上 下
82 / 192

第82話

しおりを挟む

 母さんの説得に成功した後、アイザックさん達が待つ場所に戻ってきた俺達は、そのまま手続きを済ませ門の外に出て目的の領地に向かった。今回向かう場所は、俺が幼少期過ごした別荘の近くと言う事で久しぶりに別荘の人達に会えると聞いて楽しみが増えた。

「クリフ。お願いだから、もし危ない竜だったら絶対に一人ででもいいから逃げてよね?」

「分かったって、それに母さんに危なかったって伝えなかったら分からないんだから」

「……騎士の中にリサラのファンが沢山居るんだよ。だから、もしクリフが危険な目にあったのを目にした人が居たらすぐにリサラの所に報告が行くんだよ」

 ここの騎士団の人達、そう言えば前に母さんと一緒に騎士団の人達の訓練を見に行った時、父さんと一緒に見に行った時よりやけに声を上げたり、素振りも前の時より音が大きく聞こえていて、母さんのファンと聞いて「なるほど」と思ってしまった。

「まあ、本当に危なくなったら全力で逃げるよ」

「頼むよ……」

 馬車に揺られ数時間が経ち、昼食の時間になった。しかし、移動を優先しているので今回は揺られながら食べると事になり父さん達は携帯食をバッグから取り出し食べていた。

「クリフは、自分の無いなら父さんのをあげようか?」

「いや、大丈夫だよ。前にダンジョン行く時に多く作っててまだ残ってるのがあるから」

 そう言って、アイテムボックスから余っていたスープとサンドイッチを取り出し、スープはこのまま置いてたらこぼれるかもしれないのでコップに注いでアイテムボックスに入れなおした。

「……そう言えば、クリフは料理も出来たんだったね。調理スキルは、もう取ってるのかい?」

「うん、この間取ったけどこれは取る前に作った物だからスキルの力は使って無いよ。父さん飲んでみる?」

「いいのかい?」

「うん、まだ余ってるしね」

 そう言って、アイテムボックスからスープが入った鍋を取り出しコップに注いで父さんに渡した。父さんは、まだ湯気が出ているスープ入りのコップを口元に持って行き、フーフーと冷まして一口飲んだ。

「ッ! す、凄いね。普通に美味しいよ。これで、調理スキルは使ってないんだよね?」

 父さんは、一口飲んだ後感想を言ってまたズズズとスープを飲み干し「は~、美味しかった」と言って残った携帯食を食べ始めた。

「そう言えば、父さん。最近、爺ちゃん何処に行ってるか知ってる?」

「いや、父さんも知らないんだよね。でも、毎日帰って来てるからそんな遠くには行ってないと思うけど……まあ、王都の近くで魔物狩りでもしてるんじゃないかな? 義父さん、ジッとしておくのって苦手だし」

 その後、サンドイッチを食べ終わった俺は、馬車の中でジッとしているのが退屈になり空歩を使い他の馬車の騎士の人達と喋ったりして時間を潰した。
 そして、一日目の野営地に着き騎士達の人達がテントを次々建てていた。

「よう、クリフ。久しぶりだな! って、そうかクリフの事、様って言わないといけないか」

「ルトア、久しぶりだね。いや、別に今のままで良いよ。友達に「様」とか言われても嫌だしね」

「そうか、ならこのままで良いか」

 久しぶりに会ったルトアは、学園に居た時の様に話しかけて来てくれた。今は、クールベルト家の騎士団に所属して今回は新兵として初仕事として来ているらしい。「新兵で来たの俺ともう1人だけなんだぜ!」と自慢して来たルトアに俺は「期待されてるみたいだね。頑張って」と労いの言葉を掛けた。

「そう言えば、クリフ。Dランク冒険者になったんだろ? 凄いな、まだ一カ月も経って無いだろ?」

「良いパーティーメンバーに恵まれたおかげだよ。アリスも居たしね」

「ああ、アリスちゃん。結局、一度も剣術勝負で勝てなかったな……また、戦いたいな」

「一カ月、里帰りで居ないけど帰ってきたら頼んでみるよ」

「本当か?! 頼むぜ」

 ルトアがそう言うと、ルトアの後ろから隊長が来て「すみません、クリフ様。ルトア、借りますね」と言われ「それじゃ、またな」と言って走り去っていった。
 ルトアと別れた後、自分のテントに戻った。その後夕食は、騎士の人達の中で調理スキル持ちの人達と一緒に俺も一緒に料理を作って「クリフ様の料理、めっちゃ美味しいです!」と騎士達の人達から言われ凄く気持ちが良かった。
 また、ルトアから「クリフ。顔も頭も良くて、剣術や体術、魔術も得意更に料理も出来るって完璧すぎるだろ!」と言われた。
しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...