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第147話
しおりを挟む奇跡の出会い(醤油と)した俺は、次の日朝早くからウキウキ気分で調理場へと来ていた。前日、料理人の人達に調理場を使わせてと頼んでいたら、何故か今日来た時に料理長のコルトさんや他の料理人の人達も片手にメモ帳とペンを持ち待って居た。
「ど、どうしたの?」
「いえ、坊ちゃんが作る物を自分達で作れるようにと思いましてね。私共の事は、気にせず進めてください」
コルトさんはそう言うと、周りの料理人を見ると「はい、私達の事は気にせずにどうぞ」と一斉に言われた。まあ、別に人に見られていて気が散るほど繊細な俺でも無いしと思い、俺はアイテムボックスから色々材料を取り出していると、醤油を出した所でコルトさんが「坊ちゃん、そいつは何ですか?」と興味深々に聞いてきた。
「これは、この間持ってきた〝竜の里〟で売られている。【ショウユ】という調味料です」
小皿を取り出し、その中に醤油を垂らしコルトさんの前に持って行った。コルトさんは、小指で醤油に触り口の中に入れると驚いたように「今まで、味わった事が無い味がする」と言って周りの料理人の人達にも試すように言った。
「今日は、この調味料を使って料理をする予定です。その里の族長からコレを使ったレシピもいくつか貰ったので」
前世の記憶で作ると言ったら変に思われると思った俺は、嘘とはバレない様にドラゴさんからレシピを貰ったと言って納得させた。
取りあえず、コルトさん達が醤油で騒いでいる間に他の材料も取り出し、【記憶の書庫】より前世のレシピも思い出しながら調理に入った。
まず、一番最初に作ったのは〝肉じゃが〟だ。前世でもよく母親に作ってもらっていて、料理の中でも一番と言っていい程好きな料理だ。
例の如く、作り終わった品を見たコルトさん達は肉じゃがから手が離せないようだった。まあ、こうなる事は予想が付いていた。ダンジョンの中でも何日か食べるかも知れないので大き目の鍋で作っていた肉じゃがを少し、皿に移しコルトさん達に渡した。
コルトさん達は、肉じゃがを一口食べると一気にメモ帳に何か書き出した。
コルトさん達がメモ帳に書いている間も、俺は料理を作り続けた。
今回は、里で手に入れた日本にもある食材のおかげで【記憶の書庫】を使いレシピを調べて照らし合せながら作って行った。
「ぼ、坊ちゃん? 卵を生のまま食べるんですか?」
「うん、里に売ってある卵でこっちの卵とは少し違う物なんだよ」
そう言って茶碗にご飯を注ぎ、その上に卵を乗せ醤油をかけた。そして、完成したのは文字通り〝卵かけご飯〟である。俺は完成した卵かけご飯をスプーンで一口食べると、記憶に残っている味とそのまんまで感動した。
その後、流石に生卵を作った料理はコルトさん達は食べれないと申し訳なさそうに言ったので卵かけご飯をもう2つ作って、ドラグノフ達が居る自室に戻った。
「ドラグノフ、アーリン。新しく料理、と言って言いか分からないが朝食準備したから起きろ~」
まだ眠っていたドラグノフ達を起こし、椅子に座らせ卵かけご飯を目の前に置いた。
「何だ、これは?」
「良いから、食べてみろって美味しいから」
アーリンは、まだ寝ぼけているのかフワフワとしていたがドラグノフは料理を目にする覚醒し、興味が湧いていた。そして、スプーンを渡し直ぐに卵かけご飯を一口食べた。
「ッ! 上手い!」
「だろ?」
ドラグノフは卵かけご飯を一口食べると、美味しそうに食べ始めた。そんなドラグノフをみて俺は、味の共感が出来た嬉しさで笑顔になりアーリンも「ほら、アーリンも起きろ~」と体を横に揺らすと「ん~、何~クリフ君」とやっと目が覚めてきた様子だった。
そして、アーリンも卵かけご飯を食べると「美味しい!」と言ってパクパクと食べ始めた。その後、既に料理の味見等でお腹が膨れていた俺は、そのまま家を出てアリス達の待ち合わせ場所に向かった。
「アリス、ミケ。おはよう」
今日は先に着いて、ギルド前で待って居るとアリス達がやって来て俺はいつもの様に挨拶をした。すると2人は「クリフ君、今日早いね」と言ったので「ダンジョンで食べる料理を作ってたら、早く終わってね。先に来たんだよ」と言った。
すると、2人は笑顔になって「クリフ君の料理楽しみだな~」と早くダンジョンに行きたそうだった。しかし、まだガルフさんに渡した剣や防具の点検がまだ終わってないので、今日は初心に帰って王都付近の薬草集めをする事にした。
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