度触手を伸ばし、レオンの体を海へ引きずり込もうとしてくる。俺はレオンを助け出すために、彼の腕を引っ張りながら上空へ戻った。

「レオン、気を引き締めろよ? 油断してると一瞬で死ぬぞ」
「ああ、くそッ! 食材集めに行こうぜって笑顔で言われた時点で気付くべきだったよ!」

 そうこうしているうちに、また触手が襲ってくる。
 レオンは愚痴ぐちを言いつつも、クラーケンとの戦闘に難なくついてこられていた。
 そんなふうにして、俺とレオンはクラーケンと戦闘しながら、その触手を採り続けた。クラーケンは特性として、触手を切られても再生するので、採れるだけ採り続けられるのだ。最後はクラーケンが逃げようとしたので、俺とレオンで空中に浮かせ、魔法で仕留めた。
 戦闘後、レオンがあきれた様子で言う。

「一体何処に祭りで出すために、クラーケンを食材にする奴がいるんだよ……マジでやりすぎだろ……」
「文句ばっかりだな、レオンは。【図書館EX】で調べたら、クラーケンは美味いって出てきたんだよ。だったら、食べるしかないだろ?」
「そんな情報があったとしても、本当に採りに行くのは馬鹿でしかないだろ……」

 レオンはクラーケン狩りに無理矢理連れてこられたのが面白くないのか、文句を言い続ける。
 ふむ、でも今回のもう一つの目的を明かしてやれば、一気に態度が変わるんだろうな。

「レオン、ちょっとステータス見てみろよ」
「はぁ? ステータス?」

 レオンは渋々ステータスを確認する。そして、「なっ!」と大きな声をあげた。
 レオンに続いて、俺も同じように自分のステータスを確認する。


 名 前 :アキト・フォン・クローウェン
 年 齢 :6
 種 族 :クォーターエルフ
 身 分 :王族、公爵
 性 別 :男
 属 性 :全
 レベル :128
 筋 力 :7017
 魔 力 :16745
 びん しょう :7005
  運  :78
 スキル :【鑑定かんてい:MAX】【剣術:MAX】【身体能力強化:MAX】
      【気配察知:MAX】【全属性魔法:MAX】【魔法強化:MAX】
      【無詠唱むえいしょう:MAX】【念力ねんりき:MAX】【魔力探知:MAX】
      【瞑想めいそう:MAX】【威圧いあつ:MAX】【指揮:MAX】
      【付与術:MAX】【偽装:MAX】【信仰心:MAX】
      【錬金術:MAX】【調理:MAX】【手芸:MAX】
      【使役術:MAX】【技能譲渡:MAX】【念話ねんわ:MAX】
      【木材加工:MAX】【並列思考:MAX】
 固有能力:【超成長】【魔導の才】【武道の才】
      【全言語】【図書館EX】【技能取得率上昇】
      【原初魔法げんしょまほう】【心眼しんがん
 称 号 :努力者 勉強家 従魔使じゅうまつか
      魔導士 戦士 信仰者
      料理人 妖精の友 戦神
 加 護 :フィーリアの加護 アルティメシスの加護 アルナの加護
      ディーネルの加護


 今回のクラーケン狩りの表向きの目的は、祭りで使う食材集めだ。しかし同時に、クラーケンの討伐、それと俺達のレベル上げも目的としていたんだ。
 昨晩、祭りの屋台で何を出すか考えている時に、俺は主神しゅしんアルティメシス様からとあるお願いをされた。クラーケンが海を荒らし、生態系のバランスが崩れかかっているので退治してほしいというものだ。それで俺はクラーケンの被害がジルニアにも及ぶ可能性があると思い、念のためにレオンを呼んで討伐に来たというわけだ。
 ただでさえ、クラーケンの経験値は多かったが、更に神様からのお礼の気持ちなのか、経験値がより上乗せされていた。
 ずっと驚いたままのレオンに、それらを全て説明する。

「そういう事だったのかよ……レベルが一気に20も上がって、ステータスがおかしくなったのかと思ったぞ」
「レオンが最近頑張ってるのは知っていたから、少しだけご褒美ほうびをやろうと思ってさ。どうだ、この褒美は?」
「危険だったが、最高だよ」

