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第48話
しおりを挟む目の前の光景に驚いていると、その中の1匹が俺の方へ近づいてきた。
「ようこそ、【妖精の楽園】へ」
「よ、妖精の楽園……? って事は、ここに飛んでいるのは全部妖精なのか?!」
「はい、そうでございます。よければ、貴方様のお名前を聞かせて貰えますでしょうか?」
「俺は、クリフ・ファウス・クールベルト――」
名前を言い終わった瞬間、目の前の妖精と空中を自由に飛んでいた妖精たちが一斉に固まった。俺は、話をしていた妖精に「ど、どうしたんだ?」と尋ねた。
「す、すみません。妖精王より加護を与えられた者を見たのが数百年振りだったので……ああ! 私、名前を名乗るのを忘れていました。すみません、私の名前はルシアです」
慌てて自分の名前を名乗った妖精は、俺に向かってお辞儀をした。そんなルシアさんに俺は先程から疑問に思っていることを聞いた。
「ルシアさん、何で俺ここに来たんですか?」
「すみません、私もクリフ様がここに呼ばれた理由は知りませんが、輝いている場所に近づいたりしませんでしたか?」
「ああ、それならここに来る前、森の中を探索している時に輝いている場所があるなと思って近づいたが」
「それは、この世界とクリフ様が住んで居る世界の扉みたいな役割の所なんです。数年に一度、何処かで数分間開くと自動的に閉じるんですが、その閉じる前にクリフ様が近づき、この世界に呼ばれたんでしょう」
「そうなんですか、あの元の世界に戻れますか?」
「はい、勿論です。向こうの世界からこちらに来るのには、少し一苦労しますが、こちらから向こうの世界には安全にわたる事が出来るのです」
そう言ったルシアさんは、「着いて来て下さい」と言って木の中の奥へと案内してくれた。そして、木の中の階段を下りて行くと2つの扉があった。
「こちらが、クリフ様の世界に通じる扉になります」
「ありがとうございます。あの、そちらのもう1つの扉は何処に通じているんですか?」
「こちらは、妖精王様の所に通じているのですが、数百年開いた事は無いんです」
「へぇ~、ってそう言えば、さっき俺の事「妖精王の加護を与えられた者」って言ってたけど、どうやって分かったんだ?」
俺がそう聞くと、ルシアさんは「それはですね。この木の中にある一室に妖精王様から加護を与えられた者の名前が書かれる場所があるのです。そこに、遂先日新たに追加されたのが、クリフ様なんです」と言った。
「便利な部屋ですね。……俺以外に妖精王の加護を持ってる人は居るんですか?」
「すみません、それらの情報は私共、妖精の口からは言えないのです。妖精王様の加護を、与えられた者同士が偶然知り合った場合は、何も無いのですが、私達妖精が教えると妖精王様からきついお仕置きがまっているのです」
ルシアさんは、身を震えながらそう言った。どんな罰なんだろうなと考えたが、まあ俺には関係ないだろうし、良いかと思い。「それじゃ、少しの間でしたがお世話になりました」と言って部屋の中に入ろうとした。
「待ちたまえ」
「んっ? ルシアさん、何か言った?」
「いえ、私は何も……」
突然、俺の後ろ、誰かから呼びかけられた気がしたが、俺の後ろにはルシアさんしか居ないし、ルシアさん本人が何も言って無いと言っているので「気のせいか」と言い、部屋に入ろうとすると
「待ちたまえと、言ったであろう!」
「うぉッ! な、なんだ?」
「ッ! もしや、妖精王様なのですか?!」
ルシアさんがそう叫ぶと同時にもう1つの扉が開き、その中から木の枝が出て来た。その枝は、俺の腹にまきつくと、俺を持ち上げ扉の中へと連れ去った。俺は、咄嗟に「ちょ、助けてルシアさん!」と言ってルシアさんの小さな手を掴み、一緒に扉の中へと消えた。
部屋の中に連れて来られた俺とルシアさんは、一体何事だと思い二人して慌てていた。
「ル、ルシアさん、こんな事って以前にもあったりしたの?」
「いえ、わ、私の知る限り一度もありません。それに妖精王様の言葉を聞いたのが数百年ぶりな位です……」
ルシアさんも少し今、起こっている現状に落ち着いていられないみたいで俺の肩に乗り、体育座りをしていた。そんな、俺達の前に突然光が集まってくると、その中から1人の少女が出て来た。
「もう、待ってって言ってるのに何で帰ろうとしてるのさ!」
その少女は、いかにも怒っていますよ。という雰囲気を出しながら手を腰に当ててそう言ってきた。
「「……」」
「なに? どうしたの、二人して私の顔を見て? なにか、付いてるの? 付いてるなら、取ってよ~」
「あ、あの、貴女は一体、誰なんですか?」
「私? いや、さっきからルシアちゃんが言ってたでしょ。私は妖精の王様、妖精王アーリンよ」
少女が名乗ると俺の肩に乗って居るルシアさんが驚き、気を失い俺の肩から落ちそうになったので慌てて手に取り、手の中で横に寝かせてあげた。俺もまた、目の前の少女が妖精王と名乗り、気を失うまでではないが驚いていた。
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