上 下
43 / 192

第43話

しおりを挟む
お店の閉まっているドアをノックすると、中から「はい、ちょっとお待ち下さ~い」と若い男性の声がし、数秒後にドアが開けられ中から若い青年が出て来た。

「どうも~、えっとここのお店、紹介状が無いと入れないんだけど君たち持ってるかな?」

「はい、ギルドで貰いました」

 俺は、アリスの分の紹介状も一緒に中から出て来た青年に渡した。青年は、それを見て「うん、本物だね。どうぞ、中に入って良いよ」と言って俺達を中に入れてくれた。
 店の中には、一目で凄いと分かるような武具が沢山飾ってあった。

「ガルフさ~ん、ギルドからの紹介状持ちの子達が来たので表に出て来て下さ~い」

「ああ、分かった。ちょっと待ってろ」

 青年が奥に呼びかけをすると野太い声の返答が帰って来た。そして、店の中を見てていいよと青年が言ったので俺とアリスは、店の中の物を見て回った。
 そして、数分後奥から1人の俺より少し高い位の顔はおじさん顔の人が出て来た。

「すまんな待たせちまって、俺はガルフ。この店の店長で、見ての通りドワーフだ。」

「よろしくお願いします。俺は、クリフって言います」

「私は、アリスです。よろしくお願いします」

「おう、よろしくな」

 ガルフさんは、俺達の挨拶がすむと「紹介状には、安い武器が欲しいって書いてあったが合ってるか?」と聞いてきた。

「はい、僕の剣なんですけど、僕の体に合って無くてちょっと使いにくいので」

「んっ? ちょっと、その剣見せてみな」

 ガルフさんは、アリスが腰に提げている剣を見てそう言った。アリスは、ガルフさんの指示通り腰の剣を抜きガルフさんに渡した。

「あ~、こりゃ嬢ちゃんに合う訳ないな、これは大人用の、それも男性用の剣だ。嬢ちゃんに合わないのは、当り前だな」

「そうなんですか? 安売りしてて、よく見て無かったので」

「なるほどな、冒険者に成る為に安く準備をしちまった訳だ。しかし、武器屋防具は最低限、自分に合った物を着けて無いと死んだら意味ないんだぜ」

 ガルフさんの話を聞いてアリスは、「すみません……」と謝った。

「まあ、何だこんなおっさんに説教されても面白くないだろうし、早速、武器を準備をするか、どうする嬢ちゃん何か使いたい武器の種類とかあるか?」

「僕、お父さんに片手剣の使い方しか習ってないから、片手剣が欲しいです。でも、お金そんなに無いですよ?」

「分かってる。初心者の冒険者に高く売るつもりも無いし、今後この店を使ってくれるならその時、金を落として行ってくれりゃ構いやしねえよ」

 そう言って、ガルフさんは奥の工房が在る所へ移動した。俺達は、どうすればいいのか分からなかったが近くで見ていた青年さんが「こっちに座れる場所があるから、こっちで待ってるといいよ」と言ってくれたので、椅子に座ってガルフさんが戻ってくるのを待った。
 ガルフさんは、それから10分後くらいに奥の工房から戻って来た。

「昔、作った女用の物を嬢ちゃんが使いやすい大きさに打ち直してきたが、ちょっと持ってみてくれ」

「はい……凄いです! 今まで使って来た剣の中で一番、扱いやすいです」

「そうか、そりゃよかった。今回は、ただ売れ残りを打ち直しただけだから、銀貨1枚って所だが、今払えるか?」

「これが、銀貨1枚何ですか?! はい、あります!」

 アリスは、その剣の凄さと値段の設定が違って驚いたが、直ぐに自分のバッグから銀貨を1枚取り出し、ガルフさんに渡した。

「あの、本当に銀貨1枚で良かったんですか?」

「ああ、言っただろう。売れ残った奴だって、ギルドから来たって事は、お喋りレインから色々聞いてんだろ? 昔の店の時に、作ってこっちに移すときに余ってた物だ。今じゃ、ここに女が来ることがあんましねぇからな、来たとしても、もっと良い物を作る仕事をやってるからな、気にする事はねえ」

 ガルフさんはその後、青年さんに「ちっと、お茶持って来てくれ」と言って椅子に座った。

「そういや、坊主は武器か防具欲しい物、無かったのか? 紹介状には、嬢ちゃんの剣を頼むとしか書いて無かったが」

「俺は、まだこの剣で行けますし、もうちょっとお金を貯めて良い物を頼みに来ます」

「そうか、そりゃその時が楽しみだな」

 そう言って、青年さんが持ってきたお茶を飲み、一息ついた。

「そういや、坊主の家名の所クールベルトって書いてたが、もしかしなくともクリムの息子か?」

「はい、クリムは俺の父さんです」

「そうか、やっぱりか……って、坊主お前、耳が普通の人間とは違うって事は、もしかしてリサラ嬢の子供の方か?!」

「あっ、はいそうですよ」

 そう答えるとガルフさんは、驚き椅子から倒れ落ちた。

「だ、大丈夫ですか?」

「び、ビックリした。まさか、リサラ嬢の息子が家に来るとは……」

「えっと、母さんの事知ってるんですか?」

「ああ、回りを見たら分かるが、俺の店は杖も扱ってるんだがリサラ嬢が持ってる杖も俺が作ったんだよ。しかしな、今リサラ嬢が使っている杖の前に100本以上の杖が駄目になってるんだよ」

 ひゃ、百本?! か、母さん壊しすぎだろ。ダンジョンに昔、潜ってたって言ってたからその時、壊したのかな?

「壊しまくったんですか?」

「ああ、それも俺の目の前でな、リサラ嬢はエルフって事もあって元から人間より魔力が多かったから、それを考慮して魔力に耐えれる杖を作ってたんだがリサラ嬢の魔力に今持ってる杖より以前の杖は持ちこたえれなかっだよ」

 ガルフさんはそう言いながら、お茶を一口飲み「今まで色んな武器を作って来たが、リサラ嬢の武器を作るより苦労した物は、未だに出会った事が無いぜ」と疲れた様に呟いた。
 その後、少しの間、話をして「そろそろ、帰りますね」と言って店を出て行き元の大通りに戻ってきた俺達は「このまま、少し屋台で買い食いして帰ろうか」と言って近くの屋台で串を買い、食べながら帰った。
しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...