 レオンは嬉しそうにステータスを見て、滅多めったに見せない笑顔で言った。
 ちなみに、俺の固有能力の欄に増えている【心眼】は、戦神様から授かった能力だ。心ので相手の動きを観察し、次の攻撃を予測できる優れ物である。


 その後、俺はレオンと別れ、クローウェン領の居城へ戻ってきた。
 地下にある解体場にやって来てクラーケンの触手を出すと、働いていた奴隷達が腰を抜かす。
 うん、まあ、驚くのも無理ないな。

「ア、アキト様。この生物は……」

 奴隷の一人が怯えた様子で言う。

「うん、ちょっと大きな海の生き物だよ。毒はないし、書物によれば美味おいしいって書いてあったから、調理しやすいサイズに解体してくれ」
「は、はい……」

 それから俺は、仕事部屋へ向かった。
 そこにはシャルルがおり、書類の整理をしていた。

「お疲れ、シャルル」
「アキト様も、クラーケン狩りお疲れ様でした」

 シャルルが書類から顔を上げて言う。
 俺もシャルルと同じように書類確認を始める。祭りの準備のため、各地から送られてくる品物や出し物の申請書の確認、会場選びなどで普段より忙しさが何倍も増していた。
 ちなみに今は春休み期間なのだが、ほんとタイミングが良かったな……この忙しさじゃ、学園との両立は難しかっただろう。

「それでシャルル、祭りの会場は何処にするか決まったか?」
「はい。以前、アキト様が独自に大会をするために作られた会場を、少しだけ整備して使う事に決めました。今後、クローウェン領の大きな催しをする際にも使えるようにと思いまして」
「ああ、あそこか。確かに、街と街の間に作ったから人が集まりやすいだろうけど。とはいえ、端に住んでる村の者達はどうするんだ?」
「そこは、転移魔法やワイバーンなどを使って送り迎えする予定です」
「成程、よく考えているな」

 シャルルの采配さいはいに、俺は素直に感心した。
 ともかくそうなってくると、あの場所はこれからクローウェン領でも最も活気のある場所になるだろうな。もうちょっと生活しやすいように工夫する必要が出てくるかもしれない……

「っと、いけない。また悪い癖が出てたな……」

 チルド村でもやりすぎてしまったというのに、領内にこれ以上にぎわう場所を増やしたら、王都がかすんでしまう。そうやって悪目立ちすれば、第二王子の俺を王にしようとたくらむ馬鹿が出てくるかもしれない。
 開発して良い場所にしたい、という気持ちを抑えるため、俺は仕事に集中した。


「――アキト、大丈夫か?」
「んっ?」

 誰かの声が聞こえ、いつの間にか目を閉じていた事に気付く。体を起して目を開き、視界に映った仕事部屋には、何故かレオンがいた。
 もしかして俺、いつの間にか寝ていたのか?

「ッ! ……っぶね~、もう夜じゃないか」

 窓の外を見て叫ぶと、レオンが呆れた様子で言う。

「さっきシャルルに会って、アキトが寝ていたら起こしてやれって言われたんだよ」
「そうだったのか。悪い、迷惑かけたな」
「別に、俺もこっちに用事があったからさ」

 レオンは手をヒラヒラさせながら言い、クラーケンの解体が終わった事を教えてくれた。
 俺は机で寝たせいでった体をうーんと伸ばす。

「そっか、解体が終わったんなら後で取りに行くよ。報告ご苦労様」

 その後、レオンが部屋からいなくなったところで、俺は残りの書類を急いで確認し、帰宅した。


 少しだけ休憩していると、夕食に呼ばれたので食堂に移動する。

「アキト、なんだか疲れてる様子だけど大丈夫?」

 食卓に着いたところで、エリク兄さんから指摘され、俺は笑ってごまかす。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがと、兄さん」

 仕事中に寝落ちしてしまったせいで、疲れが隠せていなかったみたいだ。
 そんな俺の様子に家族は何か勘付いたみたいで、食後直ぐに風呂に入って眠るように言われた。
 みんな、俺の異変には直ぐに気付くんだな~。




