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第20話

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兵士達を回復しながら移動していると、いつの間にか前線へと着いていた。後方で回復した兵士が前線に参加していて最初は帝国側が優勢だったが、俺が倒れている兵士を回復した事によってクールベルト家側の兵士が優勢へとなっていた。
 特に一番、貢献しているのが先に飛んで行った爺ちゃんが帝国側の兵士を魔法で倒して行っていたので数は大分減っていた。

「爺ちゃん、何処まで行ってたんだ? 全く、姿が見えないぞ?」

 結構、前の戦場まで出て来たのだが爺ちゃんの姿が一向に見えなかった。まあ、あの爺ちゃんなら大丈夫だろうと考え、倒れているクールベルト家の兵士達を回復魔法で回復してこちらの兵士をなるべく減らさず移動して行った。
 先程から少し感じているのが1つ有り、何故か回復魔法を掛けた兵士達の無くなった腕やら脚やらまでもが生え変わったりしていた。(生え変わる瞬間は、光で輝いていて見れなくなっているので気持ち悪いとは感じなかった)
 ゲームの様な世界だからこそ、こんな事も出来るのかと思った。まあ、最初の説明でもHPでの死亡だったら1日以内なら生き返らせることが出来ると言ってたし、これが普通なんだろう。

「貴方は、リグル様がお連れになっていた子供ですよね? 何故、こんな所に居るのですか?」

 兵士を回復魔法を使って回復していると、傷だらけの兵士、一番最初にこの場に着き爺ちゃんと話をしていた周りの兵士より少し色が違う装備をした人が話を掛けて来た。

「僕、お爺ちゃんに回復魔法が使えるから兵士さん達を回復してあげなさいって言われたから、倒れてる兵士さんを回復してたんだ」

「成程、だから皆倒れていた筈の者も前線に来ていたのか……ありがとう、だがここは危険な場所だから早く離脱しなさい」

「う~ん、僕お爺ちゃんに少しは鍛えて貰ってるから大丈夫だよ」

 そう言いながら、俺の方を見ていた兵士の後ろから斬りかかって来た帝国兵を風魔法で倒した。話をしていた兵士は、突然俺が魔法を使った事に驚き、後ろでドサッと倒れた帝国兵を見て唖然としていた。

「ほらね。ほら、兵士さんも早く戦闘に参加してきなよ。倒れたら僕が回復してあげるから、頑張ってね」

「……流石、リグル様のお孫様と言うべきか、ああ倒れた時は頼むよ」

 兵士はそう言うと、走り去っていった。俺もまた動き出し、倒れている兵士を回復しながら進んで行くと魔法をドンパチやっている場所を発見した。

「おっ、あそこに爺ちゃんが居りそうだな、行ってみるか」

 魔法の打ち合いをしている戦場へと俺は【鬼人化】を使い移動速度を上げ、途中でクールベルト家の兵士と戦っている帝国兵士へ魔法を的確に打ち込み倒して行った。
 戦場に着くと、そこでは思っていた通り爺ちゃんが帝国兵、俺の視力で確認できるのは20人位の魔法兵を相手にしていた。

「やっと、爺ちゃん見つけたよ。俺も参加するよ~」

「おお、クリフ。クリフも来たのか、案外帝国の魔法兵も昔に比べたらマシになってての遊んでおったわ」

「遊ぶって、爺ちゃん。爺ちゃん以外の人達は本気で戦ってるんだから、ちゃんとしないと」

「う~む、孫からそう言われるとは……仕方ない、遊びもここまでにして本気で行くかのう。そうじゃ、クリフどっちが多く倒すか勝負するか? 相手は丁度、30人居るから多く倒した方が勝ちじゃ」

(爺ちゃん、どんだけ遊びたいんだよ。本当に戦闘狂だよこの爺さん……)

 そんな事を思いながら、俺は了承した。実際の所、血を浴びて体中臭いから早く綺麗に洗いたい。

「さて、早く帰る為に急いで片付けるか……」

「孫と初めての競争じゃわい、儂も頑張るぞ」

 共に意気込んだ俺と爺ちゃんは瞬時に行動に移した。俺は既に使っていた【鬼人化】の力を最大限、抑えを切り敵兵へと突っ込んだ。爺ちゃんも俺が接近戦をするのを見て、今まで持って居なかった片手剣を装備すると敵兵へと突っ込んだ。
 帝国兵は、子供とエルフが突っ込んできているのに驚きはしたが直ぐに攻撃魔法を放ってきた。俺はその魔法に対し【ウィンドカッター】で1つ1つ切り刻み魔法を相殺し、爺ちゃんは同じ魔法を放って相殺していた。

「うわぁぁぁ!」

 この戦場だけ、他の戦場とは少し違った風景となっていた。
 帝国兵は経った数分で30人の魔法兵が俺と爺ちゃんによって倒された。出だし俺のが好調だったが、途中から爺ちゃんは大人気も無く勝負に勝ちたかったのか俺と戦っていた兵士も奪って行った。結果、爺ちゃんのが4人多く倒し爺ちゃんの勝ちとなった。

「ふ~、まだ孫には負けんよ」

「……俺の獲物、奪ってて良く言えるよ」

 俺は爺ちゃんを睨みつつ言った。その後、俺と爺ちゃんは合流したし一緒に行動するかという流れになり、爺ちゃんと共に前線へと向かって走った。
 走っている途中、大きな影が戦場を横切った。「なんだ?」と言い上を見ると、そこには昔見たレッドワイバーンより大きいドラゴンが飛んでいて、その背中に誰かが乗って居た。
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