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第189話

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 ニャトルさん達が去った後、待機室に戻って来て兵士さんが呼びに来るのを待っていると、ルードさんも部屋へとやって来た。

「大分、緊張してるみたいだな」

「そりゃ、四天王最強って知ってますし、一度負けた相手ですからね。緊張はしますよ」

「そんなもんか? 俺だったら、再戦出来るって喜ぶけどな」

 ルードさんはそう言って、俺の対面して椅子に座った。それから、俺の緊張を解す為にルードさんが色々と話をしてくれて、20分くらいして兵士さんがやって来て俺達は部屋を出て会場に向かった。
 会場に入る扉の前に着いた俺は、深呼吸をして気持ちを切り替え、名前を呼ばれた俺は扉を開けて会場へと入った。

「おっ、さっきよりかは真面な顔付になったな」

「まあ、ここまで来ましたからね。気持ちを切り替えて来たんです」

 俺とルードさんが一言ずつ話すと、司会の人の演説が始まった。

「それでは、これより今大会最終決戦。四天王最強、そして獣王国最強の戦士ルード選手対今大会最速で試合を駆けあがって来た全ての四天王が認める男クリフ選手の戦いを始めさせていただきます」

 司会の人は風魔法で会場全体に聞こえる声で叫ぶと、ドラムを叩き試合が始まった。

「ッ!」

 試合が始まった瞬間、目の前に居たルードさんは【獣化】を使用し、一瞬にして獣へと変身すると、目で追いつけないほどの速さで加速して俺へ攻撃を仕掛けてきた。俺は咄嗟に気配を察知して、避ける事に成功。そのまま、体勢を戻し【強化魔法】を使い能力値を爆上げし攻撃を開始した。

「オラッ!!!」

「ッ!」

 能力値を最大まで強化した俺の足蹴りを腕で防いだルードさんは、数センチ後ろに下がったが耐え、そのまま俺の足を掴まれた。

「ガッ!」

 足を掴んだルードさんはそのまま、地面に俺を叩きつけられた。それから、俺はルードさんに対して近距離から魔法を連打し、何とか距離を取って更に超大量の魔法の攻撃をルードさん目掛けて連発、しかしそれらを全て躱すルードさんだった。

(あの人、本当に人間かよ。ルードさんの戦い見てたら、今まで超人だと思ってた父さんが人間に見えて来たよ……)

 俺は心の中でそんな事を思いながら、更に魔法を増やし攻撃の手数を緩める事無く繰り返した。しかしながら、どれも決定打を打てる事が出来ず徐々にルードさんは俺との距離を詰めて来ていた。

(ニャトルさん。あの人、本当に貴方より魔法の察知能力低いんですか……)

 流石に魔法を回避し続けられた俺はニャトルさんの言葉が嘘だったんじゃないかと思い始めた所、ある魔法が一発ルードさんの肩に当たった。

(あれ? 何で今のが?)

 特に狙った訳でもなく、他の魔法より遅い訳でも無い。ただ、魔力が低下して来たから他の魔法と同時に打ってタイミングが一緒に……

(もしかして!!)

 俺はそこで今までの大量かつ、無駄打ちをしていた魔法を切り替え、同時に同じ方向に飛ぶ魔法をルードさん目掛けて放ち始めた。

「ッッ!」

 すると、魔法が当たり始め魔法の回避が困難となったルードさんは俺との距離を取り始めた。ここで逃がすとチャンスを失うと思った俺は、魔法はそのままで空間魔法を使用して、攻撃を攪乱させた攻撃を続けた。
 それから数分後、流石の俺も魔法の無駄打ちもしていたせいで魔力が尽きかけになり地面に降り立つと魔法でほぼ倒れかけているルードさんと対面する事となった。

「大分、魔法を避けるのに苦労してましたね」

「まあな、まさかあんな全方位から同時的に魔法が打たれるとは思わなかったよ。流石、クリフだな」

 ルードさんはそう俺の魔法の攻撃の仕方に褒めると最後の気を振り絞って次の攻撃を打とうとしている感じだったので、俺も同じく魔力を練って最後の一撃の準備をした。

「それじゃ、次で決めるぞクリフ?」

「ええ、俺も決めさせてもらいますよ」

 俺達はそう互いに言い合い最後の一撃を互いに振りかざした。そして数秒後、ルードさんの最後の攻撃だった拳をギリギリで避けた俺と俺の魔法を直撃し、地面に横になっているルードさんだった。
 
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