 第3話 復興祭


 祭りの準備には一週間とかからず、あっという間に開催前日となった。
 会場設営はシャルルが先頭に立ち、急ピッチで完成させた。居城を作った時と同じく、俺に何もさせてくれないシャルルのせいで詳しい事は分からなかった。かなり不安なんだけど、俺は俺で書類仕事をしなければいけなかったので、手伝いには行けなかったんだよな。
 というわけで、経過を一切見ていなかった俺は仰天ぎょうてんした。

「おい、シャルル! これはなんだよ!」

 そこには、街ができていた。
 中央に大会時に作った会場があり、その四方に色んな施設が建てられている。公園、居住区、店、食事処が建ち並び、元々あった休憩所なんかもたくさんの人が利用できるよう改築されていた。
 中央の会場は、いかにも祭りらしく設営されており、立派なステージまで備えつけられていた。
 シャルルはまし顔で答える。

「えっ、祭りのためにはこのくらい必要かなと思いまして。駄目でしたか?」
「やりすぎだろ! お前、城を作り変えた時の事、りてないだろ!」

 とはいえ、作ってしまったものは仕方がないので、このまま使う事にした。
 しかし、シャルルを野放しにすると大変な事になるな。春休みの間に、きちんと調教ちょうきょうしておこう。
 ちなみに、様変わりしたこの場所は、最終的に正式な街とする事にした。父さんに報告した際に、「流石にその大きさだと、街と認めないと駄目だよ~」と言われてしまったのだ。
 街の名前は、ラトアと付けた。なおいつものごとく、父さんから「いいな~、こんな街いいな~」と訴えかけられたのは言うまでもない。
 でも、父さん、あげられないからね。


 ◇ ◇ ◇


「アキト様、この品物はどちらに?」
「それは、あっちにお願い」

 俺は今、祭りの本会場となるステージで、届けられる物資の割り振りをしていた。
 本来であればシャルルやエマ達に任せたいのだが、奴らには他の場所で、こんな感じの役目をやってもらっている。

「アキト、持ち場が片づいたから手伝いに来たぞ」

 バタバタと走り回っていると、レオンがそう言って空から降りてきた。
 偉そうな登場の仕方に小言を言いたかったけれど、その提案には素直に感謝し、レオンに指揮の半分を任せた。途中からクロネもやって来たおかげで、昼頃にはなんとか仕事を終えられた。
 俺は二人に礼を言う。

「助かったよ、二人共」
「ご主人様が困ってたら、助けるのが奴隷の役目だもの、ねえレオン?」
「そうだな、ご主人様の仕事をするのが俺達の仕事だからな。いつでも頼っていいんだぞ」

 クロネとレオンが、俺のご機嫌を取るように言ってきた。

「……」

 なんでこいつらがこんなふうに接してくるのか。
 それは、俺が今、こいつらにお仕置きをしているからだ。
 お仕置きとして使っているテスト段階の魔道具の効果は――首に装備すると、食べた物の味が全てなくなるというもの。
 ちなみに、母さんが作ってくれたお菓子を、俺に黙って全部食べた罰としてやっている。

「ったく、分かったよ。今日一日頑張ったら、その魔道具を外してやるよ」

 俺がそう言うと、レオンとクロネが身を乗り出す。

「ッ! 本当か!?」
「嘘じゃないわよね!?」
「嘘を言ってどうするよ? 明日は待ちに待った祭りだろ? それとも、祭りの間も味のしない食事をしたいのか?」
「「頑張ってきま~す!」」

 二人はそう応えると、全速力で走り去っていった。
 ほんと、奴らは似たもの夫婦だな。調子いいところも含めて。
 その後、レオンとクロネは他の現場でも活躍したらしく、奴隷達にとても感謝されていた。


「いよいよ明日だね。本当に僕達も行っていいの?」

 夕食の席で、エリク兄さんから聞かれた。その隣ではアミリス姉さんも心配そうな顔をしている。
 俺は笑顔で答える。

「大丈夫。クローウェン領の復興祝いだから、王族が来たほうが盛り上がると思うんだよ。だから、兄さんも姉さんも心配しないで」

 兄さんと姉さんはパァッと笑顔になった。普段、王族は式典に参加するくらいはあっても、お祭りを楽しむ事なんてないからね。
 そこへ、父さんが話しかけてくる。

「そういえば、アキト。魔帝国と神聖国にも招待状を送ったんだね」
「ほら、復興への支援をしてもらったでしょ? なら、復興祭には来てもらいたいなって思ってさ」
「成程ね~。でも、父さん色々と驚いちゃったよ」

