上 下
139 / 192

第139話

しおりを挟む

 馬車を下りて、パーティー会場である建物に家族みんなで移動した。
 建物の中に入ると既に生徒や生徒の親御さんが沢山人がいっぱいいた。父さん達は、教師の人達に挨拶に行ってくると言ったので俺と姉さん達でパーティーを回ることにした。

「あっ、クリフ、アリエス、エレミア。こっちだよ」

「レリック兄さん!」

 会場の中を歩いていると、正面の奥から兄さんが俺達の事を見つけてくれた。俺達は、兄さん達と一緒に壁際に移動し一息ついた。

「いや~、人が多くてクリフ達見つけれるか心配だったけど、見つけれてよかったよ」

「うん……て、あれ? クラリス兄さんは、来てないの?」

「……あっ、クリフ達を見つけてたからクラリスの事忘れてた」

 兄さんは「どうしよ……」と言っていると、アリエス姉さんが「あれ、クラリス君じゃない?」と指を指した方にクラリス兄さんはが歩いていた。見つけたクラリス兄さんの所に俺が行き、兄さん達の所に連れて行った。

「俺、あんまり人が多い所苦手だ……」

「そう言うなよ。今後、殿下の付き人になる以上人とは関わって行くんだから」

「そうだけどよ……はあ、っとそう言えばクリフ。Cランクになったんだってな、城の兵士も驚いてたぜ半年もせずCランクに上がる何て? って」
 
 クラリス兄さんは「頑張ってるんだな」と言って、俺の頭撫でた。その後、兄弟でパーティーに出されている料理を皿に取り分け壁際に戻って来ようとすると、兄さん達は女子に姉さん達は男子に囲まれて俺とはぐれてしまった。

「うん、兄と姉が人気者って再確認させられるな……」

 俺の所には誰一人来なかったので、一人で壁際で食べていると1人の男子が近づいてきた。俺はその男子の顔をよく見ると、兄さん達の護衛の対象である殿下だった。

「やあ、こうして話すのは初めてでね。クリフ君の事は、お爺様からも君の兄達からも良く聞いているよ」

「あっ、えっと、始めましてクリフです」

 俺は食べていた物を急いで飲み込み、殿下に挨拶を返した。殿下は、俺の返答にクスッと笑い「いいよ。今日は、国の王子じゃなくて君のお兄さんの友達として会いに来たから」と言った。

「クリフ君、凄いね。冒険者になって少ししか経って無いのに、Cランクに上がってその昇格した時の依頼が〝毒竜の討伐〟だったんでしょ? 僕、一度も竜を見た事無いからどんなんだったか教えてくれる?」

「あっ、えっと~」

 殿下は、グイグイと詰め寄り目をキラキラとして聞いてきた。俺は、どう言えば良いか迷ってるとレリック兄さんが戻って来て「殿下、クリフが困ってるからその辺にしてくれますか?」と止めてくれた。

「困ってるって、レリック達が僕を外に出してくれないから、外がどんなんか聞いてただけだよ」

「……クリフ。ごめんね。ちょっとだけ話を聞かせてあげて」

 レリック兄さんに頼まれた俺は、これまでの冒険の話を殿下にした。殿下は、目をキラキラとしてその全てを聞き「クリフ君、竜を従魔にしてるんだ」と羨ましそうに言った。

「えっと、何でしたら今度城に連れて来ましょうか?」

「えっ、本当かい?! レリック、良いよね?」

「……クリフ。その竜は、クリフに懐いてるのかい?」

「懐いているって言うか、普通に人化出来るから一緒に家の中で暮らしてるよ」

 そう言うと、殿下は「人化が出来る竜?!」と驚きレリック兄さんは「……後で、父さんに聞いて良いか聞こう」と言った。兄さんの言葉に「それじゃ、直ぐにクリムさんを見つけてこよう」と殿下は走り出し兄さんは殿下を追って、また1人になった。

(兄さんも大変だな~、昔の殿下の印象とは少し変わってたけど良い人ってのは分かるな)

 そんな事を思いながら、残っていた料理を食べていると姉さん達とクラリス兄さんが疲れた様子で戻って来た。

「クリフ君、見捨てないでよ~」

「そうだよ。私達が知らない男の子に話しかけられて何も思わないの?」

「え、えっと……ほら、友達かな? って思ってさ邪魔しちゃ悪いかな~と」

 言い訳の様に言った俺の言葉にムスッとした姉さん達に「ご、ごめんね」と謝りながらアイテムボックスからクッキーを取り出し姉さん達に渡すと、チラッとクッキーを見ると手に取り美味しそうに食べ始めて笑顔に戻った。

(ふぅ、クッキー最強だな)

 在庫を絶対に切らさない様にクッキーは見て行こうと心に誓った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...