 父さんはそう言うと、冷や汗を流した。
 父さんからしてみれば、ちょっと前に戦争を仕掛けてきていた二国が、息子の領土を支援してるというのは、意味の分からなすぎる状況だろうね。
 食後は、家族全員が早めに就寝した。
 俺もそうするはずだったのだが――


「ねぇ、アキト君! 明日の祭り、どうしても出ちゃ駄目なの!?」
「駄目なものは駄目です! 地上の祭りに軽々しく顔を出す神様が何処にいるんですか! 大会の時だって、もみ消すのに苦労したんですよ!」

 そう、神界しんかいに飛ばされ、いつもの主神の我儘わがままにつき合わされていた。
 実は数日前に「祭りへ来たら駄目だ」と言ったばかりなのだが、この主神、開催を翌日にひかえた前夜に突撃してきやがったのだ。
 既に「行きたい!」「駄目!」という言い合いを二時間程続けている。

「いい加減にしてください! アルティメシス様は主神なんですよ! 立場というのを分かってください!」
「立場が何さ! それだったら、神のトップが『行きたい!』って言ってるんだから、行かせるべきだよ!」
「だから、その神のトップがほいほい現れちゃ駄目だって言ってるんです!」
「構わないじゃん! 行かせてよ!」
「駄目です!」
「行かせて!」
「駄目です!」
「行かせて!」

 こんな応酬おうしゅうを続けているうちに、段々と疲れてきた。
 そしてとうとう俺は根負けし、参加を許してしまう。

「もういいです、来ても。ですがッ! 絶対ッッに! 神だとバレないようにしてくださいよ!」
「勿論! アキト君との約束だからね! ちゃんと守るよ! これでも主神だしさ。神の力を隠すのだって簡単だよ」

 許可を得られて浮かれている様子の主神。
 簡単とか言うんなら、大会の時も見つからないようにしてくれればよかったのに。
 あの時、主神が現れたのが情報屋に見つかったので、漏らされないように莫大ばくだいな金を動かした。まあ、莫大と言っても俺の貯金で払える額。とはいえもみ消すのに苦労したのは確かである。

「……それで、そこにいるお三方も参加希望ですか?」

 俺はそう言うと、ぐったりしながら別のほうに目を向ける。
 俺の視線の先には、いつの間にか俺に加護を与えている、フィーリア、アルナ、ディーネルの三人の神がいた。
 笑顔で首を縦に振る三人に俺は告げる。

「マジでバレるのだけは勘弁してくださいよ。今回は他国からも多くの人が来るので、もみ消しが本当に難しいんで……」
「分かっているわよ。私達は神よ? 人間にバレない手はいくらでもあるわ」

 神様達のせいでヘトヘトになりながら、俺は神界から地上に戻ってきた。窓から外を見た感じだと、まだ寝られそうだと思い、横になって目をつむる。

「あっ、そうだ。お礼にアキト君にプレゼントを」

 途端とたんにアルティメシス様の声がして、俺はまたしても神界に連行された。

「そんなのはいいから、寝かせてください!」
「ご、ごめんなさい!」

 二度目の神界に連れてこられた俺は、主神に怒鳴どなり散らして地上に返してもらい、今度こそ眠りについた。


  ◇ ◇ ◇


 翌日。神様とのごたごたで疲れが残るかと思ったが……不思議とそんな事はなく、ここ最近でも最高に寝覚めが良かった。

「そういえば、寝る前にアルティメシス様が『プレゼントを』とか言ってたな……」

 周りを確認するが、それらしい物は置かれていない。
 もしかして……と思いステータスを確認してみる。


 名 前 :アキト・フォン・クローウェン
 年 齢 :6
 種 族 :クォーターエルフ
 身 分 :王族、公爵
 性 別 :男
 属 性 :全
 レベル :128
 筋 力 :7017
 魔 力 :16745
 敏 捷 :7005
  運  :78
 スキル :【鑑定:MAX】【剣術:MAX】【身体能力強化:MAX】
      【気配察知:MAX】【全属性魔法:MAX】【魔法強化:MAX】
      【無詠唱:MAX】【念力:MAX】【魔力探知:MAX】
      【瞑想:MAX】【威圧:MAX】【指揮:MAX】
      【付与術:MAX】【偽装:MAX】【信仰心:MAX】
      【錬金術:MAX】【調理:MAX】【手芸:MAX】
      【使役術:MAX】【技能譲渡:MAX】【念話:MAX】
      【木材加工:MAX】【並列思考:MAX】
 固有能力:【超成長】【魔導の才】【武道の才】
      【全言語】【図書館EX】【技能取得率上昇】
      【原初魔法】【心眼】【ゲート】
 称 号 :努力者 勉強家 従魔使い
      魔導士 戦士 信仰者
      料理人 妖精の友 戦神
 加 護 :フィーリアの加護 アルティメシスの加護 アルナの加護
      ディーネルの加護


「……また何か、能力が増えてるぞ」

 俺は、新しく現れた【ゲート】という固有能力を確認する。
 それは〝空間と空間をつなぐ扉を作り出す〟というもので、簡単に言えば設置型の転移魔法だ。デメリットはなく、消したいと思えばいつでも消せるし、消したくなかったら俺が死んだ後もそのまま残るという仕組みだった。

「うん……祭り会場への移動手段をシャルルに考えてもらったけど、これで全て解決じゃん」

 その後、顔を洗って食堂に向かう。

「おはよう、アキトちゃん」
「おはよう、アキト」
「おはよ。姉さん、兄さん」

 廊下で、いつもなら先に食堂で待っている姉さん達とばったり会った。二人の顔を見ると、若干眠たそうにしている。今日の祭りが楽しみで寝られなかったのだろう。

「姉さん、兄さん。はいこれ」

 俺は、異空間からエリクサーを取り出して、二人に手渡した。万能薬のエリクサーをこんな安易に使うのは勿体もったいなさすぎるかもしれないけど、今日はせっかくの祭りだし、万全な体調で参加してほしいんだよね。

「ありがとう、アキト」
「ありがと、アキトちゃん!」

 ちなみに二人には「ただの眠気覚ましだよ」と言ってある。エリクサーは、俺が色々と試行錯誤しこうさくごした結果、手軽に使えるくらいの量が確保できている。それでも大量生産はまだまだ難しいけどね。
 二人と合流し食堂に向かい、先に座っていたアリウス父さん達に挨拶をしてから席に着いた。それから朝食をとり、家族と一緒に転移魔法でアリスを迎えに行ってからラトアへ移動した。

「アキト様、おはようございます」

 復興祭会場の待合室に入ると、先に来ていたシャルルから挨拶された。

「ああ、おはよう。準備はどうだ?」
「完璧ですよ。祭りの開始前に屋台を始めているのですが、既に大勢人が集まっているようです」
「マジか、地方からたくさん人が来ると聞いてはいたが……念のため、食材の管理はおこたるなよ。商品が品切れになって、復興祭を最後まで楽しんでもらえなかったら嫌だからな」

 シャルルに指示を出した後、祭りの開会式が始まるまで父さん達と待機する。
 一領地に過ぎないクローウェン領の復興祭に王家が総出で出席するのは、ちょっと大げさかもしれない。でも俺の領地だし、王である父さんには、顔を出してもらいたかったんだよね。まあ、父さんはこういったもよおしに慣れてるし、参加できるのが嬉しいと言ってくれたけど。
 開会式は、王家の来賓らいひんの出席のもとに無事行われた。
 祭りが始まると、式に参加していた他国の重鎮じゅうちんの人達が挨拶に来る。多くの人達と交流していると竜人国りゅうじんこくの王、竜王りゅうおうが声をかけてきた。

「こうして会うのは初めてだな、リオンの孫。アキト」
「そうですね、竜王様」

 竜王は人間形態であるものの、大きな体をしていた。二メートル程の長身で、全身が筋肉に覆われており、〝炎竜えんりゅう〟という通り名にふさわしい、燃えるような赤い髪と目をしている。

「ふむ……今日は、挨拶だけにしておくか。近いうちに一戦やってもらうぞ?」
「えっ……いいですよ。竜王様には色々と世話になっていますから」
「フフ、そうかそうか、楽しみに待っておるぞ」


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